作業療法学科の田代大祐講師らが、ベッド上での食事姿勢に関する新たな知見を国際学術誌に発表しました―側方アームレスト支持が姿勢・呼吸機能・肩周辺の負担改善に寄与―
2026/06/01
総合リハビリテーション学部 作業療法学科の田代大祐講師を中心とする研究グループは、医療・介護用ベッドメーカーであるシーホネンス株式会社(本社:大阪市東成区、代表取締役社長:増本龍樹)らと共同で、ベッド上での座位食事場面における上肢支持の効果について検討しました。本研究では、側方アームレスト「笑(エミ)テーブル」(同社商品名)を用いた上肢支持が、姿勢アライメントの改善、肩周辺筋への負担軽減、および呼吸機能の向上に寄与することを定量的に明らかにしました。本研究成果は、神経科学、生体医工学、リハビリテーション医学の学際領域を扱うオープンアクセスの国際学術誌「Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation(Impact Factor:5.2)」に掲載されました。
論文の全文(英語)はこちら
【研究の背景と課題】
病院や在宅介護などのベッド上での食事では、腕の負担軽減や呼吸のしやすさへの配慮から、オーバーベッドテーブルに前傾姿勢で両肘をつく姿勢「前方肘支持」が取られることがあります。
しかし、この姿勢は背中が丸まり(胸椎後弯)、顎が上がる(頸椎伸展)という力学的な変化を引き起こすため、呼吸を浅くし、食事中の誤嚥(ごえん)リスクを高めるなど、呼吸・嚥下機能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていました。
【研究内容と成果】
本研究では、健常若年成人40人を対象に、ベッド上で模擬食事動作を行ってもらい、以下の三つの姿勢条件を比較検証しました。
(A) 支持なし
(B) 前方肘支持
(C) 側方アームレスト支持(シーホネンス社製「笑(エミ)テーブル」使用)
姿勢アライメント、筋肉の硬さ、肺活量、主観的な快適さなどの多角的な評価を行った結果、以下のメリットが実証されました。
1.理想的な姿勢の保持(背中と首の改善)
側方アームレスト支持(C)は、支持なし(A)と比較して背中の丸まり(胸椎後弯)を有意に軽減しました。さらに、前方肘支持(B)で見られるような過度な首の反り(頸椎伸展)を防ぎ、より自然で中立的な頭部・頸部アライメントを保つことができました。
2.肩周りの筋肉の負担を大幅に軽減
首や肩の負担の指標となる「僧帽筋上部」および「三角筋中部」の筋硬度を測定した結果、側方アームレスト支持(C)では筋肉の過度な緊張が有意に低下し、肩甲帯(肩周り)への負担が軽減されることが確認されました。
3.呼吸機能(肺活量)の向上
姿勢の改善と肩周りの筋肉の負担軽減が組み合わさることで、胸郭が広がりやすくなり、支持なしの姿勢と比較して肺活量が有意に増加しました。
4.圧倒的な「快適さ」
主観的な快適度の評価において、研究調査参加者の80%が側方アームレスト支持(C)を「最も快適な姿勢」として第1位に選びました。一方で、従来の前方肘支持(B)は70%の参加者が「最も不快」と回答しました。
【今後の展望と社会的意義】
本研究は、横方向から上肢を支持するというシンプルな構造の器具が、食事時の姿勢や呼吸メカニクスに好影響を与える可能性を示しました。一方、前方への寄りかかり姿勢(前方肘支持)は首の過度な伸展を招くため、食事中の姿勢として再検討の余地がある可能性が示唆されました。
この記事の詳細はこちらのシーホネンス社による「PR TIMES」掲載記事


