Episode.9

子どもたちにアメフトを教える過程で、
「伝える力」が成長していた。
現代社会学部 2年次生 ※2021年取材時 津崎 晃空さん

僕にとってのヒーローは
神戸学院大学にいた。

神戸学院大学に入ってアメリカンフットボールをする。それが僕の目標だった。 きっかけは小学校5年生で参加した「アメリカンフットボール ジュニアクラブ」。 神戸学院大学の地域連携・地域貢献の取り組みの一環で、子どもたちにアメフトを通して、思いやり、協調性、フェアプレーを教えていた。 最初はアメフトにここまで真剣になるなんて思いもしなかったし、 参加したのもただの気まぐれ。けれど、気がつけば僕はアメフトに夢中になっていた。 理由の一つは仲間と一緒にグラウンドを走り回る時間が楽しかったこと。 でも、それ以上に僕の胸を躍らせアメフトへ向かわせた存在がある。 それは、ある学生のプレイする姿だ。 この出会いが「僕の人生を決めた」と言っても過言ではない。 ジュニアクラブで教えてくれる時はいつも僕たちを笑顔にしてくれる優しいお兄ちゃんだけれど、試合では別人のようだった。ボールに何度も食らいつき、全力でプレーする姿、グラウンドを駆け上がり、点数を決めて活躍する姿に「僕もこんな選手になりたい」と憧れた。 僕にとってはまさに、ヒーローのように映った。 そして、念願叶って神戸学院大学に入学。アメフト部に入部し、 僕は憧れの人と同じ道を歩み始めた。 それと同時に、「ジュニアクラブ」で、子どもたちにアメフトを教える活動も始めた。

「言葉」だけじゃなく、
子どもたちに「体」で伝える。

僕は「ジュニアクラブ」に入って、アメフトの楽しさはもちろん、 共に戦う仲間の大切さを知り、何かに本気になれる自分を見つけた。 僕の人生の基礎を作ってくれたこのクラブに恩返しがしたい。 今後は僕が、子どもたちにアメフトの魅力を伝えていきたい。 そう考えて、「ジュニアクラブ」でのサポート活動を始めた。 でも、子どもたちに教えることは想像以上に難しかった。 まず、つまずいたのがプレーの説明。ついつい、専門用語を使ってしまうから、 初心者が多い子どもたちには、なかなか理解してもらえなかった。 あの時の子どもたちの「ポカンとした顔」は今でもたまに思い出す。 伝えたいことが伝わらないもどかしさを感じながら、 「どうしたら子どもたちに伝わるんだろう」と必死に考えた。 言葉だけで説明するからダメなんじゃないか?身振り手振りで教えてみよう。 それから僕は、自らやってみせることを心掛けた。すると、言葉よりも断然伝わった。 しかも、子どもたちの動きも僕の動きを真似てどんどん良くなっていく。 子どもたちは「できない」のではなくて、「どうすればいいか分からない」だけだった。 練習の中で子どもたちの成長を感じる度に、「ジュニアクラブ」に 少しは恩返しできているかなと思う。

子どもたちの反応を大切にして
練習方法を考える。

これまでの僕ならジュニアクラブでコーチに意見することなんてなかった。 でも、気づいたことは何でもチャレンジして子どもたちの成長に繋げたい。その思いが僕を変えていった。 「大学の部活では、こんな練習をしているのですが、取り入れてみませんか?」 良いと思うことは臆せず提案するようになった。 2人1組で頭、手、足をマットに同時に体当たりをする「ヒット」の練習では、 スタートの合図を出していたけれど、出さない方法にしてみた。 子どもたち自身でタイミングを図り、一つひとつの行動に意識を払って取り組んだ方が 身につくと考えたからだ。 「リアクション」の練習も以前は、「パス」と告げると下がり、「ラン」だと斜めに駆け上がる。リアクションをするという練習と走ることを組み合わせたメニューで、すごくしんどい練習だった。 「リアクションする」ことに特化した練習メニューを作ってみたら、その1点に集中して取り組めるんじゃないか。 そこで僕は掛け声に合わせて、前後へ一歩ずつ動くだけのメニューを提案した。 すると、子どもたちはすごく集中して取り組んでくれた。 「もっと練習したい」。走りがメインのリアクション練習中には聞いたこともなかったような前向きな子どもたちの言葉が嬉しくて仕方なかった。 子どもたちの楽しそうな反応はサポート役の僕に自信を与えてくれたし、 教えることへの喜びを実感させてくれた。

ジュニアクラブのコーチになって、
子どもたちに見せてあげたい景色がある。

僕には今、夢がある。それは、大学卒業後にジュニアクラブのコーチになることだ。 これまで得てきた経験やアメフトの知識を子どもたちに、 伝えられる限り伝えていきたいと思っている。 そして、目指すは常勝チーム。今でもふと思い出す試合がある。 それは僕が高校生の頃、何年か振りにジュニアクラブが勝利した試合。 自分のことのように嬉しかったのを覚えているし、子どもたちの笑顔も忘れられない。 練習は、そんな歓喜の瞬間を味わうためにあると思う。僕もそうだったけれど、 勝てた喜びは子どもたちを真剣にする。次も勝つための努力を生む。 だからこそ、ジュニアクラブのレベルの底上げは僕の指導者としての大きな目標だ。 そのためには、僕自身も成長しないといけない。 これまで以上に子どもたちと積極的に会話し、プレーへの理解を深める指導をしていく。 そうすればアメフトは何倍にも面白く感じるはずだし、 一人ひとりの意識の変化で勝てるチームに変わるはずだから。 そして、小学生の頃の僕のように、子どもたちもジュニアクラブの活動を通して「何か大きな目標」を見つけてくれたら嬉しい。アメフトに関わることでも、それ以外でもいい。 目標を必死に追いかける時間が人を成長させる。僕は誰よりもそのことを知っているから。

成長の証言1 ジュニアクラブ
ヘッドコーチ 
子どもたちと同じ目線で考えられる。
だから、彼の言葉は子どもたちを動かす。

津崎くんと初めて会ったのは、彼が小学校5年生の時でした。 その彼が、今ではアメリカンフットボール ジュニアクラブのサポートをしてくれている。 感慨深いものがありますね。 ジュニアクラブには未経験の子はもちろん、同じように説明しても、 うまくプレーで体現できる子、できない子とさまざまです。 それに、子どもは教えたことをそのまま吸収してしまうから 間違ったことを教えてしまうことがないように注意も必要です。 本当に子どもたちに教えるのは難しいです。 けれど、ジュニアクラブに所属して教えられる側の経験もある彼だからこそ、 一人ひとりの子どもたちと同じ目線で考えながら教えられていると感じます。 言葉で説明してもわからない子どもには、彼自身が手本をみせ、動きを教える。 そんな様子を見ると、「私が口を出す必要はないな」と信頼を置いています。 そして大学卒業後は、ジュニアクラブでコーチをしたいと話してくれました。 彼のようなジュニアクラブの出身者が、次の世代を支え、ジュニアクラブを盛り上げてくれることが私の当初からの願いだったので、感謝しかありません。 しかし彼はまだ、人としても、アメフト選手としても成長過程。 これからどのように成長し、どんなコーチになるのか楽しみで仕方ありません。 それぞれの個性を理解し、細やかなサポートをしてくれている彼ならきっと、 子どもたちを正しく導く指導者へと、成長できるはずだと期待しています。

成長の証言2 アメリカンフットボール部
友人
分かるように伝える。
彼はいつもそれを意識していると思う。

部活での津崎くんは、本当によく喋るし、僕たちを盛り上げてくれる存在。 そして、アメフトに対しては誰よりもストイックだと思います。 練習前には一人でウエイトトレーニングを黙々と続けていたり、 練習後に同じパートの仲間を誘って汗を流したりする姿をよく見かけます。 どこまでもアメフトに貪欲に向き合う彼は、すごいと感心してしまいます。 そんな彼は、ジュニアクラブの活動にも毎週欠かさず熱心に参加していました。 自分が感じているアメフトの面白さを子どもたちにも伝えたいんだろうと思います。 ジュニアクラブで子どもたちに教える経験が、部活内でも生かせていました。 試合形式で練習をした時、アメフト未経験で入部した後輩がどう動けばいいのか分からず、グラウンドで棒立ちになっていた。それを見た彼のアドバイスはとても興味深かった。 僕だったら、言葉で説明して、あとは実践の中で考えさせることが多い。 でも、彼は実際に体を動かしてみせたり、図面に起こして示したり、 言葉だけじゃ伝えにくい部分を工夫しながら教えていた。 そこまでする仲間を見たことがなかったから、ちょっと新鮮だった。 何もできずにいた後輩もグランドで少しずつ動けるようになっていた。 たぶん、未経験の子どもたちが多いジュニアクラブで教えるうちに、 自然と「伝える力」が成長しているんだろうなと思った。

津崎 晃空さんの
My Experiences

※アメリカンフットボール ジュニアクラブ

震災があった神戸の子どもたちのために何かできないか。そんな地域連携・地域貢献を目指して、2012年4月に日本初となる神戸学院大学所属の「アメリカンフットボール ジュニアクラブ」を設立いたしました。アメリカンフットボール競技を通じて、地域の子どもたちが健康で明るく、人間的に豊かに成長、発展していくことを目的としています。

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