神戸学院大学

人文学部

人文学部の専門講義で兵庫漁協理事による特別講義「兵庫運河とともに生きる」を実施しました

2025/06/16

講義する糸谷謙一氏
講義する糸谷謙一氏
「海を守ることも漁師の役目」と話す糸谷氏
「海を守ることも漁師の役目」と話す糸谷氏
講義を聴く受講生ら
講義を聴く受講生ら

人文学部の鈴木遥講師が担当する「人文の知専門講義III」で6月9日、兵庫漁業協同組合理事の糸谷謙一氏を講師に招き、神戸の漁業や環境保全に関する特別講義を開催しました。約60人の受講生にとって、実務家から直接話を伺う貴重な機会となりました。

本講演会は、2024年度に開始した兵庫漁業協同組合と神戸学院大学の社会連携活動がきっかけとなって実現しました。本学の学生は同漁協の皆さんが長年継続されている小学校での環境教育をサポートさせていただいています。

■海を守ることも漁師の役目
漁師の家系に生まれ、神戸でシラス漁を行っている糸谷氏。講演会当日も夜明け前から漁を行い、その足で有瀬キャンパスに駆けつけていただきました。糸谷氏は冒頭、神戸の近海では急速に生物多様性が失われ、魚が減少している点を挙げ、これらの背景には海水温の上昇や上下水道処理の高性能化、護岸工事による干潟の減少などの問題があると指摘しました。
この状況について糸谷氏は「社会の汚れは最終的にすべて海に流れ着く。海は社会を映す鏡のようなものだ」と述べました。さらに、「漁師は海に生き、海を守る存在でもある。私は、この海の状況を何とか改善しなければならないと考えている」と述べ、海を守ることも漁師の役目であるという認識を示しました。

■次世代に海を伝える環境教育
糸谷氏は、海を守る活動の中でも、子どもたちに向けた環境教育に力を入れています。講演で強調したのは、兵庫運河において小学校と連携して実施してきた干潟の生物調査や水産業見学などの活動についてでした。環境教育活動を続ける意味について、糸谷氏は「海に関心を持つ人が増え、自分事として海の問題を考える人が増え、みんなで海を守る仕組みをつくっていくことが大事だから」と述べました。

■質疑応答:行政の協力、環境教育のきっかけ
講演後、受講生から寄せられたさまざまな質問に対して時間の限り答えていただきました。「行政は環境保全の活動にどのように協力しているのか」という質問に対しては、糸谷氏は「行政とも連携して活動しているが、行政は前例がない取り組みに対して非常に慎重。またいくつかの部署が海を管轄しているために、活動がうまく進まないこともある。もっと全体を取り扱う柔軟な組織が必要ではないかと思うこともある」という考えを示しました。
「環境教育をはじめたきっかけ」という質問に対しては、糸谷氏は「実は子どもが生まれたことも大きかった。子どもにかっこいい漁師としての姿を見せたい、そのためにも海の問題にきちんと向き合わないといけないなと思った」と話してくれました。

本講義では、人と自然とのかかわりを重視した暮らしや自然保全について理解を深めることを目指しています。糸谷氏の講演を踏まえ、次週以降の講義では、現代日本の都市部における人と自然との関係、その中での自然保全とはどのようなものかを学んでいきます。

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