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神戸学院大学

薬学部

神戸市立医療センター中央市民病院の医師と薬剤師を招く薬学部の「大学―医療連携特別講義(薬剤学特論Ⅰ)」が始まりました

2023/08/28

医師と薬剤師から臨床現場について学んだ特別講義
医師と薬剤師から臨床現場について学んだ特別講義
伊藤医師(中央)、土肥薬剤師(左)を紹介する橋田教授
伊藤医師(中央)、土肥薬剤師(左)を紹介する橋田教授
学生からの質問に答える土肥薬剤師(左)と伊藤医師
学生からの質問に答える土肥薬剤師(左)と伊藤医師
土肥薬剤師の説明を聴く学生ら
土肥薬剤師の説明を聴く学生ら

本学と教育・研究連携協定を結んでいる神戸市立医療センター中央市民病院の医師と薬剤師から臨床現場の実践を学ぶ薬学部5年次生対象の「大学―医療連携特別講義(薬剤学特論Ⅰ)」が今年度も始まりました。昨年度と同様に、対面とオンラインのハイブリッド方式で、司会は同病院の元薬剤部長でもある橋田亨教授が務めます。

11月16日までの4回集中講義で、毎回、各診療科の第一線で活躍する医師と薬剤師を講師に招きます。初回は、「栄養管理」をテーマに伊藤次郎医師(麻酔科副医長)と土肥麻貴子薬剤師(薬剤部主任)からそれぞれが担当する同病院の「NST(Nutrition Support Teamの頭文字で、栄養サポートチーム)」の取り組みを中心に報告してもらいました。NSTは院内すべての栄養管理を担当する部署です。2人の講師の話に共通していたのは、医師、看護師、栄養士、薬剤師など専門職連携の大切さでした。

■第1回テーマは「栄養管理」
伊藤医師はまず、①なぜ栄養療法が重要なのか②栄養療法とは何をしているのか③栄養療法とチーム医療の関わりは――と三つの問いへの回答で話を進めることを示しました。①については、栄養不良改善のための栄養療法は、さまざまな疾患を治療するアウトカム(予防や治療がもたらす結果)に関係するからだと話しました。

②については、患者の栄養状態を把握するスクリーニング、栄養療法の目標を設定し投与する薬剤や経路などを考えるプランニング、投与による患者の病状などの変化を調べるモニタリング、その結果を踏まえて再度計画を練り直すリプランニングの流れを説明しました。

一方、土肥薬剤師はNSTで業務を行うのに必要な、日本臨床栄養代謝学会が認定する「NST専門療法士」の資格を取得しています。学生にとっても関心のある分野でもあることから、5年以上の臨床経験と栄養サポート業務に従事した経験など、資格取得に必要な要素を説明してくれました。主治医からNSTに「介入依頼」があると、患者の状態を見ながらカンファレンス(情報共有の場)などで話し合い、経口、経腸、経静脈のどの経路から栄養を投与するかを決めることを説明しました。その際、薬剤師の役割は、「薬剤の知識に基づく薬剤情報により輸液の適正使用・管理にあたること」だと述べました。

■学生からの質問も相次ぐ
会場の学生からは「NSTの回診ではどんなことを話しますか」との質問が出ました。伊藤医師は「特にカンファレンスでは、カルテには書いていないことを病棟の看護師に質問します。皮膚の張りで栄養状態もある程度分かりますが、意識がないと必ずしもカルテに書かれていませんから」と答えました。土肥薬剤師は「静脈栄養投与で挿入部が赤くなって炎症を起こしていませんか」「ビタミン剤は光で分解されるため遮光保存が必要ですが、遮光下では行われない点滴投与の際、投与量は分解されている量を考慮する必要はあるでしょうか」などと、何でも自由に質問し、話すことができると答えました。

オンラインで受講した学生からは「栄養管理は高齢者の対応で大事になる印象がありますが、ほかに大事になる場面はありますか」と質問があり、伊藤医師が「高齢者に限らず、原疾患の重症度により極めて重要になります。事故などでは前日まで普通に食事をしていた人が栄養不良になるリスクがあります」と回答しました。

■キャリア形成と研究は薬剤師の仕事の両輪
橋田教授は薬剤師の仕事について、「薬の専門家であり、医療全般のゼネラリストにもならなければならず、ほかの職種との連携も大切だと講義を通じて理解してもらえたと思います。薬剤師は科学者でもあり、臨床研究も頑張っていただきたい。現場でのキャリア形成と研究は薬剤師の仕事の両輪になります」と、自身の経験も踏まえて学生に話しました。