神戸学院大学の歩むべき未来を、新旧学長が語り合うフロントライン

対談02

創立60周年を機に、
より成長できる環境へ

神戸学院大学は、2026年に迎える創立60周年という節目を機に、学修環境を大きく発展させようとしています。そこにはどんな想いが込められ、どう発展していくのか。二人の考える大学のあるべき姿とは。

創立60周年記念事業の中核となる、有瀬キャンパス1号館の建設プロジェクト

中村:本学は2026年1月に創立60周年を迎えます。その記念事業のシンボル的なとり組みとして、有瀬キャンパス1号館の建設も進んでいます。これまでポートアイランドキャンパスをうらやむ学生たちの声が多くありましたので、しっかり学生の声に応えようというのが、有瀬キャンパス再編整備計画でした。今の学生たちにとって望ましいのは何か。学修環境の整備とともに、さらに充実した教育の実践および研究力の向上に努めること。それを実現するのが一番大きなコンセプトでした。備酒先生には副学長として一緒にご尽力いただきましたので、流れも十分ご承知だと思います。

備酒:中村先生が一貫しておっしゃる「学生の集う場所」は、その通りだと思っていましたので、実現できつつあり大変嬉しく思います。

中村:学生たちが集うことによって何かケミストリーが生じ、新しいものを生み出してくれる場をつくりたいなとずっと思っていました。学生がフラッと来て集える場所をつくることが非常に重要です。有瀬キャンパスには気軽に集える場所が少ないという声があったので、1号館の1階はそういったスペースとして活用してもらえればと思います。カフェや売店に関しても、今の学生のニーズに合う環境を整えていくことは、大学の使命だと考えています。それはポートアイランドキャンパスも同じです。

新設される有瀬キャンパス1号館

備酒:せっかく1号館がそういうコンセプトで建設されるわけですから、次のステップはにぎわいですね。それも教職員が無理やりつくるものではなく、学生からわきあがってくるようなにぎわいを実現できないかと模索しています。

中村:学生がいてこその大学ですので、こうした厚生環境や学修環境の充実は、高校生へのアピールにもつながると思います。新しい形として見せるという意味でも、1号館の建設は非常に大きなプロジェクトです。

備酒:学生の声に耳を傾けることに関し、中村先生は意欲的でした。たとえば学生との学長主催昼食会にも、本当に楽しそうに出ておられました。私もその点は同じですね。私は副学長として入学・高大接続センターの担当をしていましたから、オーキャンズ(オープンキャンパスの運営スタッフ)の学生たちからの話を聞く機会がありました。あまりに素晴らしい内容だったので、彼らに「私たち大人はできない理由を考えるけれど、あなた方はやる方法を考えてくれる。私はこれからあなた方を真似た仕事をします。」と伝えてきましたので、それを実行していきます。

豊富な機会を設けて、学生たちが計画的な偶然に出会える大きな一歩に

中村:創立60周年の前に、2026年3月は同窓会ができて50周年なんですね。同窓会も、私が副学長を務めていた十数年前に比べると、随分と活発に活動されているし、かつ大学や学生に対してもいろいろなアプローチをしてくれるようになっています。以前から同窓会が活発になると、学生にとってもありがたいですねという話はずっとしていたんですけど、だんだんそれが実ってきています。50周年を迎える頃には、卒業生全体が10万人を超えます。それをまた新たな出発点として、同窓生が学生と触れ合える場がさらに広がるといいなという話は、同窓会の会長ともしていました。

備酒:中村先生は同窓会を大事にされていましたよね。学長として同窓会と一体になろうとされていましたので、同窓会役員の方々も中村先生のことが大好きでした。そこもしっかりと踏襲させていただきたいと思います。本学の卒業生は、神戸市内の社長さんが多いんですよね。私の高校の先輩にもいらっしゃいます。他大学に比べても多いと肌感覚でも感じるところがあって、地域社会の実際を担っているのはうちの卒業生なんだなと、誇らしく思っています。キャリア支援の面でも、ますます同窓会の力をお借りしたいという気持ちが強くあります。

中村:同窓会には参加していないけれども、産業界で活躍されている、あるいは企業を経営されている卒業生との接触ももっと増やしていければいいですね。兵庫県下の中小企業の経営者団体である「兵庫県中小企業家同友会」の中にも、本学の卒業生が何人もいらっしゃいます。同友会だけで活動されている方にも、ゆくゆくは同窓会の活動に参加してもらえればとは思いますが、そうでなくても神戸学院大学の卒業生ということで、ご協力いただければありがたい。つながりを深めた学生たちに地元企業で就職してもらいたいというご要望も多いので、活躍できる人材を育成して、また社会の中で育てていただくというのも本学の一つの方向性かなと思います。

備酒:出会いの機会を増やせれば、将来へとつながる可能性もふくらんでいきますからね。中村先生がずっとおっしゃっていた、計画的偶発性理論も踏襲しなければと思っています。

中村:計画的偶発性理論は、もともとはキャリア心理学の研究者の言葉ですが、経験が準備につながるという非常に好きな考え方です。結果として「どうして自分はこの人に会えたんだろう」「どうしてこの会社に入れたんだろう」といった偶然がなぜ起こったかを考えると、それまでの自分のいろんな行動に由来していたという。そういった場を多く提供することが大学の使命でもあると考えています。豊富な機会をつくっていくことが、最終的に学生たちの人生の中で、計画的な偶然に出会える大きな一歩になるんじゃないかというのは、入学式や卒業式でも言い続けてきましたが、「あのことがきっかけで、こういうことができました」といった例を聞くと、本当に嬉しく思います。

備酒:場をつくるための努力が大事だというのはまさしくそうですね。肝心なのは準備をしておくことだと思います。これはこのまま踏襲しますので、同じことを言っていても笑わないでくださいね(笑)。大学の根本にアカデミズムがあることを理解したうえで、それをもって地域とつながり、貢献していくことが大切だと考えています。本学としては、アカデミズムの根幹たる部分は守りながら、地域とつながり発展していくことに注力したいです。

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