第8回男女共同参画サイエンスフォーラムを開催しました
2025/10/20
男女共同参画推進室は10月3日、有瀬キャンパスで第8回男女共同参画サイエンスフォーラムを開催しました。女性研究者を招き、キャリアや専門分野についての話を聴く企画で、総合リハビリテーション学部に今春赴任した見須裕香講師と小坂菜生講師に佐野光彦学部長がインタビューしました。
冒頭で男女共同参画推進室の中山文室長が「『理系女子(リケジョ)』の参考になればと始めたフォーラムですが、男性も社会に出れば知っておく必要がある内容です。お二人の先生方は人と向き合う研究者です。皆さんも社会に出て多くの人と向き合ってください」と開会のあいさつをしました。以下はインタビューの概要です。
佐野学部長 それぞれどのような研究をなさっていますか。研究を始めたきっかけは。また、特に「面白い」と感じる瞬間はありますか。
見須講師 自立した高齢者の身心機能や生活状況などを調査し、一定期間追跡することで介護が必要になった人とそうでない人を比較し、影響を与えた要因を調べています。作業療法士が対応する対象者は何らかの障がいがある方が多いのですが、自立されている段階でできることがあるのかと考えました。仮説通りの研究結果が出た時は「やって良かった」と思います。学会発表で研究成果が形になるとうれしいし、キャリアにもつながります。
小坂講師 デジタル等を使って高齢者や障がい者の課題解決に取り組んでいます。車椅子使用者でもこぐ力は障がいの種類やレベルによって違うので、その人の力に合わせた坂道の難易度を表示したいと思い、研究を始めました。災害時も避難所により安全に行けるようになると思います。また車椅子使用者だけでなく私のような義足ユーザーや高齢者といった歩行困難な方にも応用できると考えています。
佐野学部長 いずれの研究も結果を『見える化』されているところが面白いですね。続いて高校生のころ、どんな教科が好きでしたか。理系を選んだ理由は。研究者になるまでの道のりは。
見須講師 英語以外は嫌いでした。作業療法士になりたいと思ってからは変わりました。自助具を作ったり自助具について調べたりしました。元々は文系でしたが作業療法士の道を選んだらそれは理系でした。私は本学の作業療法学科卒業生です。病院や訪問看護ステーションで働き、臨床10年目で大学院総合リハビリテーション学研究科に進んで修士号を取得した後、研究所(国立長寿医療研究センター研究所)勤務を経て博士号も取得しました。
小坂講師 絵を描くこと以外に勉強は好きではありませんでした。でも先生は好きでした。中学生の時、米国に短期留学したことから漠然と米国に行って勉強しようと思っていたのです。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で社会学を学び、元々文系でしたが、新卒でIT企業に入り、テクノロジーを使って障がい者や高齢者を支援する部署で働き、自分も誰かの役に立つものを作りたいという気持ちになり、生活支援工学に
興味を持ったことがきっかけでプログラムを始めました。一つのミスでもシステムは動かず、それを夢中になって時間も忘れて没頭するところが面白いです。
佐野学部長 理系の世界で働く中で「女性であること」を意識したことはありましたか。理系分野で女性がもっと活躍するには、何が必要だと思いますか。
見須講師 勤務した研究所では、同じチームに1人だけ女性がおられましたが、全体的に理系の研究者は少ないです。本学は女性研究者が多くていいですね。研究には時間と費用がかかります。なので、子育てをしながら研究を続けている女性はまだ少ないです。ただコロナ禍以降はオンラインサービスが普及し、自宅にいながらも研究できる環境が整ってきたことが幸いです。
小坂講師 勤務した兵庫県立福祉のまちづくり研究所では他の研究員は全員が男性でした。周りは私にとても気を遣ってくれました。子どものころに科学に親しむと良いようです。兵庫県では中学2年生が職場体験などを通じて地域から学ぶ「トライやる・ウィーク」があるので科学系の職場体験が増えると良いですね。システム開発の現場などを見学するのもいいかと思います。
佐野学部長 これから理系を目指す高校生、大学生にアドバイスをお願いします。将来や進路に悩んでいる人にどんな言葉をかけたいですか。
見須講師 自分自身が生かせる仕事につかれるのがいいと思います。何年も続くので楽しくないとしんどいです。自分で見て、見極めて合っている職業を選んでください。悩んだときは失敗してもいいからやってみるといいですね。
小坂講師 面白いと思うことを探してみることです。違う方向へシフトチェンジしてもいいです。(目標は)プランAからプランCぐらいまで作っておくといいかもしれません。
佐野学部長 これからの夢やチャレンジについて教えてください。
見須講師 いかに作業療法の面白さを伝えるかです。教育面でレベルアップしたいです。英語力を磨き、国際的な研究に取り組みたいです。
小坂講師 私自身が義足ユーザーですので、義足の歩行についての研究に取り組みたいです。
学生からは「私は県の男女共同参画アドバイザー養成塾で学んでいます。孤独な高齢者の方にどのようにアプローチしたら参加してもらえるでしょうか」と質問が出ました。見須講師は「周りの人とのつながりが少ない孤独な人は人を信じることに慣れていません。地域を巻き込みコツコツと取り組んでみてください」と答えました。小坂講師は「学部の実習で、大学の近くの団地で食事の配膳や宅配サービスを通じて住民の皆さんを見守る活動をしています。食を通じてつながるのはいい方法かもしれません」と答えました。