経済学部の木暮ゼミが「灘の酒プロジェクト」で宮水保存調査会の家村副会長による「日本酒と『灘の酒』の産業と文化」を受講しました
2025/06/12
経済学部の木暮ゼミの3年次生18人が本年度から取り組む「灘の酒プロジェクト」に関連して、5月30日、宮水保存調査会の家村芳次副会長 による「日本酒と『灘の酒』の産業と文化」を受講しました。
「灘の酒プロジェクト」は若者の日本酒離れが進んでいることや日本一の酒処が「灘五郷」にあることを知らない人が多いという背景から、木暮ゼミが「灘の酒」のリブランディングを目標に、大学コンソーシアムひょうご神戸の「テーマ型インターシップ」「企業課題解決プログラム」の2つのプログラムを通して、酒造企業での就業体験や日本酒市場の調査・分析を行い、「灘の酒」をPRする事業等を検討し、多くの方に魅力を知ってもらう取り組みです。
今回は、長年灘五郷の酒造りに携わり、宮水保存調査会副会長を務める家村氏を講師として招き、日本酒の歴史、伝統的な技術、そして近代化による酒造りの進化について学びました。
家村氏は、京都・伏見の出身で、実家での米作りを原点に酒造りの世界に入り、神戸の菊正宗酒造にて約40年近く酒造り一筋に打ち込んだ後、国の酒類総合研究所での研究職を経て、現在は灘五郷酒造組合にて地域に不可欠な「宮水」の保全・調査に携わっています。豊富な現場経験と科学的な知見を兼ね備えた、まさに日本酒造りの生き字引ともいえる方です。
講演では、まず日本酒がワインやビールとは異なる独特の「並行複発酵」という手法で造られること、そして、その味わいの鍵となる「麹」の重要性について、分かりやすく解説しました。特に、米のでんぷんを糖に変えるだけでなく、タンパク質を分解して日本酒特有の「旨味」を生み出す麹菌の働きや、日本で独自に発達した麹の技術、そして近年「國菌」として認定された麹菌の驚くべき特性(家畜化によりカビ毒を失った安全な菌であること)について、最新の研究成果も交えながら紹介しました。
次に、灘五郷が日本一の酒どころとして発展した背景に焦点を当て、六甲山系からの清冽な伏流水、特に「宮水」と呼ばれる稀少な硬水が、酒造りに適したミネラルバランスを持ち、酵母の活発な発酵を助ける役割を果たしていることを紹介しました。また、江戸時代から昭和初期にかけて六甲山の急流を利用して行われた「水車精米」が、手作業に比べ大幅な省力化・量産化を実現し、さらに米をより深く磨くことを可能にしたことで、酒の品質向上に大きく貢献した点も強調し、宮水と水車精米という自然と技術の融合が、灘の発展を支えた大きな理由であると解説しました。
ワインやビールに比べて、高度な醸造技術を持つ日本酒の歴史は約400年と比較的浅く、現在も酵母研究や保存技術など、さまざまな面で進化し続けている「発展途上」のお酒であるという意外な側面があり、50年前と現在では日本酒の味わいや楽しみ方が大きく変化していることからも、日本酒が今後も更なる可能性を秘めていることを示しました。
学生からは「宮水の水質や保存活動について詳しく知りたい」「精米歩合による味の違いは?」「今後の日本酒の発展はどの分野で期待できるか?」といった声が多く聞かれ、日本酒が持つ可能性を改めて感じた講演会となりました。