神戸学院大学

【講演会】第1回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ2024「花や今宵の主ならまし ―平家物語と忠度塚―」

2024/04/17

日時 2024/05/18 (土) 10:00~12:00
会場 あかし市民図書館

地域研究センターでは、あかし市民図書館「地域学講座 明石の文学」と共催のかたちで講演会を実施します。講師は人文学部の中村健史准教授(国文学)。明石市内に「忠度塚」「腕塚神社」「両馬川」などが残る平家の武将・平忠度について話します。

明石は古来さまざまな文学作品に描かれてきました。『源氏物語』や『万葉集』はもちろん、西行や芭蕉、西鶴も明石を取り上げています。明石の人々はそのことを誇りに思い、江戸時代から「文学遺跡」の顕彰に励んできました。この講座では先人たちの営みを紹介しつつ、楽しく作品を読むことを目指しています。

『平家物語』前半のクライマックスともいえる一ノ谷の合戦では、平忠度が西の手の大将として登場します。忠度は剛力無双の勇士であると同時に、和歌に心をかける風流才子でもありました。平家都落ちの際、師・藤原俊成に託した歌稿から『千載集』に作品が選ばれた逸話は人もよく知るところ。一ノ谷では敗走のさなか、岡部六弥太と組んで片腕を切り落とされ、名乗らぬまま討ち死を遂げます。死後、箙に収めた一首の歌によって身元が明らかになったと伝わります。

『平家物語』が広く読まれるようになると、忠度の無念を慰めようと、神戸市西部から明石市にかけてさまざまな「遺跡」が誕生しました。明石市内にも忠度が岡部六弥太と組み討ちをした「両馬川」、切り落とされた腕を祀る「腕塚神社」、さらには遺骸を葬ったとされる「忠度塚」などがあります。特に忠度塚は明石藩主・松平忠国によって大がかりな整備が行われ、藩儒・梁田蛻巌が記した碑も建立されました。漢文で書かれているため、今ではほとんど読まれることもありませんが、海外にまでその文名をうたわれた蛻巌にふさわしく、歴史の趨勢と忠度の悲運を論じて余すところのない傑作です。今回の講座では『平家物語』はもとより、忠度の残した和歌、さらには江戸時代に建てられた忠度塚の碑を読み解きます。

本学では「2024 Green Festival」の一環として、6月22日(土)に観世流の能『忠度』(シテ 観世喜正)を上演します(第464回公演)。能『忠度』は一ノ谷の合戦に取材した世阿弥の代表作で、忠度の遺骸を葬った桜の木のもと、一夜、亡霊の繰りひろげられる幻想的な情景を描きます。今回の講演は Green Festival とも連動し、『忠度』の世界をよりよく理解するための手がかりをご提供できればと考えています。 このほかにも関連企画が準備されていますので、ふるってご参加いただければ幸いです。


 2024年5月18日(土)午前10時~12時 【無料】・【事前申込みが必要です】
 ※申込み方法は別紙のチラシ参照