神戸学院大学

社会リハビリテーション学科の藤田講師が日本保健医療行動科学会の中川記念奨励賞を受賞しました

2020/07/03

研究室でパソコンに向かう藤田講師
研究室でパソコンに向かう藤田講師
賞状を手にする藤田講師
賞状を手にする藤田講師

総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科の藤田裕一講師が日本保健医療行動科学会の「中川記念奨励賞」を受賞しました。6月20日にオンラインで実施された学会総会で表彰されました。

この賞は、45歳以下で、学会誌の掲載論文、国内外での学会発表、学会関連分野での学位の取得、学会関連の諸活動などを通じて、保健医療行動科学に貢献した研究者に贈られます。受賞した賞の名称は、医の倫理を問い、患者の人権尊重に尽くした故中川米造・初代学会長(大阪大名誉教授)に由来します。
藤田講師は二分(にぶん)脊椎症という生まれつきの疾患のため、下肢障害と膀胱(ぼうこう)直腸機能障害があり、車いすユーザーです。分娩1万件のうち数人というまれな障害の「当事者」である自身の体験も研究素材とし、二分脊椎症者の語り(ナラティブ)の聞き取りを続けてきました。障害のある当事者を対象にアンケート調査も行い、統計を分析して考察を続けています。当事者の語りと統計調査の2段構えで「幸福感」や「障害の意味の変化」と捉え、二分脊椎症者の置かれている現状や当事者の意識を明らかにするのが研究の目的です。

藤田講師は大阪府立大学に提出した論文「青年期・成人期前期の二分脊椎症者における主観的幸福感や障害の意味の変化に影響する心理社会的要因」で社会福祉学の博士号を取得しました。精神保健福祉士、臨床心理士の資格を持ち、精神障害や発達障害のある人へのカウンセリングの経験も豊富です。かつて勤務したハローワークでは障害者の就労支援にあたり、雇用主からのどんなサポートをすればよいかという相談などにも応じていました。

車いすで街を歩くと「かわいそう」だと見られるステレオタイプの障害者観が今も強く、「『頑張ってますね』などと声をかけられるのも不思議だと感じます」と藤田講師は話します。「障害があっても幸せに生きる姿」を示したいという思いから幸福感について多くの論文を執筆しました。障害者も健常者と同じで、「所属する場所があって仲間がいて、自分が誰かに支えられるだけではなく、誰かの役にも立っている」という感覚を持てることが幸福感につながると論じています。藤田講師の研究や相談援助のベースにあるのは「アドラー心理学」の手法。「人が幸せに生きるには何が必要か」という問いに答えることが根底にあるといいます。

昨年度は母校の兵庫県立北須磨高校などで講演し、自身の体験や研究などについて語りました。坂の多い有瀬キャンパスも半電動のアシスト付き車いすで移動。「広く私の活動や研究を評価していただき光栄です。快適な研究・教育環境を用意していただいた大学にも感謝しています」と受賞を喜んでいます。