人文学部・地域研究センターの中村准教授が講演「林崎掘割と梁田蛻巌」を行いました
2025/10/08
人文学部・地域研究センターの中村健史准教授(国文学)が10月4日、ポートアイランド第1キャンパスD号館で講演「林崎掘割と梁田蛻巌」を行いました。神戸学院大学図書館ポーアイ館では現在、ギャラリー展示「明石を描く文学 明石で描く文学-江戸時代の文学・歴史資料を中心に-」が開催されており、今回の講演はその関連イベントとして実施されました。
講演のテーマとなった「林崎堀割」は江戸時代につくられた用水路です。明石川西岸を5.3キロメートルにわたって掘削し、明石市明南町の野々池に流れこむ掘割は、長らく農業用水、水道水として利用されてきました。明石市の小学校用副読本『わたしたちの明石』で取りあげられることもあり、明石地域では高い知名度を誇ります。
中村准教授は林崎掘割の工事が1658年、1708年の2度にわたって行われた経緯を紹介しつつ、第1次工事が水の乏しい村々の発案によるものだったこと、その成功を受けて第2次工事が実施され、さらに遠くの村々に掘割の恩恵が及ぶようになったことなどを指摘しました。第1次工事の終了後、1671年に林崎掘割の延長を行った明石藩主・松平信之は、本学有瀬キャンパスが位置する漆山の開発を行った人物でもあります。会場ではその奇縁に驚きの声が上がりました。
林崎掘割の歴史については、1734年、明石藩に仕える儒者・梁田蛻巌が文章にまとめ、それが石碑となって現在でも野々池の北端(明石市明南町)に残っています(明石市指定史跡「林崎掘割渠記碑」)。中村准教授は蛻巌が碑文執筆の際に利用した史料を一つずつ紹介し、「蛻巌が利用したことが分かっているのに、その存在が確認できていない史料が一つだけある」と説明。該当する古文書が本学人文学部・地域研究センターの調査によって、今年7月確認されたことを紹介し、地域史研究に大学の果たす役割の大きさを強調しました。
中村准教授のほか、人文学部の大西慎也教授、曽我部愛准教授らが参加した調査で再発見されたのは、明石掘割土地改良区が保管していた「差上申一札之事」という史料です。中村准教授は講演のなかで「上流の掘割が通過する村では、掘割の水を利用するため、用水路の管理がいい加減であったため、藩からとがめられ、始末書として提出した文書。掘割をめぐって、水利を享受している下流の村と、特に恩恵を受けていない上流の村で意識の差があったことをあらわす貴重な史料と言える」と、その価値を語りました。
当日は、神戸市のみならず、林崎掘割が流れる明石からも参加者があり、講演会は盛況のうちに幕を閉じました。掘割の維持管理に努力しておられる地元の方々や、林崎掘割の第1次工事を発起した庄屋の子孫にあたる方など、地域の歴史を知りたいという熱意あふれる参加者が多く、本学の社会連携・地域研究活動が着実に明石地域に根を下ろしつつあることを実感するよい機会となりました。
「差上申一札之事」を含めたポーアイ館ギャラリー展示は11月4日まで続きます。詳しくはこちらのリンクをご確認ください。