土曜公開講座「ハマる心理 -アルコール・ギャンブル・ゲーム依存について正しく理解しよう-」を開催しました
2025/07/22
土曜公開講座の第5回(最終回)として、心理学部の道重さおり講師による「ハマる心理 -アルコール・ギャンブル・ゲーム等依存症について正しく理解しよう-」を7月5日に有瀬キャンパスにて開催し、148人が受講しました。
今春の土曜公開講座は第89回となり、「私たちのくらしと文化」という統一テーマに基づき、各研究分野の教員が全5回の講義を行いました。
第5回では、心理学の視点から、私たちの身近にある「ハマる」という行動が、どのように依存症へと移行し、個人の生活や周囲に影響を及ぼすのか「アルコール・ギャンブル・インターネットゲーム」の依存症を中心に、そのメカニズムと現状、そして回復への道筋を解説しました。身近な「楽しいハマり」から、人生を困難にする「ハマり方」に焦点を当て、依存症が脳に影響を与える「病気」であることを強調しました。
まず最初に、アルコール依存症について、久里浜医療センターのスクリーニングテスト(KAST等)を用いた自己チェックの例を示し、注意すべき点を解説。大量飲酒により脳の萎縮が進み、感情・知的な活動・意欲の消失、判断力の低下を招くこと、特に未成年の飲酒は発達途上の脳に悪影響を与える危険性があることを指摘しました。また、依存症は「孤独の病」とも呼ばれ、隠れて一人で飲むようになると依存症が進行した段階にあると述べ、身近な人を気にかけるよう促しました。
次に、ギャンブル依存症について解説。ギャンブルは偶然に支配される行為でありながら、認知の偏りによりコントロールできると感じてしまうと、ドーパミンという快楽物質が大量につくられるメカニズムについて説明しました。依存が進んだ場合の具体的な症状として、金銭問題、人間関係のトラブル、仕事の破綻、借金、希死念慮(きしねんりょ)などを挙げ、最悪の場合犯罪行為にまで至る危険性があると指摘しました。
続いて、今日の社会で特に問題となっているインターネットゲーム依存症について、学業・生活リズムの崩壊、現実の友人関係の希薄化、家族への暴言暴力、ゲーム課金問題など、さまざまな問題行動に繋がると述べました。また、ゲーム依存症は、「ゲーム障害」として病気認定されていることを強調。ゲーム側の要因(課金システム、競争要素、達成感等)と、人側の要因(リアルでの困難さからの逃避、匿名性)が依存性の高さに関わっていることを示し、治療する場合には依存の背景を理解し、当事者の逃げ場所になっていないかを考慮することが重要であると述べました。
最後に、依存症全般に共通する心理的な特徴として、「否認(自分が病気であることを認めないこと)」と「両価性(やめたい気持ちとやめたくない気持ちが共存すること)」を挙げ、回復には遠い未来を見るのではなく1日やめることを積み重ねる視点や、医療機関だけでなく同じ悩みを持つ自助グループへの繋がりが重要であると述べました。また、回復には時間を要し、「空腹」「怒り」「孤独」「疲労」といった状況が再発を招きやすいと解説。「依存症は『人を巻き込む病気』と言われています。特に身近な家族が巻き込まれやすいので、ハマりすぎには注意してほしい」と講義を締めくくりました。
参加者らは、「依存症になりやすい人の傾向が良く分かった」「身近に依存症の人はいないが、一歩間違えば誰でもなり得るということを改めて認識した」といった感想を寄せ、盛況のうちに講座は終了しました。
2025年度春季土曜公開講座の講義が終了しました。
次回は第90回秋季土曜公開講座をポートアイランド第1キャンパスで実施予定です。