講演会「トラネキサム酸―人類に貢献するジャパン・オリジナル・ドラック」を盛大に開催しました
2012/05/31
講演会「トラネキサム酸―人類に貢献するジャパン・オリジナル・ドラック」が5月6日、ポートアイランドキャンパスで開かれ、120人以上が参加しました。
この講演会の様子を、岡田芳男元学長の寄稿より報告します。
本講演会はロンドン大学のロバーツ教授によって企画されたもので、トラネキサム酸という日本発の薬の過去、現在、未来を語り合うこと、さらにその開発者の一人であり、本学の名誉教授である岡本歌子先生の女性科学者としての生き方を紹介することを目的として企画されました。
トラネキサム酸は、50年前に岡本彰祐先生(元神戸大学教授)・歌子先生と多くの共同研究者により発見され、今では世界120カ国以上で止血剤、抗炎症剤として使用されている日本生まれの薬です。
まず初めにこの薬の開発経緯とそれに携わった人々の信条を「トラネキサム酸の生い立ち」として和中敬子氏(血栓止血研究神戸プロジェクト)が紹介し、次にロバーツ教授が一昨年Lancet (医学分野における権威あるジャーナルの1つ)で報告した外傷出血におけるトラネキサム酸の大規模治験(CRASH-2)の結果、さらに現在進行中の産後出血に対する大規模治験(WOMAN)について「トラネキサム酸―日本から世界へ」と題して紹介されました。そして最後に発売されて半世紀が経過しても今なお成長し続ける、トラネキサム酸について「歩みつづけるトラネキサム酸―ロングセラーへの軌跡」と題して奥谷幸裕氏(第一三共株式会社)が報告されました。英語の講演には日本語通訳もつき、またパフォーマンスを交えた解り易い講演で、専門知識を持たない方々にも十分理解ができたと好評でした。
そして、非常に印象的だったのは岡本歌子先生のインタビュービデオでした。これはCRASH-2の報告のため神戸を訪れたロバーツ教授が94歳の現役研究者である岡本歌子先生に強い関心を持ち、昨年末に再び神戸を訪れてインタビューを行い、その人生に感銘をうけて制作されたショートフィルムです。LancetのWebサイトにも掲載されていますので、興味のある方は一度のぞいてみて下さい。
LancetのWebサイトはこちら
当日は、医療関係者、大学関係者、卒業生、学生など幅広い分野から多数の参加者があり、最後に大学内のカフェテラスで行われた交流会は、職業や年齢の垣根を越えた和やかな雰囲気でした。