文部科学省学術フロンティア推進事業 地域研究センター 心理学分野シンポジウムを開催しました
2010/02/26
心理学分野では、「地域との連携・推進に関する特別支援活動」として「地域に根ざした心理臨床」という観点から、神戸市を中心に特別支援教育における学生による教員補助や教員による巡回相談を行ってきました。また、本年3月には、人間文化学研究科心理学専攻臨床心理学系の卒業生を地域に送り、本学初の臨床発達心理士も世に送り出すことになります。
これまで、特別支援教育をめぐっては、システムやプログラムの問題に関して、関連学会のシンポジウムをみても活発に議論され、発展しつつあります。そのような中で、臨床発達心理学的立場から、どのようなことが課題であり、今後どのような研究が必要とされているのか、を考えていかねばなりません。そこで、今回は、障害のある子どもの多くが発達上何らかのつまずきを見せる言語・コミュニケーションの発達に焦点を当て、1月23日にシンポジウム「特別支援教育における言語・コミュニケーションの支援-臨床発達心理学からのアプローチ」を開催しました。
はじめに、話題提供者、指定討論者の先生の紹介の後、聴覚に障害のある子どもの特別支援教育に長年関わってこられた安達セツ子先生(兵庫県立特別支援教育センター指導主事)が、言語力の不足に関わる発達について説明し、言語発達支援の基本について再確認しました。
次に、自閉症の子どもの発達支援に携わってこられた宮澤賢二先生(兵庫県立いなみ野特別支援学校支援部教諭)が、PECSを用いた指導事例とことばの無い子どもの発語までの経過(要求表現を中心に自発的なコミュニケーションを獲得していく様子)を紹介しました。
最後に、廣嶌 忍先生(岐阜大学教育学部准教授)が、吃音の子どもの問題を通して、ことばの症状と感情・気持ちの部分は別に考えていかねばならないなど、学童期に配慮しなければならない自己効力感や自尊感情についての研究成果を紹介し、指定討論者の秦野悦子先生(白百合女子大学文学部教授)が、子どもの全体的な発達という観点から、般化や効果、獲得の順序の問題等といった点について指摘しました。
当日は、保護者の方を含め地域の学校関係者の方々、80人の参加があり、用意していた教室の変更を考えなければならないほどの盛会であり、充実した内容でした。