薬学部と男女共同参画推進室が「活躍する卒業生セミナー&サイエンスフォーラム」を実施しました
2026/06/18
薬学部と男女共同参画推進室共催の「活躍する卒業生セミナー&サイエンスフォーラム」が6月5日、ポートアイランド第1キャンパスで開かれ、第7回「森わさ賞」を受賞した内田まやこさんの講演がありました。冒頭で国嶋崇隆薬学部長が内田さんを紹介。薬学部の「先進医療」の授業の一環として実施され、約200人の薬学部生が参加しました。
内田さんは1999年に本学薬学部を卒業し、2001年に本学大学院薬学研究科修士課程を修了。国立大学法人九州大学病院薬剤部に入職し、2013年に働きながら研究も進めて九州大学大学院で博士号を取得しました。その後は臨床・研究・教育を三位一体で実践し、同志社女子大学薬学部教授などを歴任して2024年に九州大学病院薬剤部長に就任しました。臨床、研究、教育、組織運営の幅広い領域を統括する立場です。
講演の演題は「薬剤師として生きるキャリア形成の軌跡と羅針盤~臨床・研究・教育の現場から薬学生へ~」。内田さんは、がん専門薬剤師、緩和薬物療法認定薬剤師の資格を持ち、「専門薬剤師資格はキャリアを切り拓(ひら)く礎となる」と語りました。
患者の立場、患者の目線から考える内田さんのアイデアは臨床現場に生かされ、取り組みは病院の枠を超えて全国に広がりました。特記すべきなのは、病棟専任薬剤師として感じた「がん治療薬の副作用が予測できず、患者さんが不安を抱えたまま治療を受けている」との問題意識から考案した服薬指導シートでした。
レジメン(抗がん薬、輸液、支持療法などを組み合わせた投与計画)ごとに、治療スケジュールと副作用の関係を時系列で表示し、視覚的に分かりやすいよう工夫したシートを作成し、患者のほか医師や看護師、薬剤師にも共有しました。内田さんが担当した血液・腫瘍内科だけで150レジメンのシートを作成。情報共有によって薬剤の処方漏れやレジメンにない薬剤の処方削除など、がん薬物療法の医療安全に貢献しました。服薬指導シートは九州大学病院全体に利用が拡大され、表計算シートをCD-ROMに収めた書籍の出版で今では全国各地の医療機関で利用されているといいます。
また、血液がんを治療する化学療法の副作用である嘔吐を制御するため、固形がん領域では使用法が確立されていた薬剤を血液がん患者にも投与し、その有効性を臨床研究で評価することを血液・腫瘍内科医から提案されました。
医師と投与期間などについて検討を重ね、有効性を検証した結果をまとめた論文は、欧州の制吐薬ガイドラインに引用されました。「患者を観察して、医師や看護師と連携して治療に介入できたことは、薬剤師のやりがいと喜びを感じた」経験として紹介されました。
振り返れば、薬剤部長就任のきっかけとなったのは恩師の「臨床経験のある人が薬剤部長になるのが良い」という言葉だったとして、「病棟薬剤師として積み重ねた臨床経験と研究が人脈と信頼につながった」といいます。
会場からは、「(博士の)学位取得にあたって心の支えになったのは何ですか。同志の仲間はどう見つけていったのですか」と質問が出ました。内田さんは「どうやっていいか分からないことが多く、(自施設の)先輩・上司などに相談したほか、院外の学会や研修会などで同志となる仲間を見つけていった」と答えました。





