メモリアルホールがサーカス小屋に変身! 躍動感溢れる舞台に拍手喝采フロントライン

マールイ・サーカスの一日
サーカス、それは生きること!

11月15日、サーカス・曲芸のプロを養成する国内唯一の教育機関である、沢入国際サーカス学校の公演がメモリアルホールで開催されました。公演にさきがけ、今回のサーカス公演を企画した人文学部伊藤茂教授と沢入国際サーカス学校の代表である西田敬一氏による対談が行われました。
対談では、開校当初の苦労話や日本のサーカスの現状など、西田さんのサーカスに対する熱い思いを話していただきました。

サーカス公演本番がはじまると、暗闇にまばゆいピンクのスポットライトがあたり、空中ブランコの演技が披露され、一瞬にしてメモリアルホールの舞台は“サーカス小屋”へと変貌しました。途中失敗もあり、ハプニングも発生。それでもサーカス学校の生徒たちは、懸命に磨いてきた技に挑戦し続け、日頃のトレーニングの成果を存分に発揮していました。圧巻したのはラストのアクロバティックなダンスシーン。男女2人の生徒がぴったりと呼吸のあったダイナミックな演技を見せて観客を魅了し、大きな拍手を浴びていました。

また、バックに流される音楽や照明は本学演劇部が担当。学生たちは、事前に脚本を読み、それぞれ研究を重ね、照明などイメージにあったプランを自分たちで考案。各演技ごとに工夫が凝らされており、生徒のパフォーマンスを最大限に引き出すことに成功しました。シガーボックスの演技中に発生したハプニングに対しても、BGMなどで臨機応変に対応していました。こうした、学生のがんばりもあって、グリーンフェスティバル初となるサーカス公演を無事終了することができました。

「グリーンフェスティバルのなかで、ぜひサーカスの公演を実現したい-。その思いがやっとかないました。」と語る、伊藤教授(写真左)と代表の西田さん(写真右)
「グリーンフェスティバルのなかで、
ぜひサーカスの公演を実現したい―。
その思いがやっとかないました。」と語る、
伊藤教授(写真左)と代表の西田さん(写真右)
限られた空間をダイナミックに揺れる空中ブランコ。冒頭から舞台は異次元の世界へ
限られた空間を
ダイナミックに揺れる空中ブランコ。
冒頭から舞台は異次元の世界へ
チューブ状の輪を、フラフープのように身体を揺らしながら、ひとつ、またひとつと数を増やしていくパフォーマンスに観客もくぎ付け
チューブ状の輪を、
フラフープのように身体を揺らしながら、
ひとつ、またひとつと数を増やしていく
パフォーマンスに観客もくぎ付け
両手に挟むシガーボックスが増えるたびに緊張感もアップ。多少の失敗もご愛嬌ということで、会場も拍手喝采
両手に挟むシガーボックスが
増えるたびに緊張感もアップ。
多少の失敗もご愛嬌ということで、
会場も拍手喝采

「沢入国際サーカス学校」とは

1979年に結成された「サーカス文化の会」による、NPO法人「国際サーカス村協会」によって、2001年に設立。群馬県みどり市東町(旧勢多郡東村)の旧沢入小学校を練習場にして活動中。日本で唯一サーカスを学べる教育機関として、全国から生徒が集まり訓練の日々を送っています。現在、“ヘブン・アーティスト”と呼ばれる東京都公認の大道芸人や、国内の有名サーカス団に入団する卒業生が出てきています。

2008年度グリーンフェスティバル秋季の他の招待公演

第270回 趙栄春 二胡・リサイタル
第272回 秋津智承 チェロ・リサイタル
第273回 T.O.P.ブラス・クィンテットの午後
第277回 仲道郁代 ピアノ・リサイタル
― モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲連続演奏 第2回 ―

※前ページで紹介の「田中美奈 ヴァイオリン・リサイタル」は除く

異次元の空間を出現させる舞台の魅力を
独自の切り口で提供し続けたい

人文学部 学部長
伊藤 茂 教授

人文学部 学部長 伊藤 茂 教授

サーカスは言葉でなく身体で表現するジャンルなので、非常にグローバル。しかも人間離れした技の数々を披露するわけですから、技を見せる側も見る側にも極度の緊張感が要求されます。しかも、3000年前からほぼ同じことを繰り返して今日まで続いているのです。そういうサーカスに以前から関心があって、グリーンフェスティバルにとりあげられないかな、と考えていました。

ただ、サーカスをお客さまに見てもらうだけならプロの団体を呼んでくればいいのです。しかし、それでは大学で主催する意味がない。そう考えているとき、沢入国際サーカス学校のことを知りました。日本にサーカスを学ぶ学校があること、そこの学生さんたちが誤解や偏見に囲まれながら着実に力をつけていること、多くのエピソードが興味深いものでした。

メモリアルホールは普通のホールで、サーカス向きではありません。どうやってサーカスを上演するのか、不思議に思っていた方も多かったようです。私も充分なパフォーマンスができるのか一抹の不安はありました。しかし、実際に彼らの演技を見せてもらって迫力のあるとても満足のいく公演になったと思います。裏方のスタッフとして参加してくれた本学学生も、舞台で突発的に発生したアクシデントにもうまく対処して、非常にがんばっていたと思います。

グリーンフェスティバルでは、大学が地域に文化・芸術を提供するからには、大学らしい個性的なプログラムを組みたいと考えています。メモリアルホールは、ふだんは大きな講堂のようですが、そこに舞台美術や照明など演出が加わることで、日常とはまったく異なる空間に生まれ変わります。その非日常性こそが、芸術公演の最大の魅力といえるでしょう。地域の方だけでなく、教職員や学生などもっと広い層の方がこれからも芸術の魅力に触れていただきたいと思います。

グリーンフェスティバルとともに歩み
成長した4年間

演劇部
人文学部 人間文化学科
4年次生  石嵜(いしざき) 夕香 さん

右から2番目が石嵜さん
右から2番目が石嵜さん

今回のグリーンフェスティバルでは、照明を中心にサーカス公演の大学側スタッフの窓口として音響など他の担当をまとめる役割を担いました。私の場合、1年次生の時に照明の仕事と出会ってから、主に照明を任され所属の演劇部でも活動してきました。2年次生からは、アルバイトスタッフとして外部の舞台照明専門の会社で週末働き、実地に勉強をさせていただいているところです。これまで関わったことがなかったので、私にとってサーカスは未知の領域でした。そこで、照明プランをどうすればよいのかを「シルク・ドゥ・ソレイユ」の映像を見たり、沢入国際サーカス学校の方から実際に使用する衣装のサンプル画像をメールで送っていただいたりしながら、照明の配色や演出などを研究しました。また、演技の妨げにならないように光の向きなども考慮に入れながら自分なりにプランの企画を考えました。公演を終えての感想は、細かな部分で不満がありながらも、無事故だったこともあり全体としては及第点を付けられるのではないかと考えています。グリーンフェスティバルには、1年次生の時にゼミナールの担当教授でもある伊藤先生から要請を受けて以来、4年間裏方スタッフとして関わってきました。グリーンフェスティバルでは、通常なら大きなホールで単体公演として行われるようなアーティストや団体のプログラムが数多く上演されています。外部でのアルバイトスタッフの仕事や演劇部の活動を行っていただけでは、そうした一流の舞台にスタッフとして直に関わり、プロのスタッフの方だけでなく舞台に立っている演者の方とも接することができる機会はなかったと思います。そうした意味でも、グリーンフェスティバルに関わった4年間は、私にとって非常に有意義な経験になりました。

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