明石市文芸祭で森さんが市長賞、山田さんが文芸祭賞を受賞しました
2012/02/29
第38回明石市文芸祭(明石市、明石市文芸祭実行委員会主催)の詩部門で、森聡子さん(薬学部6年次生)が市長賞に、また、小説部門で山田健司さん(人文学部4年次生)が文芸祭賞にそれぞれ選ばれました。森さんの作品は「きせつ」と題するひらがな表記の作品です。東日本大震災がテーマで、選者は「意味の流れがよく分かるように一字空けた工夫があり、技量を高く評価する作品」と講評。また、ペンネーム、龍月つかさで投稿した山田さんは小説創作研究会“うぐいす”に所属。受賞作品「空を見上げて」は、白昼夢のように、10年ぶりに訪れた公園で少年時代の自分に会うというストーリーで、高い評価を受けました。
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独立団体新聞会は、森さんと山田さんにインタビューしました。まず、森さんです。
詩を書き始めたきっかけは?
高校生のときから書いていました。もともと文章を書くのが好きでというのが一番ですかね。最初は小説ばかり書いていましたが、明石市文芸祭にはいろんな部門があるから、詩も出してみようかなと思って……。今回は小説と詩を出したのですが、以前は短歌を出したりもしました。何でもやるっていう感じです(笑)
普段書いている詩や小説は
普段、詩は書かないんです。そうですね、年に一度だけ明石市文芸祭のために書くぐらいで。小説はファンタジー系とか時代劇とか、何でも書きます。
好きな作家は
川上弘美さんとかは、多分影響を受けていると思いますね。川上さんは、変なところに住んでいる人なんです。変な世界を行き来できる人なので、その世界に行ってみたいというか、こういう世界のことを書いてもいいんだっていうのを知ったのが川上さんの作品だったので、影響を受けているのではないかなと。
市長賞を受賞した感想を
素直にうれしいです。詩を書くときは、あんまり気負わずに書こうと思っているんですが、やっぱり東日本大震災のあとだったんで、こう……震災っぽくなってしまったというか、どうしても自分が震災のほうに気持ちが向いていないといけないんだなあっていう詩になってしまって。それを出したら、その気持ちを審査員の方が汲んでくださったらしくて、読み手と書き手の波長が合ったのはすごくよかったな、と思いました。
作品で表現しようとしたことは
詩を書くときはあんまりこだわらないんです。たいてい15分ぐらいでパーッと書いちゃう。なんか、こう……今回の作品は気がついたら全部ひらがなの詩になっていたので。あんまり理由というものはないですが、最初は2文字ぐらい漢字があったんですけど、それをひらがなに直したらいい具合にぼやけたなと思って。……なんか、ぼやかしたかったんですよね、自分の気持ちを。そこがこだわりといったらこだわりかなぁ。
できるだけ、とにかく震災っぽくならないようにと思って書いたのですが、最後の一言でふわっと出てしまったっていうような感じです。
今後の抱負を
もっといっぱい作品を書けっていわれたので、今後、文芸だけは続けていけたらいいかな、と思いますね。いっぱい書いて見えてくるものもあると思うので、そういうのがわかるようになりたいです。
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次いで、山田さんのインタビューです。
小説を書き始めたきっかけは何でしょうか?
いくつかあります。やはり一番は自分が読んでおもしろいと思った小説だとか、楽しいと思った小説だとか、これはためになるとか、そういう風に思った小説を自分で書いてみたいと思いまして。そういった小説を構成し直して、「こういう場合だったらどうなるだろう」だとか、そういう感じの「仮定」の話を楽しむのが高じて、自分で一から物語を考えて書くことにつながっていったのだと思います。
一番初めに書いた小説は?
中学校2年生の時に、先生との連絡のやり取りというか、その日に思ったことを書いて先生に渡して、先生から返事をもらうという、交換日記のようなものをしていたんです。あるときそこに、小説を書くことに興味があるんですって書いたら、「じゃあ、ここに書いてみて」と言われまして。最初はホームルームの5分ぐらいで書いていたんですが、途中からはそれじゃあ足りないからともう一冊もらいまして、暇な時間に書いてっていうぐあいにのめり込んでいきました。
でも、もしその先生が「書いてみてよ」って言ってくれなかったら、小説を書くことはなかったかもしれません。
普段「うぐいす」で書いているのはどんな小説ですか?
今回、文芸祭に投稿したものは、基本的に純文学……っていうほど硬くないですけど。あくまで現代の歴史がベースなんですが、普段はファンタジー系の異世界物語だとか、そういった方向の小説を書いています。
ペンネーム「龍月つかさ」の由来は?
まず、自分が好きなキャラクターとして、幻想上の生物、ドラゴンから「龍」という字を入れました。「月」は、どこかで読んだ、小説だかなんだか忘れたんですけど、何かで「月」というのは龍のシンボルという風にとらえられているのを見た覚えがあって、それで「龍月」です。「つかさ」は自分の名前から「司」の一文字を取ってきました。このペンネームは大学に入った時に考え、それからは全部「龍月つかさ」で通しています。
好きな作家はいますか?
一人の作家を追いかけているわけではなくて、基本的に作品を見て判断するんですが、自分に影響を与えた作家といえば、今でも活躍なさっている岡田淳さんという児童文学作家の方です。もう一人は甲田学人さんというライトノベル作家です。この人の作品は文章もしっかりしたもので、こういうのもありなんだ、そういう文体で書いてもいいんだと思わせてくれた方です。
文芸祭賞を受賞された感想は?
自分の小説が一定の評価を受けたというか、審査員の方々がいい作品だととらえてくれたのは素直にうれしいですし、また挑戦しようという気になります。
受賞作『空を見上げて』で表現しようとしたことは何ですか?
表現したかったことというと、些細な変化というか、自分が小説を書き始めたきっかけにもつながってくるのですが、「こういうことが起きたらどうなるのだろう」といった仮定の話を膨らませるという意味では、この作品は昔の自分に出会って、それでどうするかっていう話なんですが、そういった些細だけれど変化をもたらしているといった……ちょっと何て言ったらいいのか、まとめきれないんですけど、そういう「変化」が書きたかったというのがありますね。
受賞を受けての抱負を聞かせてください
繰り返しですが、自分の作品が評価されたのはうれしいですし、また次の機会があればどんどん新しいものや、もっと良いものを書いて、また賞を取ったりしたいですし……。それこそ新人賞だとか、もっと大きなところにも挑戦したいと考えています。