神戸学院大学

東日本大震災等の被災地支援活動

12月6日 災害支援ボランティア報告会

2014年12月6日(土)14:00~17:00
ボランティア報告会

場所 神戸学院大学有瀬キャンパス
主催 神戸学院大学東日本大震災災害支援対策本部
神戸学院大学地域研究センター心理カウンセリングセンター

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被災地支援ボランティア報告会 報告書
以下の通り報告いたします。

名称 災害支援ボランティア報告会「災害ボランティアの展開」
~学生の緊急支援・仮設生活支援の経験を明日へつなぐ~
目的
  1. 学生ボランティアの活動実績を共有する
  2. 学生の報告を受けて今後の方向性を協議する
  3. ボランティアの体験と学生の教育の関連を考える
日程 2014年12月6日(土)14:00~17:00
会場 神戸学院大学有瀬キャンパス 9号館942教室
参加数 学生及び教職員 85名(登壇者、学生スタッフ含む)
主催 神戸学院大学 東日本大震災災害支援対策本部
地域研究センター・心理臨床カウンセリングセンター

プログラム

14:00 開会のあいさつ 上田雅弘 学生支援センター事務部長
14:10 基調講演「東日本大震災から4年 兵庫県の被災地支援状況」
講師:ひょうごボランタリープラザ 災害支援アドバイザー 高橋守雄氏
15:00 活動報告「神戸学院大学の実績報告と問題提起」
16:00 ディスカッション「神戸学院大学災害支援の方向性をみいだす」
17:00 終了

報告者

発表1「東北仮設住宅の生活支援」 山田彩華さん
森田佑佳子さん
岩﨑英明さん
石橋尚大さん
発表2 「神戸からの支援」 北崎翔太さん
馬野大輝さん
発表3「丹波・広島災害緊急支援」 楠瀬孝和さん
山根教嗣さん
発表4「南海トラフに備える和歌山県での体験学習」 田中瞳さん

ディスカション「神戸学院大学災害支援の方向性をみいだす」

2014年度の災害支援ボランティアは、2011年より継続している東北宮城県での仮設住宅生活支援に加え、丹波市、広島市土砂災害への緊急支援、和歌山県での今後の災害に備えた体験学習など多岐にわたった。活性化する学生ボランティアを支えるものとして、①コーディネーション、②教育、③こころのケア、④経済的支援と整理し、それらの支えるしくみについて、それぞれの専門家、担当者が集まりディスカッションを行った。

安富 信 氏 神戸学院大学 現代社会学部社会防災学科 教授
守田 敦子 氏 同 心理臨床カウンセリングセンター(臨床心理士)
四宮 千佳子 氏 同 社会連携グループ(東北支援の現地コーディネーター)
川口 謙造 氏 同 ボランティア活動支援室(災害支援ボランティア担当)
垣谷 宣男 氏 同 学生支援グループ(教育後援会担当)
高橋 守雄 氏 ひょうごボランタリープラザ災害支援アドバイザー 他
司会: 日高 正宏 氏 神戸学院大学 人文学部人間心理学科 教授

学生ボランティアのあり方

日高:自己紹介を兼ねて、それぞれの立場から学生ボランティアに関するお考えをお話ください。

安富:災害支援は初心者でも「行きやすい」入口を用意し、その上で継続的に活動を続けていく動機となるような経験が必要と思います。そのためには、まずは汗をかいて達成感を得ることです。その上で、現場の匂いをかぎ、色々な状況を見て、いろんなことを肌で感じて勉強してほしい。
さらに、災害支援にはさまざまなフェーズがあります。たとえば現時点で丹波市、広島市は緊急支援から復旧、東北の場合は復興期のフェーズですね。ニーズはフェーズによって変わります。「こんな支援をやります」だけでは被災者の自立につながらない場合もある。「一緒に考えてやりましょう」という支援も必要となってくる。

川口:ボランティアというのは自由で自発的な活動なので、ニーズに沿って活動する一方で、わくわくする気持ちを忘れないでほしい。まず行動してみることで、特に災害支援においては準備を万全に整えていては間に合いません。とにかく動きながら考えてみるというような勇気も、ぜひ持ってほしい。
また被災地では災害支援の専門性だけでなく、福祉、医療、心理、環境、栄養、国際、建築、法律、経済など、いろんな知識が求められています。所属や経験を超え、柔軟性の高いチームワークで取り組むことが僕のこだわりです。協働には苦労も多いけれど、安易なプライドは捨ててつながってほしい。

四宮:私は主には被災者に寄り添いながら現地のニーズを受け止め、学生、大学に伝える役割でした。その立場から、まずは現場の問題を見つけて、それを学生の立場でどう改善するかを考える力をつけてもらいたい。現地での活動に入ったならば、それは誰かがやってくれるという意識ではなくて、自分たちでできることを発見していくプロセスが大切だと思います。また、学生だけに閉じこもらず、職員、教員、地域の人、行政の人、いろんな人とつながって問題を解決するにはどうしたらよいのかを時間をかけて考えていってほしい。

学生ボランティアの支援とは…

守田:私は学生ボランティアのケアという観点で話をします。災害ボランティアの心理的サポートの実践を通し、それぞれの活動におけるボランティア学生のこころの状態についていくつかの違いを感じます。まず、災害現場を目にすることによる精神的ショックについては、災害発生からの時間の経過の影響とともに、学習会、研修会で被災地の様子を知ることが、精神的ショックを和らげる効果があると思われます。もう一つ、活動中の気持ちについては、丹波市、広島市の緊急支援活動では達成感をもつと同時に無力感もあり、気持ちの振れ幅が大きい状態になることが多いようです。一方の東北では気持ちが比較的安定しています。東北の活動は、被災者の方が今までの穏やかな生活を取り戻すためのサポートの時期に来ており、ボランティアも自分の気持ちを穏やかに保つことがとても重要になっているのだと思われます。

垣谷:今年度は教育後援会(学生の保護者会で、原則地元の自治体ごとに組織化されている)から、丹波市、広島市の緊急災害支援、さらには和歌山の体験学習のバスに対する資金援助をしていただきました。この資金援助の背景には、全国各地で多発する災害に際し、本学学生の地元をいかに支えていくのかという視点があります。近い将来起きると言われる南海トラフ、昨今の大雨・地震等の災害など、学生の保護者・親族・親戚の方も含めて地元の支えとなっていただくように、学生自身が自発的に若い力を発揮すること、自分の地元や友人の地元の力になれないかという思いを抱くことが大切だと考えます。

高橋:大学として参加する場合、被災地の受け入れの状況や方針に基づく必要があります。それをとりまとめ、災害支援の志望者に伝える機関が災害ボランティアセンター(以下、DVC)です。DVCはボランティアを支えるしくみです。兵庫県では、今年、丹波市が土砂災害で大きな被災を受けたのですが、発災後すぐに活動できたのは、災害時に行政が必要経費を補填するという事前協定があったからなのです。もちろん、DVCを通さず、直接現地の住民やNPOからの要請を受けて活動するケースもあります。その場合も、「ニーズに応える」、「自律して活動する」ことを原則に、また自ら安全性を確保してしっかり活動に挑んでください。

今後の展開への発想、新しいしくみ

日高:それぞれの専門的な観点からお話をいただきました。次に、今後の災害支援ボランティアの展開を発想するためのアイデアやご意見をお願いします。

垣谷:災害支援は被災地での支援に注目が集まりますが、いろんな展開が可能だと思います。神戸からの後方支援として東北応援物産展を実施しましたが、大学祭での取り組みなので幅広い教職員が支援に参加できることが非常に良いなと思いました。今後は大学の食堂施設を使って商品を常時販売するとか、栄養学部と一緒にイベントを企画するなど、大学の施設や学部の特色を生かしたものができれば面白いと思います。

高橋:東北の活動に関しては、被災地の方は、何か役に立ちたいという気持ちがおありです。震災から4年経っても支援は必要だけど、恩返しをしたいという思いもあります。そういう方が互いに交流したり、丹波市の支援に来られたら学生の皆さんが被災地を一緒に案内する活動も必要かと思います。

守田:高橋さんのご意見に関連しますが、東北において震災から時間が経った生活支援はとても難しい問題をはらんでいます。というのは、支援者が役に立ったと感じる時というのは、被災者側は助けが必要な存在になるということなので、無力感をもつということです。私たちが東北の方の役に立つのではなく、今の被災地のニーズは、逆に誰かの役に立ち自分たちの力を実感したいということではないでしょうか。先日、社会連携部の四宮さんから、丹波の災害があった時に、いつもお邪魔する名取の仮設住宅の方から、『丹波って神戸学院大学のある兵庫県だよね。何か今までしてもらったことのお返しに、丹波にできることはないか教えてほしい』と言っていただいたと聞きました。今、住民の方は役に立ちたいと強く思っておられるんじゃないかと思います。

まずは個人の自発性、そして学生自らが支える側にも…

安富:私が最後に伝えたいことは、支援やしくみが生きるためには学生の「とにかく被災地に行く」という自発性に基づく機動力が必要だと思います。そのような個人による自発的な動きがたくさん生まれたら組織化してやっていく、スムーズに活動が進むようなしくみを整えていくという順番が本来だと思います。

川口:賛成です。いくら大学や現地のDVCが活動を支えても、学生に活動への意欲がないと何の意味もない。また、その自発性があれば「支援してもらってあたりまえ」を超えて、活動のしくみや制度さえも学生自身が考え、提案し、改善していくことになると思います。ボランティア活動支援室学生スタッフはそのチャレンジだと思っています。

日高:ありがとうございました。私も「いのちの電話」の講師で宮城県石巻市に行き、ボランティアの様子が変わってきたと感じます。住民同士がお互いに話を聴くという活動も始まっています。新しい形のボランティア活動、あるいは災害から年月を経るにしたがって変わっていくボランティア活動も今後の注目点かなと思います。 本日は誠にありがとうございました。ディスカッションを終わりたいと思います。

(ディスカッション一部を編集)