神戸学院大学

法学部

第21回文化相互理解シンポジウムが開催されました

2021/07/01

名古屋大学大学院情報学研究科の井原伸浩准教授
名古屋大学大学院情報学研究科の井原伸浩准教授
車椅子YouTuberとしても活躍されている本学心理学部の中村珍晴講師
車椅子YouTuberとしても活躍されている本学心理学部の中村珍晴講師

法学部主催の第21回文化相互理解シンポジウムが7月1日、Zoom配信によるオンライン方式で開催され、心理学部やグローバル・コミュニケーション学部、法学部から多くの教員と学生が参加しました。同シンポジウム「デジタル時代の伝え方:自分から他者へ、他者から自分へのプレゼンテーション」では、名古屋大学大学院情報学研究科の井原伸浩准教授と、車椅子YouTuberとしても活躍されている本学心理学部の中村珍晴講師をスピーカーとしてお招きし、ご講演をいただきました。

まず、井原准教授は、プレゼンテーションに関する基本的前提や方法論について講演されました。「どのようなプレゼンであれ、その目的は、聴衆に何らかの行動を起こすよう『説得』することにあり、説得にあたっては、『価値』があることを示す必要がある」と話されました。その上で、プレゼンに臨む心構えや準備について、「聴衆を『説得』し、『価値』があることを意識してもらうためには、何が『課題』かを明らかにし、その『解決』に向けた方法を積極的に提示する努力を怠ってはならない。同時に、その解決策が有効であることを『証明』しようとする姿勢が求められる。このような学術的プレゼンの基本的な考え方は、ビジネス・プレゼン等にも十分に応用可能であり、こうした技術を習得することによって、自分が提供できる価値をより効果的に伝え、聴衆を意識づけ説得できるようになる」と説かれました。

続いて、中村講師には、動画配信などを通じてメッセージを伝え続けることの目的や意義についてご講演いただきました。中村講師は大学1年次生の時、部活のアメリカン・フットボールの試合で頸部骨折の大けがを負い、脊髄を損傷して以来四肢に麻痺が残り、車椅子生活を行うことになりました。しかし、当時車椅子生活についての情報がほとんどなく、将来への不安から絶望の日々を送った自らの経験を踏まえ、動画というメディアを通じて、車椅子ユーザーのための道先案内人として「ロール・モデル」となることを決意。こうして、他者のために自らの社会的役割を再定義した中村講師は、次々と活動の場を広げていき、今日、大学教員としてだけではなく、YouTuber、アスリートのメンタル・トレーニング、パラ・スポーツ支援、再生医療や最先端のリハビリ技術の紹介など、多岐にわたりインフルエンサーとして活躍されています。中村講師は「自らの視点を内から外に向け、他者や社会のために発信することで、自らの存在意義を知ることができ、何より温かい励ましや応援をいただくことができた。このことがいまの自分の支えとなっており、さらに他者や社会のために活動を行うためのモチベーションとなっている」と強調されました。

最後に、同シンポジウムの企画・主催者である岩田将幸教授から、法学部におけるプレゼンテーションの実践的な取り組みについての紹介がありました。なかでも、法学部が協定先と実施してきた日中韓5大学による「英語スピーチ大会」や、同法学部のプレゼンのクラス「International Affairs AおよびB (Aは日本語のみ、Bは日本語と英語でのプレゼンを対象)」が取り上げられました。岩田教授は、これらの実践的なプレゼンの取り組みについて、「自分以外の他者に『なぜ伝えるのか』『どうしたら伝わるのか』といった問題意識を常に持つことが重要である。それが翻って、自己理解にもつながる」という趣旨を説明しました。そして、岩田教授は、「プレゼン技術を磨く本来の意味は、『伝える』ことを知り、『伝わる』ことを感じるという相互作用に立脚したものでなければならない」と述べ、同シンポジウムを締めくくりました。