神戸学院大学

栄養学部

土曜公開講座「100歳まで歩こう!-明日から実践できる食事法-」を開催しました

2025/07/03

講義する栄養学部の田村講師
講義する栄養学部の田村講師
講義を聴く受講者
講義を聴く受講者

第4回目の土曜公開講座となる栄養学部の田村行識講師による「100歳まで歩こう!-明日から実践できる食事法-」を6月28日に有瀬キャンパスにて開催し、228人が参加しました。

今春の土曜公開講座は第89回となり、「私たちのくらしと文化」という統一テーマに基づき、各研究分野の教員が全5回の講義を行っています。

はじめに、栄養管理は高齢になるにつれて対策に変化があることを紹介しました。65歳ぐらいまでは生活習慣病やメタボ予防を優先した「過栄養対策」が重要ですが、75歳ぐらいからは介護予防やフレイル予防のために「低栄養対策」に切替える必要があり、年齢とともに低下する筋肉量をあらかじめ運動などで補う「貯筋(ちょきん)」が大切であると説明しました。

筋肉から分泌される「マイオカイン」というホルモンは、血液を介して全身の臓器に作用し、癌や心臓病、骨粗鬆症等、さまざまな生活習慣病を予防するだけではなく、認知症にも効果があり、「貯筋」は全身の健康を守るメリットがあると紹介しました。

健康維持における筋肉の重要性については、医学の父と呼ばれるヒポクラテスにより2千年以上前から認識されており、近年の欧米の研究では、週1~2回以上の1日8千歩のウォーキングで死亡率が低下するという研究データをグラフで示しました。

次に本題として、高齢者の筋肉増強には運動に加えて食事の力が不可欠であり、身体づくりには日々の食品選択がポイントになることを説明しました。また、私たち人間は、好きな物を好きな時に食べることができる文明食動物であり、日々何を食べるかによって身体を構成する約37兆個の細胞が元気になるかそうでないかが決まること、そして、1年間に行う1,095回(365日×3回)の食事の回数分だけ身体づくりのチャンスが巡ってくることを強調しました。

食品選択のポイントとして、五大栄養素の①炭水化物、②タンパク質、③脂質、④ビタミン、⑤ミネラルをバランスよく取ることが重要であり、講義内で配布された「食品カテゴリーマップ」をもとに、主成分ごとに7つにカテゴリー化された食品群とバランスのよい食事について解説しました。

デンプン・糖質を含む「主食」をカテゴリー1、タンパク質・脂質を含む「主菜」をカテゴリー2、食物繊維・ビタミン・ミネラルを含む「副菜」をカテゴリー3に分け、この1~3のカテゴリーで五大栄養素を全て補えることができるため、バランスの良い食事とは、カテゴリー1、2、3が揃っている食事であるとの説明しました。その他、牛乳等の乳製品はカテゴリー4、マヨネーズ等の多脂性食品はカテゴリー5、果物・スイーツ等の嗜好食品はカテゴリー6に分類され、目的に応じて摂取したり控えたりするなどの使い分けが重要であること、最後にカテゴリー7に分類されるアルコール類の過剰摂取は、肥満や脂肪肝のリスクの増加、筋肉の分解を促進する等健康リスクや「貯筋」の妨げにつながるため、注意が必要であると解説しました。

最後に「貯筋」のための食事法として、筋タンパク質の分解を防ぐために糖質を不足させないようにカテゴリー1を毎食摂取することや、筋肉量と筋力の維持増強のために、タンパク質摂取量は、1食あたり20gを目指すこと、そして、朝のタンパク質摂取の強化が重要であることについて、時間栄養学に関する最新の研究データを紹介しながら説明しました。さらに日本人のほぼ全ての年代が、ビタミンDが不足していることについても触れました。ビタミンDは、サケ等の魚介類からの積極的な摂取とともに適度な日光浴による皮膚での合成によって補うことで、筋肉合成と骨形成を助け足腰を強くすると解説しました。

講義終盤ではまとめとして、筋トレ等の「運動」×「糖質・朝のタンパク質20gの摂取・ビタミンDの摂取」が「貯筋」に不可欠な要素であると再確認し「食生活は今夜から、運動習慣は1秒後に変更が可能です」と講義を締めくくりました。

参加者からは「できるだけ食事に気を付けているが、思うようにはいかない中、大変参考になった」「『貯筋』や食事の改善を早速実践したいと思った」「料理をつくるモチベーションが上がった」といった感想が寄せられ、盛況のうちに終了しました。

次回は、7月5日に心理学部の道重さおり講師による「ハマる心理-アルコール・ギャンブル・ゲーム等依存症について正しく理解しよう-」を開催します。