経済学部の木暮ゼミが灘の酒造企業4社を訪問しました
2025/08/06
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模擬商談をする学生ら.webp)

経済学部・木暮衣里准教授の3年次ゼミ生18人が取り組む「灘の酒プロジェクト」の一環として、灘五郷に本社を置く酒造メーカー4社を6月から7月にかけて訪問し、日本酒造りや各企業の取り組みへの理解を深めました。
【沢の鶴株式会社(6月13日)】
沢の鶴株式会社の訪問では、灘の米・水・人・風などの風土が酒造りに有利であったことを学び、精米から酒母造り、発酵・熟成までの伝統的な日本酒製造工程を見学しました。「瑞宝蔵」では主力製品の「米だけの酒」を中心に生産しており、1日に約3万リットルの新酒が生産されるという現場のスケールに、学生たちから驚きの声が上がりました。
次に西向賞雄取締役から「震災から30年、復興への思い~ヴィンテージへのチャレンジ~」と題したレクチャーがあり、米屋として創業した300年以上の歴史や熟成酒文化の復活、阪神・淡路大震災を乗り越えた酒母から生まれた30年熟成の「現外」への熱い想いが語られました。利き酒では「SHUSHU Light」をはじめカジュアルで低アルコールの3銘柄と、1973年醸造の古酒、「現外」を試飲。学生からは「低アルコール酒は手軽で飲みやすい」「熟成酒は味や色が違う」などの声が聞かれました。若手社員から助言を受けながら「SHUSHU Light」のポスターづくりに取り組んだ後、社員との意見交換会を実施。仕事への思いやオススメの日本酒、日本酒に合う食事などについて学生たちから活発な質問がありました。
【株式会社神戸酒心館(6月20日)】
「福寿」ブランドで知られる神戸酒心館では、はじめに安福武之助社長による「観光と海外展開を通じた日本酒の未来戦略」をテーマとした講演を多目的ホール「神戸酒心館ホール」で聞きました。13代にわたる歴史や経営方針、海外展開へのチャレンジ、16言語対応パンフレットの設置や多言語スタッフなど外国人観光客に向けた対応、社会的なブランディング(ソーシャル・ブランディング)やサステナビリティへの挑戦について学びました。
次にSDGsやバリアフリーに対応した酒蔵、試飲や土産購入ができる「東明蔵」、木造蔵をリノベーションした蔵の料亭「さかばやし」を見学し、伝統と革新が融合した日本酒づくりの環境、観光体験への取り組みを肌で感じました。試飲では「福寿 純米吟醸」や兵庫県産有機栽培米100%の純米酒「未来への一滴」を味わい、学生からは「日本酒の味の違いはまだよくわからないが『未来への一滴』のコンセプトに共感した」などの感想が寄せられました。
最後に広報部の幸徳伸也部長、多言語スタッフとの意見交換会を行い、酒心館ホールでのイベント企画や海外広報、福寿を使用したカクテルコンペなどについて説明を受けました。
【菊正宗酒造株式会社(6月27日)】
菊正宗酒造株式会社の訪問では、人事グループの松岡尚志課長から360年以上の歴史を持つ会社の概要、ブランド・ビジョンについての講義があり、六甲山の森林保全活動や、若手社員の技術継承に向けた制度整備、挑戦を後押しする社風づくりについてなど、持続可能な経営と人材育成の両面での先進的な取り組みが紹介されました。次に灘の発展の歴史を学び、「菊正宗酒造記念館」の井内雅巳館長の案内で全国の盃が並ぶ「盃展示館」、樽づくりの実演を見ることのできる「樽酒マイスターファクトリー」、酒造工程を再現した展示室や利き酒コーナー、ショップのある「記念館」を見学しました。
試飲体験では冷酒向けに取り組んだという「百黙」をはじめ和のリキュールなど6銘柄を、それぞれに合う食品とのペアリングで味わいました。学生からは「柑橘系のリキュールは飲みやすく親しみやすい」「チーズやチョコレートと合わせる提案が新鮮だった」との声がありました。若手社員との意見交換会では、日本酒業界と自社製品に対する熱い想(おも)いや入社のきっかけが語られ、学生にとって将来を考える貴重な機会となりました。
【白鶴酒造株式会社(7月4日)】
白鶴酒造株式会社では、総務人事部の吉田一真課長が日本酒市場の動向や同社の歴史等を、クイズを交えて紹介。酒類業界の現状、営業職や日本酒の流通についても詳しい説明がありました。その後、学生は二つの班に別れて「白鶴酒造資料館」の見学と利き酒を行いました。酒造資料館では伝統的な日本酒の製造過程がリアルな人形と共に再現され、実際に使われていた道具や設備が保存・展示されていました。米洗いから瓶詰までをわずか37㎡で行うことができるマイクロブルワリー(HAKUTSURU SAKE CRAFT)、試飲コーナー、ショップも併設しています。利き酒では、実際に社員が実践している利き酒方法をレクチャーしてもらい、「大吟醸」、「特別純米酒 山田錦」、定番商品の「まる」を比較して味わいました。若手社員による商品開発プロジェクトから生まれた「別鶴(べっかく)」3種も試飲。400種類以上の酵母ライブラリから選んだ酵母を使用したという新感覚の日本酒の味と斬新なラベルに、学生たちから驚きの声が上がりました。
午後からは、学生たちが白鶴酒造の営業職社員として、『日本酒を扱っていないスーパーに日本酒を置いてもらうには』という設定で、4チームに分かれて提案内容を検討しました。バイヤーに扮した総務人事部の林寿和次長と模擬商談を行い、商品の魅力を伝えることとバイヤー側の事情を考えることの重要性を学びました。最後に2人の若手社員と意見交換会を行い、充実の一日となりました。
4日間の訪問を終えて、学生からは「代表的な灘の老舗酒造企業の方々の熱意や挑戦する姿勢に感銘を受けた。自分たちができることは限られるかもしれないが、本プロジェクトを頑張っていきたい」との声が寄せられました。
※木暮ゼミによる「灘の酒プロジェクト」は、若い世代にとっての日本酒の新たな魅力や、「灘五郷」が持つ地域資源としての価値に光を当て、「灘の酒」の再評価と情報発信に取り組むものです。本年度は大学コンソーシアムひょうご神戸が展開する「テーマ型企業理解プログラム」および「企業課題解決プログラム」を活用して実施され、7月18日に中間発表が行われました。
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4月18日:「俯瞰から学ぶ クリエイティブ思考講座」
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO) 永田宏和センター長 記事はこちら
4月25日:「日本酒の市場動向とSAKE HUNDRED『現外』の物語」
株式会社Clear 古川理恵人事・広報PR担当 記事はこちら
5月30日:「日本酒と『灘の酒』の産業と文化」
宮水保存調査会 家村芳次副会長 記事はこちら
7月18日:「振り返りの会と中間発表会」の記事はこちら