神戸学院大学

2022年度前期学位記授与式 学長式辞

2022/09/24

最大規模となったコロナ禍第7波もピークを過ぎようとしているかに見える中、本日ここに、ご来賓の皆様のご列席の下、2022年度前期学位記授与式を挙行できますことは、本学関係者にとりましてこの上ない喜びであり、ご出席の皆様には厚く御礼を申し上げます。

本日卒業の日を迎えられた学部卒業生・大学院修了生の皆さん、おめでとうございます。神戸学院大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。コロナ禍によってキャンパス生活や研究活動が制限され、不本意な学生生活だったかもしれません。しかし、皆さんが積み重ねた努力は実を結び、今日のこの日を迎えました。その努力に心からの敬意を表したいと思います。

本日ご出席・ご参加いただいていますご家族ならびに関係者の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。本日に至るまで学生の皆さんを支え続けてくださったことに対して、深く感謝を申し上げます。

この3月、卒業生にむけてのメッセージとして、ホームページに『「歴史」に負けるな』と記しました。歴史に残る出来事であった新型コロナ感染拡大を理由に後悔することはやめようという意味で記しました。この言葉を、文脈は少し違いますが、今のあなたたちにも送りたく思います。どうか、過去の歴史には負けないでください。

学部卒業、大学院修了を迎える皆さんが社会に旅立つにあたって、あと4つのことを伝えたいと思います。

一つ目。「3年」がんばる。
よく言われる「石の上にも三年」といいたいわけではありません。しかし、3年という長さには不思議な意味があることを知ってください。どんな仕事だったとしても、正社員の仕事やアルバイトの仕事だったとしても、一つの仕事について、1年目は手探りです。2年目、少し慣れてきます。そして3年目に入ると、2年間の経験や知識をベースにして自らの工夫もできるようになってきます。それでようやく一つの仕事をマスターしたかなと思えるようになります。
もちろん、どうしても仕事がつらく、あるいは自分に合っていないと考えたときは、1年目、2年目でもやめて構いません。でも、その時でも、3年続けていなければ一つの仕事をマスターしていないということは意識しておいてほしいと思います。

二つ目。「面倒くさいな」と思ったら、それは重要だと思え。
皆さんが、これから人生で、あるいは職場で出会う様々な問題には、必ずしも答えが用意されているわけではありません。むしろ、答えがない問題を解くことが多いでしょう。そうした問題を考えるとき、「面倒くさいな」と感じる問題ほど大事な問題だと思ってください。
しばしば大学で学んだ知識は社会で役に立たないといわれることがあります。しかし、それは違います。大学で学んだことは必ず役に立ちます。ただそれが、目に見える形で現れる場合もあれば、そうではなく問題にぶつかった時にいろいろ考えるときの「目に見えない風」として役に立つこともあるのです。面倒くさいと感じるときほど、目を閉じ、風を聞いて、しっかり考えてください。答えはその時に聞く風の中にあります。大学の学びが役に立つはずです。

三つ目。自分の中に「もう一人の自分」を持て。
これは二つ目と関連します。課題に答えを出す時には、しばしば「説得」という作業が必要になります。出す答えが自分一人だけではなく、家族や職場の同僚など他人にも関係することが多いからです。「説得」のためには「証拠」が必要です。そしてその「証拠」と「証拠」をつなぎ、自分の考えに反映させるための「論理」が必要です。自分の思いを声高に主張することが説得ではありません。自分でこうだと確信したとしても、その確信は違うのではないかと考える「もう一人の自分」をどこかに常に置いておく必要があること、要するに「説得」とは、自分と「自分の中にいる他人」との何往復もの対話なのだということを覚えておいてください。

四つ目。あなたたちの中にある最もピュアな心、魂を大切に。
時代は変わるといいます。人生百年時代の到来といわれています。そうした変わってゆく時代の中でも、実は自分の「心」「魂」は案外に変わらないものかもしれません。もちろん、社会に出てからも、学ぶことはあり、知識を身に着けていき、「考え方」は変わっていきます。むしろ、変わる方が健全です。でも、今持っている君たちの中にある心や魂は、それがピュアであればあるほど変わらないものだと思います。いや、変えずに持ち続けてほしいと思います。
あなたたちの人生の道は、あなたたち自身が切り開いていくものです。参考にすべきマップはありますが、そのマップは経路を教えてはくれません。道のりは自分で決めてください。そしてその道でぜひ「素敵な偶然」と出会ってください。「人生で一番素敵なことは偶然起こる」。覚えておいてください。

以上4つをあなたたち皆さんへの餞の言葉とします。

皆さんは、本日から約9万人の神戸学院大学同窓生の仲間入りをします。半世紀を超える歴史を持つ本学にとって、同窓生はその宝であり、財産だと思っています。神戸学院大学はこれからも皆さんを応援しています。
最後におねがいです。皆さんも、今日からは同窓生として、神戸学院大学を応援してください。そして、社会に出て少し余裕ができたら、気が向いた時にぜひキャンパスを訪ねてください。そしてあなたたちの成長を聞かせてください。私たち教職員にとっては、あなたたちの成長した姿を見ることほど幸せなことはないのです。

改めて卒業おめでとう。君たちが社会で生き生きと活動している姿が見れることを心より期待しています。

2022年9月24日

神戸学院大学学長 中村 恵