神戸学院大学

「総領事館連携講義」でコルスンスキー前駐日ウクライナ大使が講義しました

2025/12/15

備酒学長(左から2人目)と高山大学事務局長(左端)を表敬訪問したコルスンスキー前駐日ウクライナ大使(中央)
備酒学長(左から2人目)と高山大学事務局長(左端)を表敬訪問したコルスンスキー前駐日ウクライナ大使(中央)
備酒学長(左端)と懇談するコルスンスキー前ウクライナ大使(中央)
備酒学長(左端)と懇談するコルスンスキー前ウクライナ大使(中央)
個人情報を盗む危険なサイトについて講義で注意を促すコルスンスキー前駐日ウクライナ大使
個人情報を盗む危険なサイトについて講義で注意を促すコルスンスキー前駐日ウクライナ大使
学生から質問を求める国際交流センターの岡部芳彦所長
学生から質問を求める国際交流センターの岡部芳彦所長
質問するウクライナからの交換留学生
質問するウクライナからの交換留学生

共通教育科目の授業として企画された「総領事館連携講義」で12月10日、セルギー・コルスンスキー前駐日ウクライナ大使がポートアイランド第1キャンパスで講義しました。有瀬キャンパスともオンラインで結んで実施しました。

コルスンスキー前大使は今回が本学で4度目の講義となりました。元は教育者で、応用数学が専門の理学博士です。2020年に大使に就任し、22年にロシアがウクライナに侵攻。過去の講義では生々しい被害状況の報告があり、日本の支援への感謝を伝えてもらいました。今年4月に大使を退任し、7月にテンプル大学ジャパンキャンパスで特別招聘教授兼特別顧問学長補佐に就任。「日本サイバーディフェンス」社のシニアアドバイザーも務めています。

講義に先立ちコルスンスキー前大使は、国際交流センターの岡部芳彦所長の案内で備酒伸彦学長と高山修大学事務局長を表敬訪問しました。教育者は歴代の大使の中で初めてだったというだけに教育の現状などが話題になり、「日本の国立大学の中では留学生の学費を値上げするところが出てきています。これは留学生の数を減らすだけで、望ましいことではありません」などと前大使は述べました。さらに現職に関係するサイバーセキュリティ―についての話題では、日本でもアサヒグループHDがサイバー攻撃を受けて業務に大きな被害が出たことに触れ、「どの企業も完全に安全とは言えません。この分野ではウクライナには対処の経験があります」と述べました。

講義はAIの開発競争が国家間の覇権争いの一部になっていることを紹介しつつ、よく言われる「AIが人間を駆逐する」という言説には根拠がないと批判しました。巧妙に個人情報を盗むデジタルサイトが存在するほか、コルスンスキー前大使もあたかも自身であるかのような偽のアカウントを作られて事実とは全く違う言説をまきちらされる被害を受けていることを紹介しました。

またかつてはコンピューターのメモリーが巨大だったことや最初のモトローラ社の携帯電話は電池が20分しかもたなかったことなど、IT社会が到来する前の状況は隔世の感があることが写真で示され、当時まだ生まれていなかった学生にとっては驚きの連続でした。

質疑応答に移り、グローバル・コミュニケーション学部日本語コースの留学生は「AIと人間との共存はどうすればいいのでしょうか」と尋ねました。コルスンスキー前大使は「個人個人が批判的思考を身につけることです。AIが有益な場面では使えば良いのですが、何のためにどのように使うかを理解することです。AIはすべて正しい答を出すかというとそれは違います」と答えました。

またウクライナからの交換留学生は「個人情報の提供は避けたほうがいいと思いますが、すでに広がってしまっている場合はどうすればいいのでしょうか。自分の個人情報が悪用されないように期待するしかありませんか」と尋ねました。コルスンスキー前大使は「日本では銀行のカードやマイナンバーカードなどを作るにも数多くの個人データを提供しなければなりません。ネットショッピングを利用した人の過去の購入履歴を見たらスパイでなくても購入者の個人情報がいろいろ分かります。今や個人情報の提供は避けられませんが、過剰な要求に対してはそのデータがどのように使われるかを理解しておく必要があります」と答えました。