神戸学院大学

社会連携

土曜公開講座「『主権』をときほぐす―『歴史を物語る能力』という観点から―」を開催しました

2022/10/27

講義の様子
講義の様子
講演する佐藤准教授
講演する佐藤准教授

第84回神戸学院大学土曜公開講座を10月22日にポートアイランド第1キャンパスで開催しました。第3回目となる今回は、法学部の佐藤一進准教授が登壇し、「『主権』をときほぐす―『歴史を物語る能力』という観点から」と題し、約80人の受講者が聴講しました。

講義冒頭、佐藤准教授は、イギリスが歴史的経緯よりイングランド、ウェールズ、スコットランド、そして北アイルランドという4つの国から構成された単一主権国家を形成していることに触れました。

その後、2017年にノーベル文学賞を受賞した日本生まれのイギリス人(ブリテン人)K・イシグロの著書である「忘れられた巨人」のさわりに触れ、中世初期のブリテン島でのブリテン人とサクソン人の争いの歴史を説明しました。その中での自律的な決定能力が即ち「主権」であり、歴史と記憶のなかに存立するものであると解説しました。

つづいて、ドイツの哲学者であるカール・シュミットの「政治神学」における主権と、イギリスの歴史家J.G.Aポーコックの「歴史叙述」における主権の違いについて説きました。

さらに、イギリス(ブリテン)が、当時のEC(欧州共同体、現EU)に参加したことによりブリテン史とその過程に息づいてきたブリテンの主権が放棄されてしまったとするポーコックの見方を紹介し、EUが「歴史の終焉」の一形態であると位置付けました。

その後、政治学的、歴史的に紐解き、哲学者の考えや思想史などそれぞれの主権の考え方を佐藤准教授の視点で多方面から紹介しました。

受講者からは「主権の多様な分析の紹介、説明に視座を持つことができました」「哲学的、歴史的アプローチに大変興味深く聴かせていただきました」などの感想が寄せられました。

次回の第4回目は、10月29日開催の人文学部の早木仁成教授による「人類進化の視点から私たちのくらしと文化を考える」です。