神戸学院大学

経済学部

土曜公開講座「“場所”のブランドとプレイス・ブランディング」を開催しました

2025/06/26

会場内を巡る木暮准教授
会場内を巡る木暮准教授
講義を聴く受講者
講義を聴く受講者

第3回目の土曜公開講座となる経済学部の木暮衣里准教授による「“場所”のブランドとプレイス・ブランディング」を6月21日に有瀬キャンパスにて開催し、105人が参加しました。

今春の土曜公開講座は第89回となり、「私たちのくらしと文化」という統一テーマに基づき、各研究分野の教員が全5回の講義を行います。

木暮准教授は、はじめに、本日のテーマである「”場所”のブランドとプレイス・ブランディング」について、私たちが日頃から関わるさまざまな”場所”(地域、街、都市など)すなわちプレイスがどのように人々に認識され、価値を持つのか、そしてその魅力を高めるための「イメージの共有化」や「認知度の向上」の必要性を分かりやすく説明しました。

続いて「ブランドとは何か」について、アメリカ・マーケティング協会(AMA)の定義に触れ、今日は企業の製品やサービスだけでなく、人、街、企業そのものや大学など、私たちの社会にあるあらゆるものがブランドであると解説しました。また、ブランドが持つ資産的価値の重要性や、ブランド要素(ブランド名、ロゴ、シンボル、キャラクターなど)についても説明しました。さらに、「強いブランド」の条件として、「認知」(ブランド名が知られている)、「連想」(個性的で好ましいイメージがすぐに浮かぶ)、そして「機能的価値」「情緒的価値」「精神的価値」「社会的価値」といった複合的な「価値」を満たすことが重要であると解説しました。

次に、「場所」のマーケティングとプレイス・ブランディングについて説明しました。1990年代に始まったプレイス・マーケティングとして、フィリップ・コトラーの4つの戦略「イメージ」「アトラクション」「インフラ」「人」を紹介し、特に場所の魅力においては、そこに住む「人」のホスピタリティや信頼感が大切であることを示しました。さらに、2000年代以降、都市などにおけるプレイス・ブランディング研究が盛んになり、「選ばれる」ためのプレイスの競争も激しくなったと述べました。そして、あるプレイスが良いイメージを持って広く知られ、そのプレイスに愛着を感じる人が多くいて、結果として訪れる人やそこに住む人が増えるような活動がプレイス・ブランディングであると説明しました。

後半では、NHK朝ドラ「風見鶏」や子供服ブランド「ファミリア」などが、神戸の「国際性」「食」「景観」「上品さ」といったイメージ形成に大きく影響を与えたことに触れ、プレイス・ブランドとしての神戸について、歴史的な視点から解説しました。

また、近年神戸市が行った「神戸のこれからをみんなで話そう」のアンケート結果から、市民が感じる神戸の魅力(自然環境、夜景、おしゃれさなど)を紹介しました。さらに、港、六甲山、神戸ビーフ、灘の酒などの有形無形の資産、そしてさまざまな立場でそれらを育む人々の存在が重要であると述べ、プレイスの資産を守り育てるためには、行政や企業だけでなく、その場所を愛する人々による自主的な活動、すなわち「推し活」が重要であると説明しました。

最後に、2025年度から木暮ゼミで取り組んでいる、兵庫県神戸市の地場産業である「灘の酒」のリブランディングに関する産官学連携プロジェクトを紹介し、プレイス・ブランディングを社会全体で推進していくことの重要性を指摘し、講義を締めくくりました。

参加者からは「地元神戸の魅力やブランドについて、改めて深く考えることができた」「場所のブランドがどのようなものかよく理解できた」といった感想が寄せられ、盛況のうちに終了しました。

今回の講義では途中に、参加者が各自テーマについて深めるワークを行い、質疑応答の時間を設けました。活発な意見交換が行われ、ブランドやプレイス・ブランディングという視点について考察する、意義深い時間となりました。

次回は、6月28日に栄養学部の田村行識講師による「100歳まで歩こう!明日から実践できる食事法」です。