神戸学院大学

社会連携

『土曜公開講座』を開催しました

2017/06/07

第73回神戸学院大学土曜公開講座を6月3日に有瀬キャンパスで開催しました。

4回目となる今回は、経済学部 平井健之教授が「日本の財政問題―国の借金は大丈夫か―」というテーマで、財政の現状や仕組みを解説しました。

まず、国の予算には一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算の3種類があり、一般会計の歳出(支出)の33%が社会保障、16%が地方交付税交付金等として支出され、歳入(収入)の60%近くが租税および印紙収入、35%が公債金であることを説明しました。

次に、国債について解説。国債には、4条国債(財政法第4条1項)と特例国債(特例公債法)があり、4条国債は建設国債とも言われ、公共事業などの投資的支出の財源を賄うために発行。公共事業などで生み出される道路などは、将来世代にわたって利用されるので、負担の先送りという問題を実質的に回避できます。一方、特例国債は赤字国債とも言われ、社会保障費や人件費など経常的支出に充てるために発行されていますが、経常的支出は将来世代に便益をもたらさず、その場限りの便益しか発生しないので、負担が先送りされるという問題が生じます。また、近年は4条国債よりも特例国債の発行額と残額が相対的に大きい傾向にあると解説しました。

国債発行の利点は、不況時には財政支出を増やし景気を刺激することや、毎年度の公共サービスを安定的に供給できることにあります。また、高速道路やダム建設などの大規模事業は完成し利用できるまで長時間かかり、その財源を現在の人々の税金でまかなうと、完成時には現在の人々の多くが利用できず、負担だけすることになりかねないため、国債発行で財源を調達し、便益を受ける将来世代の人々が償還財源のための税負担をすればよいという「利用時払いの原則」も国債発行の根拠として挙げられると解説しました。

また、公債金収入を除いた歳入額(税収等)から、義務的経費である国債費を除いた歳出額(政策的経費)を差し引いた基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収でどれだけ賄えているかを示す指標であると説明し、当面は政府債務を減らすことよりも、税収等が政策的経費を上回る「プライマリーバランスの黒字化」を達成するように財政再建を進める必要があると締めくくりました。

次回は、6月24日法学部塚田哲之教授による「憲法から考える多様な家族のかたち」です。
皆さまのご参加をお待ちしております。