神戸学院大学

学生生活

大西慧という男

防災・社会貢献ユニット 大西 慧(経営学部)

取材担当:学生スタッフ広報班 井藤遥(法学部)

 「さとるさんや~!」現れた瞬間に後輩たちから声をかけられる大西慧さんは経営学部に在籍しながら「防災・社会貢献ユニット」や「神戸学院大学ボランティア活動基金VAF」などで幅広く活躍する4年次生だ。さらに東北支援ボランティアにも参加し、大学在学中の4年間で何度も東北を訪れた。
 なぜ大西さんはそんなに多くのことが出来るのか。どんな高い志を持っているのだろう。「全部流れでそうなったんやで」と平然と答えた彼に思わず拍子抜けした。「最初は違う部活に興味があって、友達と一緒に部活の見学に向かってん」大西さんは自身の大学生活の始まりを語り始めた。「向かってんけど、廊下にいたVAFの先輩に誘われて、なんかいつの間にかVAFの部室でトランプして遊んでた。それで、そのときの部室の雰囲気が楽しくてVAFに入ろうと決めた」。それはまさしく偶然の出会いだったのである。「思えばあのとき一緒に行った学生も、友達の友達の友達って感じで直接の知り合いではなかったなあ」。大西さんは当時を思い出すように言った。

防災・社会貢献ユニット 大西 慧(経営学部)

 VAFに入部したことにより、大西さんは今後の大学生活4年間続く、次の新たな活動へと足を踏み入れることとなる。それが東北支援ボランティアだ。部活で出会った先輩が東北ボランティアに参加するという話を聞いた彼は興味を持ち自分も参加することにした。当時は東日本大震災から約2年が経とうとしている時期だった。そこで彼は瓦礫や家の基礎がまだ残っている津波で被災した沿岸部地域の光景を目の当たりにしたのだった。「ニュースとか見て大変そうやなって思ってはいたけど、実際に見てみるとあまりにも衝撃的で現実感がもてなかった」。ボランティアを終えて大学に戻ってからも1週間くらいは言葉にできない不思議な感覚が続いた。それをあえて言葉にするのなら「虚無感」だったと言う。「帰ってきてから日常に戻るまでも“なんだこれは…”って感じやった」。それにもかかわらず彼はその後何度も東北ボランティアに参加し、現地を訪れている。
 なぜそんなに何度も行くのだろうか。「やっぱり一番最初に行った活動が楽しくて。次の募集が始まったときに、また行こうって思った。何度も行っていると変化が見えてくるし。前に来た時にはあったものが片付けられていたり、なかったものが出来ていたり。そういう変化も続けて見ていきたいって思った。それに、現地の方が自分のことを覚えていてくれるねん。前に一緒に遊んだ子どもが次に来た時に俺のこと覚えててくれたのは、ほんまに嬉しかったな。それで気づいたらこんなに続けていた」。彼は続けた。「一番最初は先輩の影響を受けたところから始まって、2年次生になったらボランティア活動支援室学生スタッフ災害班にも知り合いが増えた。そうやって東北だけじゃなく、大学の中でも人との繋がりが出来たっていうのもここまで続けた理由の1つかな」。

防災・社会貢献ユニット 大西 慧(経営学部)

 そして3年次生になるころには自分なりの考えを持って活動できるようになっていたと言う。「ボランティアする人っていろんな人がいていいと思うねん」。その言葉の意味することを問うと彼はこう返してくれた。「ボランティアって人のためにするものやけど、まずは自分が楽しむものやと思う。相手が喜んでくれると自分も嬉しいし、楽しくなる。自分たちが楽しんでいないと、相手も楽しむことは出来ない。だからこそ、やりたいときにやればいいし、自分が楽しめるようにやればいい。中にはゆるい人がいてもいいやん。俺みたいに」。大西さんは笑ったが、眼差しは真剣だ。「もちろん、楽をしろって言ってるんじゃない。“楽しむ”と“楽をする”は全くの別物やから」。ちなみに、この東北支援ボランティアで出会った先輩をきっかけに、大西さんは「防災・社会貢献ユニット」へ入ることを決めたのだと言う。
 4年間の活動の中で大西さんが得たものは何かを聞いてみると、それは「何でもやってみよう」という気持ちだと言う。経験を積み重ねる中で行動を起こすことの大切さを実感したそうだ。「ボランティアは楽しみながらやってほしい。“楽”とも“適当”とも違う。楽しんで充実したものにしてほしい。始める理由だってなんでもいい。興味があったとか、友達に誘われたとか、就活のためにとか。どんな理由でもいい。そこに始める理由があるのなら、とにかく行動に移してみてほしい」。

防災・社会貢献ユニット 大西 慧(経営学部)

 最後に、これから社会に出る大西さんに今の気持ちを尋ねた。少し考え、大西さんはこのように答えてくれた。「どれだけ自分が楽しいと思えるのか楽しみやな」。社会人として働くという次のステップで、どれだけ自分は楽しいと思うことが出来るのか。それが今の楽しみなのだと大西さんは語ってくれた。 2016年3月に、大西慧という男は神戸学院大学を卒業し、新しい世界へと羽ばたいていく。 彼はそこでどんな人と出会い、どんなことを経験するのだろう。そして、そこで何を成し遂げるのだろうか。

編集後記
井藤 遥
井藤 遥

大西さんとは私が東北支援ボランティアに参加したときに初めてお会いしました。そこで彼の活動の様子を見たり、話を聞いたりする中で「この人を取材したい!」と強く思うようになり、今回の取材に至りました。
彼のことを知らない人がいるなんてもったいない。この記事はそんな思いで、そして「神戸学院大学にはこんな学生がいるんだ」ともっと多くの人に知ってほしくて、書き上げたものです。そこで色々と考えた末に「大西慧という男」という題名にしました。書きたい事、伝えたい事はすべて書いたつもりです。
取材させていただいた記者として、また、1人の彼の後輩として、大西慧という男のこれからを応援しています。