神戸学院大学

2023年度入学式 学長式辞

2023/04/06

本日入学式に集われた学部新入生の皆さん、編入学・転入学生の皆さん、大学院新入生の皆さん、ようこそ神戸学院大学へ。神戸学院大学を代表して、ご入学のお祝いを申し上げます。皆さんが神戸学院大学の「メンバー」になられたことを、教職員一同、心から歓迎いたします。同時に、新入生のご家族、保護者の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。この2023年度入学式を挙行できますことは大学関係者にとりましてこの上ない喜びであり、ご協力いただきました皆様に対しましても、この場を借りて心より御礼申し上げたく存じます。

さて、新入生のみなさんは、もうすでに入学式前に様々なオリエンテーション等を受けていることと思います。配布された印刷物も多岐にわたり、そうした印刷物に書かれている内容を解読するところから大学一年次生は始まるといっても過言ではないかもしれません。

その配布された印刷物の中に「キャンパス」という冊子があったと思います。そして、その中に私の写真を背景として非常に短い「メッセージ」が書かれていたと思います。見てもらえたでしょうか?

そのメッセージは「チャンスが来た時につかめる自分であれ」というものです。実は、その言葉は私のものではありません。あるテレビ番組のインタビューで、世界の一線で活躍する著名なファッションモデルである冨永愛さんが大事にされていると語っていた言葉です。いまは超一流のモデルとなっている彼女も、海外で働き始めて間もない頃は、辛くてどうしようもないときがあったといいます。その時に心の支えにしていた言葉が「チャンスが来た時につかめる自分であれ」であったといいます。

チャンスは待っているだけではやってきません。しかし他方、ふいに、突然に、あるいは偶然に、やってくることがあります。そうした気まぐれにも見えるチャンスをつかむのは、実は簡単ではありません。なぜなら、チャンスは必ずしも自分の思い通りの形では登場してきてくれないからです。そのような気まぐれなチャンスをしっかりとつかむためには、実はそのチャンスが来る前に、チャンスをつかめる自分を作っておく「準備」が必要だということです。

冨永愛さんはファッションモデルをしながらも、いつか時代劇にも挑戦したいと思っていたそうです。彼女は身長百七十九センチもあります。それほど高身長の女性が登場する時代劇はあまりありそうにありません。しかし、「男役でもいいから」とその思いが強かった彼女は、乗馬や殺陣の練習までもしてひそかに「準備」をしていたと語ります。そこに突然訪れたのが、漫画を原作とした男女が逆転した時代劇ドラマ「大奥」での「江戸幕府将軍徳川吉宗」役のオファーです。たまたま脚本家が『男役で時代劇に出たい』と冨永愛さんが話していたことを演出側に伝えていたのが配役のきっかけだったそうです。

私の専門分野であるキャリア・デザイン研究のなかに「計画的な偶然」という言葉があります。「偶然」が「計画的」というのは、矛盾しているように思えるかもしれません。でも、この冨永愛さんに「偶然」訪れたオファーを彼女が受けることができたのも、彼女の乗馬や殺陣の練習という「準備」が計画されていたからだということがわかると、この言葉の意味を理解してもらえるのではないでしょうか。

ひとには、人生の中でいろいろな出会いがあります。大学においてもそれは同様です。様々な専門科目や教員との出会い、新しい友人との出会い、部活での同僚や先輩との出会い、ボランティアや社会連携事業等キャンパス外での活動での出会い。そうした出会いの一つ一つが、実はあなたたちの未来を形成するための「計画的な偶然」そして「準備」になってほしいと思っています。そして、ぜひその「偶然」としっかりと向き合ってください。神戸学院大学は、そのさまざまな偶然と準備の機会を創造し、あなたたちと出会ってもらう場だ、と私たちは考えています。

神戸学院大学が提供する「偶然」と出会うための「準備」の場として、最初にあげるべきは、何よりも皆さんが入学して学ぶ共通教育及び学部専門教育のそれぞれの科目です。しかし、それだけではありません。医療・福祉系4学部6学科合同の「専門職連携教育(IPE)」、文系5学部対象の「スポーツサイエンス・ユニット」、英語力強化プログラムの「神戸学院カレッジ」、教員免許を目指す「教職課程」など、総合大学ならではの学部横断型教育プログラムも正課内で持っています。

正課外のプログラムも豊富です。短期海外研修、長期留学制度、体育会・文化会などの課外活動、資格・検定や公務員を目指す人のための「課外講座」、オープンキャンパス学生スタッフ「オーキャンズ」、大学祭中央実行委員会もそうした正課外プログラムの一つです。

もうひとつ、知っておいてもらいたい言葉があります。「地域と繋がる」。神戸学院大学は運営の理念としてだけではなく、教育・研究においてもこれを標榜しています。正課内、正課外を問わず、企業や自治体との様々な社会連携・地域貢献活動に、多くの学生が参加をしています。日中韓英語スピーチ大会に参加しスピーチをした法学部生、フェアトレードコーヒー普及、販売、周知の企画をした経営学部生、社会問題の取材活動や防災・減災啓発活動をおこなった現代社会学部生、中国の獅子舞を披露することを通じて異文化理解と国際交流を進めたグローバル・コミュニケーション学部生、自主的な勉強会を継続して開催し、専門の学びを共有する試みを実施した薬学部生、神戸の自動車販売会社の人事評価制度について検討し意見を発表した経済学部生、地元中小企業のインタビューに取り組んだ人文学部生、非行少年を更生させる学習支援をした心理学部生、ボランティア活動支援室学生スタッフ医療班として学内献血などの実施に尽力した総合リハビリテーション学部生、阪神百貨店、まねき食品とのコラボおせち開発・販売に取り組んだ栄養学部生。多くの学生が地域や仲間と繋がってそれぞれの「素敵」を見つけています。

神戸学院大学は、皆さんの「素敵なこと」を実現する「準備」を全力で応援していきます。そして、皆さんが卒業の時に自らの成長を実感して、自信を持って社会に飛び立ってくれることを心から願っています。
 新入生のご家族、保護者の皆様におかれましては、大学とご家庭の「架け橋」として長い実績のある「教育後援会」の一員となられます。教育後援会の活動を通じて、神戸学院大学に親しみを感じていただければ幸甚でございます。

本学は今年1月に創立57年を迎え、学校法人神戸学院は、今年創立111周年を迎えました。新入生の皆さん、ぜひこの神戸学院大学の一員として、思う存分様々な「偶然」に出会い、自らの歴史を切り開く「準備」をしていってください。

最後に。人生で最も素敵なことは偶然起きます。
本日はご入学、誠におめでとうございます。

2023年4月6日

神戸学院大学学長 中村 恵