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経営学とデータサイエンスの両方を学ぶ意義
Topic03

経営学とデータサイエンスの両方を学ぶ意義

小川:日本としてもデータを扱える人材を育てなければなりません。そのようななかで、本学の経営学部にデータサイエンス専攻ができます。経営学とデータサイエンスは両軸で、その2つを学ぶことにより、活躍の幅は広がると思うのですが、現代社会において、両方を学ぶ意義、魅力についてお話いただけますでしょうか。

石賀:金融では事業性評価といって、銀行や信用金庫などが企業の事業内容を評価分析します。データで分析する部分も大きい一方、会社の特性のような、データでは示せない光るものも評価の対象となります。バンカーとしての審査は、経営学的なセンスとデータサイエンスのセンスを兼ね備えることで初めて成り立つものです。両方を学ぶことによって、その企業を複眼的に評価できるわけです。

:マーケティングを行う際にも調査は必要ですが、今後、世界の企業と互角にビジネスを行っていくには、やはりデータサイエンスの知識やスキルは不可欠です。世界の企業と渡り合っていくバックボーンとして、ビジネスに一番近い経営学部が教育に取り組むのは、とても有意義なことです。

齋藤:今データサイエンスが注目されているのは、そこからさまざまな価値が生みだされるからです。金銭的な価値もあれば利便性もあり、環境負荷の軽減などもあります。データサイエンスだけではわからない部分を経営学できちんと勉強して、分析や解析の部分を加えていけば、データから価値を創造できる人材を育成できるのではないかと考えています。

小川:どれだけ時代が変化しても、企業にとって存続し続けることが一つの意義だとすれば、時代や環境の変化に柔軟に対応していくことが求められますが、今の社会ではデジタル技術への変革であるデジタルトランスフォーメーションやデータの活用への対応だと思います。データサイエンスの価値となるとやはり実社会との関わりが大事になってくると思いますが、産官学連携の取り組みについてもお教え願えますか。

齋藤:先述のKOBEスマートシティ推進コンソーシアムには、大学として唯一、神戸学院大学も正会員として入っています。参画企業からの神戸のスマートシティを実現するさまざまな提案に対し、学生が連携していくようなプログラムを考えています。企業の実課題を解決する取り組みはもちろん、たとえば地下鉄がいかに環境に良いのか、具体的に示して市民のCO2対策を提案することもできるでしょう。ビジネスに限らず、カーボンニュートラルやウェルビーイング(心身・社会的に良好な状態)などに向けた課題も、いかにデータを使って解決していくか模索しているところです。

小川:KOBEスマートシティ推進コンソーシアムは規模の大きな企業が中心となりますが、辻先生は神戸青年会議所の若手の方々ともいろいろ取り組まれています。中小企業ではいかがでしょうか。

:必要性は感じていますが、規模が小さいと、なんとなく昔ながらの商売でも事業を継続できることも多いのです。けれど世代が替わったときに、今までのやり方でいいのかといった課題を皆さんお持ちになります。とはいえ日々の業務に追われ、ゆっくりデータサイエンスに向き合えるかというと、現状では難しい。なので「データサイエンスをできる人」を新規採用時に求める傾向にあるわけです。
しかもデータサイエンスで得た情報から、新たな価値を生みだすのは、文系の考え方を持っている人の得意分野でもあります。たとえば、SNS映えするものが売れる傾向にあるというデータから、和菓子屋さんに対しラムネ味の青いあんこを使った新商品を提案することもできるでしょう。事実、青いあんこは、若い人の間でちょっとしたブームにもなりました。このようにデータを価値に変換できる人材を育てて送り出せれば、非常に喜ばれる存在になるでしょう。

小川:齋藤先生と辻先生にお話いただいたコンソーシアムや青年会議所の経営者の方々には、データサイエンス専攻のリレー形式の講義のなかで登壇していただく予定です。
石賀先生は地方銀行の事例なども見てこられたと思うのですが、経営学とデータサイエンスを学んだ人材が地方で活躍する機会はあるのでしょうか。

石賀:地方銀行は金利が低いこともあって、地域の経済基盤を良くして自分たちの収益を上げていこうという戦略をとっています。まさに地方創生と地方銀行の生きる道は同じベクトルで進んでいるのです。これまで地方銀行や信用金庫などはコンサルティングも行ってきましたが、地方の中小企業は頑張っているものの生産性があまり高くありません。巨大なシステムをつくらなくても、既存のツールを駆使してDX(デジタルトランスフォーメーション)を起こすことで、生産性を上げられる可能性もあるわけです。今まで紙でやり取りしていたものをExcelでデータ化するだけでも、業務効率は格段に上がります。そういった部分を金融の人々がサポートできれば、全国各地の地域創生も一気に進むはずです。それが地域金融機関のこれからの生きる道だと思いますし、経営学とデータサイエンスを学んだ人材は今後ますます求められるようになってくるでしょう。

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