神戸学院大学

総合リハビリテーション学部

総合リハビリテーション学部の前田特命教授と相原特命准教授が、認知症の高齢者の間でうつ症状が増えていることを英語の論文にまとめ、専門誌に掲載されました

2021/06/15

調査と論文をまとめた前田特命教授
調査と論文をまとめた前田特命教授

総合リハビリテーション学部の前田潔特命教授と相原洋子特命准教授が本学有瀬キャンパスに近く、神戸市と明石市にまたがる明舞地区に住む高齢者を対象に、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的流行)前と最中を比較した調査を実施しました。パンデミックが始まって、うつ症状の人が増え、特に認知症の症状がある人がうつになることが多いことが分かりました。調査結果は研究論文にまとめ、老年心理学のオンライン専門誌「International Journal of Geriatric Psychology」(4月30日付)に掲載されました。

■パンデミック前と最中に住民アンケートを実施
大学の倫理委員会の承認を経て前田特命教授らは、感染拡大する前の2019年11月~12月に1万1,000戸の住民全員に対してアンケート用紙を配布しました。明舞地区の高齢化率(65歳以上)は約40%とされます。65歳以上の高齢者約2,300人から返信があり、うち920人がその後の調査にも協力してくれました。その後、感染拡大はパンデミックとなり、兵庫県にも緊急事態宣言が発出されました。宣言下の2020年5月~7月に再度アンケートを実施し、569人から有効回答を得ました。

■感染拡大前はうつ症状のなかった人の19%が新たに発症
回答を集計したところ、平均年齢は77.6歳。女性は51.4%、パンデミック前はうつ症状のある人は25.8%でしたが、パンデミック最中は32.3%とわずかに上昇。感染拡大前はうつ症状のなかった422人のうち、79人(18.7%)が新たに、うつを発症しました。
さらに結果の数値を解析したところ、うつ症状との関連を示した要素は、認知症の症状がある人のほかに、困ったときに相談できる人がいない人、家族や友人からの相談を受けていない人――でした。年齢や性別、学歴、同居の家族の有無、病気の有無は関連が見られませんでした。

■コロナ禍でも認知症の高齢者にはリモート支援が必要
論文は、「認知症高齢者は環境や社会の変化が引き起こす負の作用に弱く、心理的ストレスの増大につながりやすいことが分かっています。新型コロナウイルスのパンデミックによる高齢者へのさまざまなサービスの停止が認知症高齢者や介護者に負の影響をもたらしています。現在、感染防止のため、ソーシャル・ディスタンスをとるか、心の健康のために社会とのつながりを失わないようにするかのジレンマにあります。認知症高齢者に対するリモート支援が最優先されるべきです」と締めくくりました。

前田特命教授は「感染拡大によって、ステイホームが推奨されて人との接触が減り、生活の変化によって認知症の高齢者の間で、うつ症状が増えたと考えられます」と話しています。英文の論文はこちら