入学式告辞
2007/04/13
本日ここに、理事長はじめご来賓各位のご臨席をいただき、入学式を挙行いたしますことは、この上ない栄誉であります。まずは心からの御礼を申し上げます。また、ご列席の保護者ご家族各位におかれましてはご令息、ご令嬢の晴れ姿に、さぞご満悦であろうと推察いたします。謹んでお喜びを申し上げる次第でございます。
さて新入生諸君、神戸学院大へようこそ。本日入学された学部学生2723人、編・転入学生10人、大学院生96人の諸君を心から歓迎いたします。
本学は、1912年の学校法人開設以来、昨年で94年の歴史を有し、大学を開学して40周年という節目を迎えました。その記念としてポートアイランドキャンパスを開設しました。甲子園球場の約4倍の敷地をもつ新キャンパスは、都市共生型の新しい大学モデル構築のためのフロンティア・キャンパスにする事がねらいです。神戸の行政機関・経済界・医療施設・弁護士会などの各種職能団体や地域の方々との連携を深め、社会のニーズに対応できる実践的教育を行います。ポートアイランドにルネサンスの華を咲かせたいと思っています。新キャンパスは風格を備えたデザインで、緑の芝生にそびえるイギリス製の赤レンガの学舎は、伝統的ヨーロッパの大学を思わせます。周辺の3500本もの樹木は10年も経てば見違えるばかりになるでしょう。これが諸君の学舎です。ぜひ後でゆっくりとご覧下さい。なお、本学発祥の地である有瀬キャンパスは、培ってきた伝統・文化を継承する母なるマザー・キャンパスであり、全学生が一堂に会した教養教育の場として、また地域密着型の健康・福祉・人間のあり方を、地域の人々とともに学ぶ場として機能していきます。さらに地域の法的ニーズに応えるコミュニティー・ローヤーを養成する法科大学院の長田キャンパスとあわせて、三つのキャンパスで本学の理念を実践していきます。
さて諸君、諸君は小学校から今までいろいろな勉強をしてきました。この勉強とは何でしょうか。本当の意味の「真の勉強」とはどういうものでしょうか。入学試験に合格するためでしょうか。ペーパーテストで良い点数をとるためでしょうか。わが国の教育は、これまであまりにもペーパーテストにかたより過ぎてきました。欧米諸国では、課外活動などを含めて総合的に学生諸君の人間力を評価するのが当然だとされています。課外活動も教育として高く評価し、学生諸君の感性・資質を育成することが重要なのであります。専門知識だけを詰め込むのではなく、その知識で何をなすべきかを考え行動することができる、しっかりとした人間形成を行うための教育、「知育・徳育・体育」の3要素が最も要求されている時代が21世紀であります。東京大学の外国人教授が、東大生などの日本の大学生を次のように批判しています。曰く「あの連中の無気力さ、向学心の欠落、教養のなさ、無作法、礼儀知らず、人を思いやるという想像力のなさ、ほとんど白痴的ともいえる軽いノリと称する低俗なユーモアー感覚、おまけに、そういった自分たちの現状を全く自覚していない愚かさ、日本の大学生というのは受験のための偏差値は高くても、人間としての偏差値は最低だ、小学生レベルで精神の発育が止まってしまったとしか思えない」以上です。勿論、例外はあります。しかし総論としては、この外国人教授の言う通りだと私も思います。わが国における大学教育の現状は、礼儀や挨拶もできず、人としての心も魅力も持たず、情熱・意欲はおろか志しも持たないまま、ペーパーテストで知識のみを詰め込まれた学生を量産しているに過ぎないのではないかと憂えています。こういった学生を次々と社会という戦場へ送り出し、次々と挫折する。社会の荒波の中で、人間として自らをさらに向上させることができないからです。
諸君、課外活動に積極的に参加しましょう。私は学生時代、剣道部に属し全関西の大会などに出場しました。課外活動で人生の友を得ましたし責任感、志や使命感、判断力・行動力など、私のその後の人生にかけがえのないものを学びました。「知育・徳育・体育」の一環として、クラブ活動も「真の勉強」であります。本学はこれまで、20世紀を代表する元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏(本学名誉博士号授与)、ノーベル学者の小柴先生や女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんや野口みずきさんの講演会など、これらはすべて「真の勉強」の一環として企画されたものです。社会で活躍している本学出身者についても、その幾つかが、後程ビデオレターやお祝いメッセージとして紹介されますが、輝いている先輩たちは数え挙げればきりがありません。大学創立わずか41年にしてこのような実績を持つことに、全国の国・公・私立大学から驚異の目で見られています。新入生諸君も、4年間の学生生活でしっかりと「真の勉強」をして自分を磨いてください。
人生においては、中学・高校時代からの「偏差値」と言うくだらない怪物に支配されてはいけません。卒業して社会に出てから「学び・考え・工夫する」ことの方が、むしろ学生時代よりも圧倒的に多い事を肝に銘じて下さい。「学び・考え・工夫する」ことは生涯を通じた営みなのです。神戸学院大学在学中にできるだけ早く「学び・考え・工夫する」ことの意味や喜び、「学び・考え・工夫する」姿勢や方法を身につけてください。これこそが諸君の人生にとって最も重要なことなのです。現代の若者の傾向は、自らが何を考え何をやりたいのかの明確なビジョンを持たずに、単に「大学では社会で役に立つ専門知識を学びたい」と漠然と応える人が多いのです。しかし例えば、いくら専門的に英語を学んでペーパーテストで良い点を取っても、その英語を使って国際社会に訴えるべき中身を何も持たなければナンセンスです。専門知識というのは言わば「鉄砲を撃つ技術」のようなものです。確かに射撃の上達は必要です。しかし、戦場を駆け巡る強靭な足腰や、戦局を見抜く判断力、味方の心を掌握する能力など、そういった「人生における基盤的能力いわば人間力」がなければ、すぐに戦死してしまいます。社会という戦場では知識にかたよるのでなく「知・徳・体」つまり「ちえ、こころ、からだ」のすべてが要求されるゆえんです。諸君はこれまでの「偏差値教育」のための勉強から、自分自身を向上させ、自分の人生を切り開くための「人間力を磨く真の勉強」へ頭を切り変えてください。現代社会はそのような人材や能力を求めているのです。大学在学中の過ごし方によって、これからの長い人生、いくらでも逆転することが可能です。勿論、うかうかしていると逆転されてしまいます。諸君、今日から再出発です。再出発をするという、堅い堅い決意をしましょう。
最後にもう一つ重要な話しがあります。諸君は小学校から今まで、答えが必ず1つ存在するという小さな世界で、ペーパーテストのための勉強しか知らない環境で育ってきました。しかし諸君が本学で磨かなければならない能力とはそのようなものではありません。一つの問題に対して「ある概念の元ではこういう結論が得られるが、別の概念のもとでは別の答えもあり得る」というように、「答えは必ず1つとは限らないという意識改革」が重要です。現代社会が諸君に要求している能力はこれなのです。概念の世界で知的遊戯を楽しむための「真の勉強」に目覚めましょう。
次に重要なことは、そのようにして得られた自分の答え・結論が「どれだけ他人と異なっているか」を知ることです。諸君、他人と異なった考えをもっている自分に誇りを持ちましょう。そして同時に、他人もまた各々異なった考えを持っていることに価値を見出し誇りに思っていることを、そういう他人を認めましょう。
互いに認め合ったうえで、次に重要なことは、その問題について議論をしましょう。相手に自分の考えを正確に理解してもらうためにも、論理的な正確な日本語を的確に話せるようになりましょう。諸君の全能力をかけて、良い意味での口論・喧嘩をしましょう。こういったプロセスから生み出されてくるものこそが、諸君の人生にとって何ものにも代え難い「真の勉強」となってくるのです。議論の相手が生涯の親友となり、そのような学生時代が人生で最も輝いた時代として心に残るのです。このような議論の相手は友人でも先輩でも良いのです。当然の事ながら、先生方を相手に議論を挑む事こそが神戸学院大学の学生として最も望まれる事なのです。大学という所は「他人と異なった考えを持つことに自分の価値を見出し、他人もまたそうである事を認めたうえで、互いに激論をたたかわせる所である」といって過言ではありません。これを日常的に実践している大学こそが、国際的に真の意味での素晴らしい大学なのです。
諸君、神戸学院大学は「公明正大、自由で明るい」と言われてきました。さらに最近では「元気のいい大学」「将来に期待がもてる大学」とまでの評価をいただいています。21世紀型の「地域とともに学び、世界にはばたく」新しい大学を目指して、われわれとともに自由で明るいキャンパスで激論を戦わしましょう。諸君とともに神戸学院大学に21世紀型の新しい文化を創造していきたいと思っています。どうか、本学在学中が最高の青春であったと、思い出に残るような積極的な学生生活を築かれますよう、祈念して告辞といたします。
本日は本当におめでとうございます。




