神戸学院大学

人文学部

人文学部のキャリア形成の授業で農林水産省近畿農政局の地方参事官による講義がありました

2023/06/08

地域資源について説明する前田地方参事官
地域資源について説明する前田地方参事官
講義する前田地方参事官
講義する前田地方参事官
講義の最後にアンケートの回答を求める新居田講師
講義の最後にアンケートの回答を求める新居田講師

人文学部の新居田久美子講師が担当するキャリア形成講義Ⅰ(2年次生対象)の授業で6月7日、農林水産省近畿農政局農村振興部の前田仁地方参事官(特命・事業計画)による講義がありました。

テーマは「我が国の食料・農業・農村を巡る状況について」。国内では人口減に伴い農林水産物市場は縮小する一方、海外では人口増に伴い市場は拡大しており、輸出を強化して世界の食市場に積極的に進出していく戦略が重要だと最初に学びました。

しかしながら、日本の食料輸出は長年停滞しており、拡大する世界の食料需要を取り込めていないなどの問題点の指摘がありました。特に世界の有機食品市場に目を向けると、売上は増加し続けており、持続可能な農業の実現と輸出拡大の両面で有機農産物の生産拡大の必要性も示されました。

国内の農村を見ると、農業従事者は減る一方で、高齢化が進み、農地面積は減少を続けている状況をデータで見せてもらい、厳しい状況を確認しました。

こうした現状や課題に対応するため、「食料・農業・農村基本法」の見直しが制定後20年以上たって検討されており、前田地方参事官は「何より農村のインフラを整備し、都市部から人に来てもらう必要があります」と述べました。

現状を変えるためには「農山漁村発イノベーションの推進」が必要で、「地域の文化・歴史や森林、景観など農林水産物以外の多様な地域資源も活用し、地元の企業なども含めて多様な関係者からの参画で、新事業や付加価値を創出していくこと」だと定義付けました。施設整備に限らず、果実のパッケージデザインの制作にまで支援事業が用意されているとの説明がありました。

具体例としては、農山漁村地域に宿泊し、滞在中に地域資源を活用した食事や体験を楽しんでもらう「農泊」の推進事業があり、支援事業に採択された地域は全国で621、近畿で53あり、海沿いに舟屋が並ぶ京都府伊根町の「伊根浦地区農泊推進地区協議会」などの先進的な取り組みが紹介されました。

最後に前田地方参事官は、「命を支える『食』と安心して暮らせる『環境』」を未来の子どもたちに継承していくことを使命として、常に国民の期待を正面から受けとめ時代の変化を見通して政策を提案し、その実現に向けて全力で行動します」と農林水産省のステートメントを読み上げました。

学生からは「高校時代に地域活性部に所属し、休耕田などを利用して農作や商品開発にあたりました。鳥獣被害の対策としてはどんなことがありますか」との質問が出ました。前田地方参事官は、「(害獣に電気ショックを与える)電気柵(さく)設置という方法があります。また捕獲したシカやイノシシの肉、ジビエの利用もよく知られています。サルは集団で移動するので、個体に探知機を取り付けて位置を追跡することもあります」と、答えました。

新居田講師は「本学生には身近である農山漁村が、日本のさまざまな問題解決に重要な役割を担うこと、その鍵はスマート農業はもちろん、地元資源の強みを活(い)かしたビジネスチャンスの可能性に気づかされ、学生の新たなキャリアビジョンの形成に、一石を投じてくださった」と感謝の言葉を述べました。