―2020年の年頭にあたってのご挨拶―フロントライン

学長からの新年のメッセージ 「学生が自らの成長を実感できる大学」「社会から必要とされる存在価値の高い大学」を目指して 神戸学院大学 学長 佐藤雅美

1 はじめに

2020(令和2)年の年頭に当たり、謹んで新春のご祝詞を申し上げます。本年も何卒よろしくお願いいたします。
神戸学院大学は、栄養学部の単科大学として、100名の学生を迎えて創立されました。それから半世紀余りを経た現在では、神戸市内に複数のキャンパスとサテライト、文理10学部・8研究科、1万1000人を超える学生を擁する神戸市内で最大規模の文理融合型私立総合大学に発展しています。
昨年3月には、大学としての50期生、そしてグローバル・コミュニケーション学部の1期生を社会に送り出しました。これによって卒業生は8万5000人を超え、わが国での就職を実現した留学生を始め、さらに多様な分野で活躍する同窓生を生み出しています。
昨年は、大学院心理学研究科がスタートし、ポートアイランド第2キャンパス(KPC2)と神戸三宮サテライト(ミント神戸17F)が開設されるなど、本学の将来にとって重要な動きがありました。これらの成果を生かしながら、本年も引き続き、「学生が自らの成長を実感できる大学」を追求しつつ、「社会から必要とされる存在価値の高い大学」を目指し、兵庫・神戸を代表する「後世に残る」大学としての基盤を整備していくことが、重要課題であると認識しています。

2 第2次中期行動計画の実行・点検と長期ビジョンの策定

2018年度からスタートしている「第2次中期行動計画(2018-2022)」は、本学が社会からの信頼を得る上で重要な実行計画が「教育」「学生支援」などの5分野にわたって策定されています。これらを着実に実行・点検、さらには状況に応じた修正を加えていくことが最重要課題となります。また、大学創立50周年を機に公表した「未来50年―神戸学院大学が進むべき道筋」は、すでにかなりの進展が見られますが、進捗状況を点検しつつ、本年も引き続き具体化に努めます。なお、大学創立75周年、法人創立130年の時期、すなわち2040年ごろを想定した長期ビジョンの策定はまだ着手できていません。本年中の早い時期に、将来を担う30歳代、40歳代の教職員を中心メンバーとするワーキンググループをスタートさせたいと考えています。

3 キャンパス整備基本計画(2018-2028)の実行

今後20年余りの財務予測を精査した上で2017年11月に策定した「キャンパス整備基本計画2018-2028」を着実に実行していくことも本学の社会的責任であると考えています。KPCについては、この基本計画を前倒しする形で、2019年度後期からKPC2が開設されています。
他方、KACにおいては、進行中のキャンパス再整備に加えて、基本計画に基づき、老朽化した2号館に替わり、KACの新たなシンボルとなる建物を建設し、2023年度後期から活用する予定にしています。この建物の建設に伴って、KACのキャンパスデザインを刷新することも視野に入れて本年より検討を進め、具体的な作業に入っていきます。

4 KPC2と神戸三宮サテライトの活用

KPC2と神戸三宮サテライトの開設は、近隣大学にも衝撃を与え、神戸市などの自治体からはその有効な活用を期待する声も寄せられています。それだけにその有効活用を推進することは本学の将来にとって重要です。
KPC2は、課外活動団体の活動拠点、教育施設や図書館の補充機能を有するキャンパスとして運用を開始されていますが、広報部と社会連携部といった事務部署ならびに「学生の未来センター」が配置され、新年度には教職サポート室の充実にも活用されることとなります。今後、さらなる有効活用を提案していきます。
神戸三宮サテライトは、「知と情報の発信拠点」として多様な活用が考えられますが、地域社会への知の還元だけでなく、その立地の良さから、学部・大学院での社会人の学び直し(リカレント教育)への活用が期待されています。その具体化を2020年度から図っていきたいと考えています。

5 大学院の再編・改革に向けて

2019年度に大学院心理学研究科が開設され、修士課程では定員を確保する形で良好なスタートを切り、博士後期課程でも入学者を得ることができました。これによって、新たな国家資格である公認心理師養成の教育体制が整い、博士後期課程ではこの分野の研究者の養成にも貢献していくことになります。しかし、他の多くの研究科では定員を満たしておらず、他方で、リカレント教育の充実や高い専門的素養を持つ職業人の養成への期待が社会的に高まってくることが予想され、同時に専門領域を横断する教育システムの構築にも期待が寄せられてきています。このような状況の中で、本学でも学部の上に設置する研究科を再編して、専攻横断型や目的に応じたカリキュラムを可能にするような大学院の再編を進める必要があります。このような検討のためのワーキンググループを新年早々にも立ち上げる予定です。

6 「学生が成長を実感できる教育」の推進

本学の存在価値として最も重要なことは、「学生の成長を保証する教育」を展開することです。各学部での初年次教育において、学ぶ意義・目的の理解、学ぶ意欲や学ぶ姿勢を育成する創意工夫が重要です。これを推進するうえで、全学的な教育交流の場を設けることも検討します。
学生の成長には、学部横断型の教育プログラムも重要です。医療・保健・福祉系4学部の合同で実施される専門職連携教育(IPE)は、地域社会に必要とされる医療・福祉系人材の育成にとって重要です。また、文系5学部の学生を対象に共通教育センターが運用する「スポーツサイエンス・ユニット」や全学部対象の「神戸学院カレッジ」も充実させる必要があります。さらには、これからの21世紀社会に必要な人材育成をにらんで、データサイエンスの活用やAIの技術の理解に向けた全学的な教育プログラムを検討するワーキンググループを昨年中に立ち上げています。

7 「成長のステージ」としての準正課・正課外プログラムの充実

学生の成長にとっては、海外研修や課外講座などの準正課、さらには課外活動やボランティア活動などの正課外の活動も重要です。2014年に策定された「国際化ビジョン」に基づき、海外大学との協定が50を超え、留学生数も170名を超えました。今後も国際交流センターを中心に、海外留学・研修プログラムの充実など、引き続き国際化の対策を講じていきます。他方、本学の社会貢献・社会連携活動の実績は、本学の存在価値を高める上で重要な役割を果たしています。教員とともに多くの学生が、学びの一環として、ボランティア活動、自治体や企業との連携活動に参加する実例の積み重ねは、今後も重視して推進していきます。

8 多様な学生のための施策の推進

2019年度には、多様な問題を抱える学生のための「学生の未来センター」が開設されました。退学防止という課題だけでなく、神戸市や㈱マイナビなどとの連携で若者支援という広い視野を持つ取り組みは全国的にも珍しく、今後の各学部や関連部署との連携による運用に期待されます。また、障害のある学生の支援についても、今後はより充実させる必要があり、新年の早い時期に支援体制や支援内容を検討するワーキンググループを立ち上げることが決まっています。これらは密接に連携していく必要があり、教職協働、部署間協働の真価が問われます。

9 総合大学としての強みを生かした研究の推進

教育を支える研究については、科研申請の支援、学内での共同研究助成の継続に加えて、本学の強みを活かした学際的共同研究プロジェクトの開発ないしは発掘を全学研究推進委員会および研究支援センターの下で行っていきます。特に総合大学の強みを生かして、文理横断型の研究プロジェクトの開発を推進します。その過程で全学研究推進機構(あるいは総合科学研究所)の設置の必要性についても引き続き検討します。また、本学で推進されている研究を積極的に広報に乗せていく必要も感じています。

10 高大連携の推進

神戸学院大学附属中学校・高等学校との連携を強化し、「オール神戸学院」としての魅力を高める多様な取り組みや連携教育プログラムを新たに開発していきたいと考えています。正課の高大連携授業だけでなく、課外活動やボランティア活動での連携も推進していきます。
また、教育連携協定を結んでいる高等学校との連携教育についても継続して取り組むとともに、プログラム内容もさらに改善していきたいと思います。これらを通じて、大学での学びを高校生が経験する機会を充実させ、本学への信頼も高めていきたいと考えています。

11 男女共同参画推進計画の実行

2017年4月に公表された「神戸学院大学男女共同参画宣言」に基づき策定され、2018年度から実行されている「男女共同参画推進計画」の目標達成に向けて本年もさらに努力いたします。昨年は、本学での取り組みが評価され、神戸市から「男女いきいき事業所」として表彰を受けましたが、本年も男女共同参画推進室を中心とした様々な取り組みとともに、全学的な目標値達成に向けて対策を講じていきます。

12 むすびに――「三つの協働」と内部コミュニケーションの重視

学生の成長を具体化していくうえで、「三つの協働」を推進していきたと考えています。すなわち、学部間協働、教職協働、部署間協働です。大学全体として「学生の成長」に組織的に取り組むには、学部間、教員・事務職員間、部署間の壁を乗り越えて様々な課題に立ち向かう必要があります。また、昨年夏から、ブランド力強化と内部コミュニケーションの推進のために「ブランド力醸成ワーキンググループ」を立ち上げていますが、今後も内部コミュニケーションの強化に努めていきたいと考えています。
本年も多くの課題が待ち受けていますが、教職員がしっかりとスクラムを組んで、「学生が自らの成長を実感できる大学」「社会から必要とされる存在価値の高い大学」を目指して邁進していきたいと考えています。
本年も何卒、暖かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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