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神戸学院大学

薬学部

薬学部の大学―医療連携講義の第2回は「がん」をテーマに実施しました

2023/11/21

薬学部の大学ー医療連携講義第2回
薬学部の大学ー医療連携講義第2回
講師の永井医師(右)と吉野薬剤師
講師の永井医師(右)と吉野薬剤師
学生の質問に答える吉野薬剤師(中央)と永井医師(右)。左は司会の橋田教授
学生の質問に答える吉野薬剤師(中央)と永井医師(右)。左は司会の橋田教授
積極的に質問する学生
積極的に質問する学生

神戸市立医療センター中央市民病院との包括連携協定に基づく薬学部の大学―医療連携特別講義の第2回が11月9日に開かれました。杉岡信幸教授の担当授業で、日本人の死亡原因第1位の「がん」をテーマに、同病院から腫瘍内科医長の永井宏樹医師と吉(吉は「土」の下に「口」ですが、「吉」で表記します)野新太郎薬剤師を講師に招きました。元同病院薬剤部長の橋田亨教授が司会を務めました。

厚生労働省の人口動態統計(2021)によると、日本人の死亡の原因別で、がんは26.5%を占めてトップです。がんで死亡する人は男女ともに、肺がんと大腸がんが最も多くなっています。

■神戸市立医療センター中央市民病院の永井医師と吉野薬剤師が最前線の報告
永井医師は呼吸器内科、がん治療が専門です。がんの治療法は手術や放射線治療、薬物療法があり、症状を和らげる緩和治療を含めてチーム医療で患者を支えているとして、「医師の役割は治療方針の決定と全身管理。一方、薬剤師は薬物療法の安全と質の向上に寄与し、服薬サポートとリスクマネージメントを行う重要な役割を担っています」と職種による役割についての説明がありました。

永井医師は最近のがん治療薬として、従前から使われている細胞障害性抗がん薬、最近注目される分子標的薬、免疫療法に使われるチェックポイント阻害剤を示し、多剤併用により有効性が高まる一方で毒性も高まり、副作用への配慮が必要なことも指摘しました。同病院では、2004年からがん患者のために薬剤師による「ケモ(化学療法)副作用説明外来」を設け、治療スケジュールや副作用が出たときの対策など、患者指導にあたっています。

服薬が患者任せとなる経口抗がん薬については、全国でも先駆的な薬剤師外来があり、薬剤師が服薬の注意点を患者に知らせると同時に患者からの聞き取りも行っているとの紹介がありました。最後に「チーム医療に参加して患者や家族、医療スタッフから頼りにされる薬剤師になってください」と学生への温かいメッセージもいただきました。

■多職種連携でチーム医療
一方、「がん薬物療法認定薬剤師」、「緩和薬物療法認定薬剤師」などの資格を持つ吉野薬剤師は、がん薬物療法における薬剤師の役割と多職種連携の重要さについて語りました。

吉野薬剤師は、永井医師と同じく点滴化学療法の流れを示し、「レジメン」と呼ばれる抗がん薬、輸液、支持療法などを組み合わせた投与計画の事前登録によって管理が徹底されていることを説明し、施行(投薬開始)当日は医師の処方確定を受けて、正しいかどうかの処方監査を行い、問題がなければ無菌調製を実行すると述べました。

このほか薬剤師の役割として、薬剤についての患者への説明を挙げました。永井医師から説明のあった「ケモ(化学療法)副作用説明外来」については、「点滴初日に安心して治療を受けてもらう」ことが開設の目的だと述べました。点滴当日のベッドサイドでの患者指導などで患者に寄りそう薬剤師の仕事の重要さがよく分かりました。

また、「緩和ケアチームでの役割」としては、薬剤師は治療薬の選択、薬物の相互作用の確認などを行うと吉野薬剤師は述べました。薬剤師による検査入力の支援、病院と保険薬局との連携の窓口になるなど、薬剤師の業務が多岐にわたることも理解できました。保険薬局で得られた患者に関する情報で、緊急性はないが、電子カルテに記載して多職種で共有すべき点は「トレーシングレポート」として病院に届くシステムになっていることを紹介してもらいました。

■学生は薬剤師の業務などについて積極的に質問
学生からは「最近届いたトレーシングレポートではどのような内容が書かれていましたか」と吉野薬剤師に質問がありました。回答では「ホルモン剤治療を始めるがん患者が骨粗しょう症の薬を処方されていることがおくすり手帳を見て分かり、薬の飲み合わせが悪く、抗がん剤の効き目が悪くなるのではとの指摘が薬局からありました。おかげで事前に気づくことができました」と、重要なケースの紹介がありました。

別の学生は、「がん認定薬剤師の資格を取得しようと思った理由は何ですか」と再び吉野薬剤師に尋ねました。「家族ががんで死亡したのが薬剤師になった理由です。患者さんに安全・安心を提供できるようにと考えました」との回答でした。加えて、「自分が関わった50の症例を報告し、具体的な症状と処方した薬を示し、改善したか悪くなったか、悪くなったならこういう薬の処方を提案したに至るまでの関わり方を具体的に書かなければなりません。さらに勉強会と研修、試験もあります」と、資格取得のために必要なことも教えていただきました

■「一番うれしいのは患者さんからの感謝の言葉」
最後に吉野薬剤師が学生へのメッセージとして「一番うれしいのは患者さんにありがとうと言われることです。人に感謝される薬剤師であってほしい。そのためには専門性を生かさなければなりません。今やっている勉強は必ず医療現場で生かされます」と語りました。