人文学部の金ゼミが公開講演「日本に暮らす難民申請者さんと、彼を自宅に迎えた家族のはなし」を開催しました
2025/12/24
人文学部の金益見准教授ゼミが11月26日、公開講演「日本に暮らす難民申請者さんと、彼を自宅に迎えた家族のはなし~アフリカ出身のBさんと、翻訳家のふしみみさをさんをお招きして~」を有瀬キャンパスで開催しました。タイトル通り、本講演には難民申請者のBさんと、両親の家にBさんを迎え入れた翻訳家のふしみみさをさんがゲストとして登壇しました。
■難民認定率が極端に低い日本
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の公式ホームページの記述(こちら)によると、難民とは「自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」のことです。
日本の難民認定率は極端に低いのが現状です。難民申請が通らず、在留資格の更新もできずに非正規滞在となった難民申請者は、入管施設に収容されてしまうことがあります。Bさんは現在、その収容を一時的に解除されている「仮放免」という状況にあります。
■仮放免とは、まさに「無理ゲー」
難民および仮放免の人たちの厳しい状況を伝えた金准教授が、ここで下記の書籍*¹から次の一節を紹介しました。
「働けず、福祉の対象にもならない『仮放免』という『無理ゲー*²』」
仮放免の人たちは就労を禁止されるだけでなく、社会保険にも入れず、医療費は全額自己負担。100%どころか400%請求されることもあります。さらには県をまたぐ移動も制限されているため、「今回の講演会が無事開催できたのは奇跡のような出来事でした」(金准教授)。
*¹『難民・移民のわたしたち これからの「共生」ガイド』(河出書房新社)著:雨宮処凛
*²乗り越えるのが非常に困難な状況を指す言葉
■「そうだ、実家に住んでもらおう!」
そんな「無理ゲー」な状況をなんとかしたい!と、翻訳家のふしみさんが思いついたのが、独自の“実家難民プロジェクト”です。
ご両親が住む実家が空いていることに気づいたふしみさん。年を取り、心身の障害を抱えているふしみさんのご両親が住居と食事を提供し、必要な時にはBさんの手を借りる。そんな支え合いの形が実現したのです。
■難民のイメージを覆す「家族の日常」
登壇したBさんは、苦境の中にいるとは思えないような、やさしい言葉で日常について語りました。Bさんがふしみさんのご両親の散髪をしてあげている写真が公開された際には、ふしみさんとの掛け合いで笑いが巻き起こることも。ふしみさんのご両親とBさんの間に、支援する側・される側という壁がないことが伝わりました。
■ブルンジでの壮絶な過去
講演会の後半では、Bさんが自身の過去をゆっくりと語りました。
東アフリカのブルンジで生まれ育ったBさんは、母国で内戦が起きた際に父を虐殺され、自分も命からがら窓から逃げ出しました。
その後、7年間も難民キャンプで過ごし、やっとの思いで日本へ。UNHCRからは難民だと認められているのに、日本の入管では認められず、今も強制送還の不安と戦い、眠れない日もあるのだそうです。
■「外見は違っても血の色は同じ」
それでもBさんはほほ笑みながら、日本のことを「平和で大好き」と語りました。そして、もし世界を変えることができるなら「外見は違っても、人間の中に流れる血の色はみんな同じだと伝えたい」と、自身の想(おも)いを打ち明けました。
■「もし、自分だったら?」と想像してみる
最後に、ふしみさんに本学学生に伝えたいことを尋ねると、「何かひとつだけ守ろうとすると苦しくなる。物事の答えは決して一つじゃない」「今すぐに行動できなくても、知ること、考え続けることが大切」「慈しみから行動できたら、より良い世界になると思います」と語りました。



