2018年1月 -学長からの新年のメッセージ-フロントライン

学長からの新年のメッセージ 「社会から必要とされる存在価値の高い大学」を目指して 神戸学院大学 学長 佐藤雅美

1 はじめに

2018年の年頭に当たり、謹んで新春のご祝詞を申し上げます。
本年も何卒よろしくお願いいたします。
神戸学院大学は、1966年に初代学長・森茂樹の下、建学の精神「真理愛好・個性尊重」を掲げて栄養学部の単科大学として創立されました。それから半世紀余りを経た現在では、神戸市内に2つのキャンパス、文理9学部・7研究科、1万1000人を超える学生を擁する文理融合型の私立総合大学に発展いたしました。卒業生も8万人を超え、様々な分野で活躍されています。
私が学長となって2回目の新年を迎えました。18歳人口の減少が進み、大学運営がますます厳しくなることが必至な状況の中、「社会から必要とされる存在価値の高い大学」を目指し、兵庫・神戸を代表する「後世に残る」大学としての基盤を整備していくことが、本年の重要な課題になると認識しています。

2 「学生が自らの成長を実感できる教育」の実践

本学が社会から必要とされ、信頼される存在価値の高い大学であるためには、入学してきた学生の「伸びしろ」に働きかけ、学生の成長を促す教育を展開することが肝要です。初年次教育の重要性を再認識しつつ、引き続き教育の改善を図っていきます。また、ここでいう「教育」は、正課のカリキュラムによる教育だけに限りません。課外活動、ボランティア活動、課外講座、海外研修や留学制度、社会連携活動など、準正課あるいは正課外の活動も含めて、教職協働で推進する教育総体が「成長を実感できる教育」につながります。「学生の成長なくして大学の発展なし」という意識を持って、学生の成長を支援してまいります。

3 「第2次中期行動計画(2018-2022)」のスタート

法人創立100周年を機に策定され、実行されてきた「中期行動計画」も2017年度で最終年度となりました。この5年間で学部の新設・再編、キャンパスの再編など大きな成果を生んできましたが、他方で課題・問題点も明らかになってきています。それらを踏まえながら、次の5年間の中期計画を「第2次中期行動計画(2018‐2022)」として策定する作業を進めており、年度内に機関決定したうえで、2018年度から実行に移していきます。本学がより高い信頼を得るためには、その各項目を着実に実行していくことが不可欠であると認識しています。

4 「神戸学院大学キャンパス整備基本計画(2018-2028)」の具体化

本学がこれからも存在価値のある大学であり続けるためには、中長期のキャンパスの整備計画、およびそれに基づく長期の財政計画が必要です。そのため昨年中に「神戸学院大学キャンパス整備基本計画(2018-2028)」を策定し、今後10年間に実行すべきハード面(建物建築)の基本計画を機関決定しました。本年は、その具体化に向けてスタートを切ります。他方で、この整備計画を前提とした長期財務計画を法人事務局とも連携しながら策定していくことになります。これらの作業を通じて、神戸学院大学の10年後の基本的なかたちが見えてくることになります。

5 「未来50年」の更なる進展に向けて

大学創立50周年の節目に公表された「未来50年―神戸学院大学が進むべき道筋」は、次の50年に向けて本学が当面取り組むべき重要課題を提示しており、これまで着実に実行してきました。今後も以下の通り、更なる進展に向けて着実に実行してまいります。

(1)地域連携・社会貢献の推進

近年、大学の社会的評価の面で、社会貢献活動は、教育・研究と並ぶ重要な事項となっています。本学はこの分野では高い評価を受けていますが、今後さらに充実していく必要があります。昨年立ち上げた「神戸学院大学総合型地域スポーツ・文化クラブ」の内容充実、「ボランティア活動支援室」を中心に展開する多様なボランティア活動、神戸マラソン応援プロジェクトなどのさらなる充実を図ります。2017年は、様々な企業との学生参加型の連携事業で多くの成果を挙げました(ブルボン、神戸凮月堂、阪神百貨店など)。さらに、9月には兵庫県と、そして年末には初代学長・森茂樹博士の出身地である淡路市とも包括連携協定を締結し、本学の特色を生かした多様な連携の取り組みが始まっています。以上のような社会連携活動は、参加する学生にとっても重要な「成長の場」であるという認識に立って、さらに推進していきます。

(2)グローバル化・国際化の推進

2015年度のグローバル・コミュニケーション学部(GC学部)の新設は、本学におけるグローバル化推進の起爆剤となっています。セメスター留学先の開拓を通して多くの海外の大学との協定が実現し、他学部や国際交流センターでも海外の大学や研究機関との連携の動きが活性化し、協定先が増大しています。また、海外研修の充実や交換留学・派遣留学のプログラム内容の見直しなども進めています。2018年度は各学部等での外国人客員教授の招聘が多く、GC学部での留学生の増加と相俟って、大きくキャンパスのグローバル化・国際化が進むものと期待しています。今後も本学にとっての重要課題として積極的に取り組んでいく所存です。

(3)総合大学としての環境を生かした学修プログラムの推進

本学の特色である医療・健康・福祉系3学部と2018年度から開設する心理学部(後述)の4学部6学科の学生を対象に、資格専門職間の相互理解と協働をテーマにした「専門職連携教育プログラム(IPE)」の単位化がスタートします。これによって、地域社会の中で実践的に貢献しうる人材の育成を推進します。また、学部横断型の「神戸学院カレッジ」(英語特別クラス)の充実、共通教育センター「スポーツサイエンス・ユニット」の実質的スタート、そして、文理10学部の教育環境を生かした共通教育科目の本格的な見直しなどを推進します。

(4)学部・学科・大学院の再編に向けた検討

2018年度から、人文学部人間心理学科を改組する形で、本学10番目となる「心理学部」が設置されます。新設された国家資格「公認心理師」の養成課程としてだけでなく、汎用性のある学問分野として心理学をアピールしていくことになります。現在、公認心理師対応カリキュラムを擁する「大学院心理学研究科」の設置に向けて作業を進めています。他方、今年度の入試結果や社会のニーズ、他大学の動向などを分析しつつ、本学の教育・研究資源を生かせるような学部・学科再編の可能性や、大学院の活性化とそれに伴うカリキュラム改革、研究科の再編についても引き続き検討していきます。

(5)本学を代表する研究プロジェクトの推進

2017年度は私立大学研究ブランディング事業への申請は、残念ながら不採択となりましたが、来年度は確実に採択されるように再チャレンジすることを機関決定し、準備を進めています。本学を代表する研究プロジェクトを目に見える形にすることで、研究面からの社会貢献の充実を通して、大学のブランド力向上につなげていきます。新たな本学のブランド力に寄与する研究プロジェクトの開発についても検討していきます。

(6)附属中学校・高等学校との連携強化など

2016年度の附属高校のポートアイランドへの移転に続いて、昨年4月には附属中学校が開設されました。これを機に、「学校法人神戸学院設置学校連携会議」を設置し、連携の強化を図っています。今後も、他大学にはないユニークな連携を推進していきます。また、2017年より入学センターを「入学・高大接続センター」として改組しており、附属中学校・高等学校との連携だけでなく、すでに教育連携を実施している高等学校との連携の充実、さらに新たな連携先の開拓なども推進していきます。

(7)2つのキャンパス環境の整備

本学の発展にとって、二つのキャンパスのバランスの取れた整備は重要課題です。とくに有瀬キャンパスについては、「有瀬キャンパス再整備実行ワーキンググループ」の答申に基づき、目に見えるような再整備が年次計画で進められており、今後も継続されます。また、両キャンパスの長期的な整備計画については、先に述べた「神戸学院大学キャンパス整備基本計画(2018-2028)」を策定しました。これからの10年で、有瀬キャンパスの2号館・3号館に代替する建物、ポートアイランドキャンパスの課外活動拠点や図書館機能を有する建物の整備が一定の予算の枠内で実行されることが決まっています。

(8)職場環境の整備

職場環境の整備の重要なステップとして、昨年4月に「神戸学院大学男女共同参画推進宣言」を公表し、10月には「男女共同参画室」を設置しました。同時に男女共同参画推進委員会、同運営委員会を立ち上げ、男女共同参画実行計画の策定作業に入っています。今後は、男女が協働して能力を発揮できる職場環境、男女ともに充実した学生生活を送れるキャンパス環境の具体的な課題となります。なお、昨年は教員採用につき、「障害者特別採用枠」を設け、可能な学部から採用人事が進められています。キャンパスのユニバーサル化の推進を目的としており、多様な能力の活用による大学の活性化が図られることを期待しています。

6 むすびに――情報の共有化の推進

神戸学院大学が、今後予想される様々な荒波を乗り越えて「後世に残る大学」となるには、昨年も述べましたが、文理・新旧9学部、大学と附属中学校・高等学校、教員と事務職員、大学と同窓会・教育後援会の間のコミュニケーションや連携を強化し、オール神戸学院としてのスクラムをさらに強化していくことが必要です。その前提として、本学が置かれている客観的な状況、他大学等の動向、文部科学行政の動きなどについて、できるだけ情報の共有を図り、進むべき方向についても構成員の認識の共有化を図っていきたいと考えています。「社会から必要とされる存在価値の高い大学」であるために、すべての構成員のエネルギーを結集していきたいと思います。
本年も、学内外からの力強いご支援、ご教示をよろしくお願いいたします。

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