神戸学院大学

国際交流

ウクライナのコルスンスキー大使が特別講義、戦争犯罪の酷さを伝えました

2023/01/23

岡部所長から渡された客員教授委嘱状を見せるコルスンスキー大使
岡部所長から渡された客員教授委嘱状を見せるコルスンスキー大使
講義するコルスンスキー大使
講義するコルスンスキー大使
特別講義を熱心に聴く受講生ら
特別講義を熱心に聴く受講生ら
コルスンスキー大使を囲み記念撮影する受講生ら
コルスンスキー大使を囲み記念撮影する受講生ら
コルスンスキー大使(中央)の表敬訪問を受けた中村学長(左隣)ら
コルスンスキー大使(中央)の表敬訪問を受けた中村学長(左隣)ら

ロシアの軍事侵攻による戦争で大きな被害に苦しむウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が1月18日、中村恵学長らを表敬訪問し、国際交流センター企画「総領事館連携講義」の最終回として特別講義しました。

■世界の現実をよくは知らない学生への授業に感謝 中村学長
大使の訪問は4回目です。中村学長のほか、津田裕子副学長。同センターの岡部芳彦所長、住智明大学事務局長が応対し、ウクライナ出身のナディヤ・ゴラル経済学部客員教授が同席しました。中村学長は、「日本は平和な国ではあるが、多くの学生たちは現在の世界の本当の状況をよくは知りません」と、授業の実施に感謝しました。また、「日本では防衛費を増額することになりましたが、平和憲法もあり、簡単な問題ではありません」とわが国の事情を述べました。大使は「平和憲法は私も知っていますが、世界の政治情勢は変わっています。そしてロシアがパンドラの箱を開けてしまいました。国連を通じて外交努力で平和をと言っても、ロシアや北朝鮮などの自国の利益のみを追求する攻撃的な国とどうすれば歩み寄ることができますか」と、応じました。

特別講義では、大使は「今回はわが国が置かれている現状のみを話します」と前置きし、昨年12月に一時帰国し、各国に駐在する大使が一堂に集まった会議が開かれた首都キーウ、視察した港湾都市の南部ミコライウで見聞きしたことを写真で報告しました。

まず、キーウの街中の様子が映され、「再度占領に来たら使うかもしれません」と、ロシアの対戦車障害物が路上に置かれていることを示しました。「ロシアのミサイル攻撃でライフラインが寸断されてしばしば停電し、水も出なくなっています。大使会議は地下の防空壕で開かれました。米国のブリンケン国務長官、日本の林外相からはビデオメッセージが寄せられました」と話しました。

■南部ミコライウでは30年前に建造をやめた巡洋艦
続いてミコライウでは、大使たちが兵士からプレゼントされた国旗を広げて持っている写真が紹介され、「前線の兵士からのメッセージが書かれている」としました。さらに、造船所で、約30年前に建造がストップした巡洋艦が映され、「当時は国が独立したばかりで、周囲には敵国はいない。平和に暮らせると誰もが考えて軍事用の艦船の建造はやめたのです。まだロシアを信頼していました。今は後悔しています」と表情をこわばらせました。

全土で水道システムも破壊され、飲み水のない時期があったとして、「日本の水処理メーカーから浄水装置をもらって現地に送りました。おかげで10万人の市民が飲料水の配水を受けました」と話しました。これは横浜市を通じてオデーサ市に昨年贈られた33台の移動式浄水装置のことです。

■「ウクライナを破壊することだけが目的」
東部の激戦地ドニプロでは1月14日、集合住宅の一室で子どもの誕生祝いをしている最中にミサイル攻撃を受け、ボクシングコーチの父と子ども2人でが死亡、母が入院した家族が住んでいた部屋の写真を見せました。無残に破壊された部屋が痛々しく、残虐さに誰もが言葉を失いました。大使は「ロシアの目的はウクライナを破壊することだけ。旧ソ連時代の集団農場コルフォーズ、ソフォーズに戻そうとしているのです」と語りました。

大使は、国を守るためには軍備が大事だと強調し、「30年前に独立した時は、軍隊はいらないと思いこんでいました。当時はロシアもウクライナの独立を認め、安全を保証しました。人間の価値を認めない、周りを敵に囲まれていると思い込んでいる人が権力を握るとは思いませんでした」と、怒りを露わにしました。戦争を終結させるには、奪われた領土の回復、破壊されたインフラ施設への損害賠償、戦争犯罪者の処罰を求めるとしました。

■大戦や大震災を経験した日本には復興支援求める
受講生からは、「日本の政府、民間に求める支援は?」と質問が出ました。大使は、「日本の政府、国民からは多くの物資の支援、寄付をいただき、大きな力になりました。多くの避難者も受け入れてもらい、生活、就労、教育面での支援もいただきました。日本からは第2次世界大戦や大震災からの奇跡的な復興の経験から破壊された国土の復興支援を求めます」と答えました。

さらに「個人レベルではどのような支援を求めますか」との質問がありました。大使は「避難している人たちへの友情やサポートです。農家から新鮮な野菜をいただいたこともあります。文化イベントへの案内もありがたいです。みなさんから優しくしていただき、一つもクレームは聞きません」と答えました。

最後に、「ウクライナも戦争を止めたいのです。でも今止めたらみんなが殺されます。ロシアは幼い子どもにまで拷問しており、性的被害者は証拠のある事案だけでも4歳から84歳までです。人間でも動物でもありません」と被害の大きさは想像を超えていることを繰り返して締めくくりました。