神戸学院大学

法学部主催の講演会を開催しました

2019/01/16

 講演会「米中間選挙を振り返って-今後の日米関係の展望」(法学部主催)が12月20日、ポートアイランドキャンパスで開催され、神戸大学の簑原俊洋教授(専門は日米外交史)が講演しました。同教授は、現代を「秩序挑戦期」の時代であると位置づけたうえで、11月6日に行われた米中間選挙を振り返り、「異次元の大統領」であるドナルド・トランプ氏が2020年の次期大統領選挙に向けて逆襲するとし、世界第三の大国としての日本に求められる対応を提案。米国の次の覇権は自由主義を共有する国家の連合であろうと講じました。
 簑原教授はまず、10月4日のペンス副大統領の演説において「Great Power Competition(大国間競争)」という、オバマ政権においては軍事的用語として使用を禁じられていた用語が用いられたことから、現在の国際政治においては、G2の時代であり、米中間の新冷戦がはじまったと説明。そして、歴史を振り返ると、永続する覇権は存在しないこと、また必ず「挑戦者」が出現することを述べました。米国は、他の追随を許さないことを国家的使命ととらえてきましたが、現在の米国は同盟国を軽視し、自らの地位を脅かしています。しかしながら、覇権移行はゆるやかに行われると述べました。
 さらに、トランプ大統領を動かすものは、4割程度の熱狂的支持者であり、彼らは世界が見えない、かつ見ようとしない人々であるため、今後も国民の不満をそらすためのトランプ氏の「パン」(雇用)と「サーカス」(ツイート)の欺瞞は継続されると話しました。米大統領の信任投票の性質が強い米中間選挙がもたらしたものは、ねじれた議会です。中間選挙の最大のポイントは、第一に、伝統的に自由貿易および移民に寛容であった共和党が「トランプ党」として生まれ変わったこと、第二に、民主党の大躍進です。今後の焦点は2020年の大統領選挙に移行しますが、その前に国勢調査が行われ、その結果に基づいて知事が選挙区の見直し作業を行うので、知事選で圧勝した民主党が今後有利になると述べました。民主党の次期大統領候補には、米国の深い分断を治癒させることが求められ、中道派の穏健な候補者が求められると話しました。
 トランプ大統領は、2020年の大統領選挙に向けて、大統領が大きな権限を有する外交・安全保障政策において巻き返しを図るでしょう。特に対中強硬姿勢は超党的であるので、中国の覇権挑戦の野望の粉砕を行い、また、軍拡、ロシアとの綱引き、イランに対する圧力強化、朝鮮半島有事に関して行動し、また同盟国に対しては安全保障をレバレッジにして、通商領域での果実を確保しようとするであろうと述べました。再選のための切り札として、対外的危機の誘発もあり得ます。
 こうした中で、国益を中心に価値観なき日本外交を行う日本、また人権の重要性に対する意識が希薄であり、代償なき平和を享受してきた日本には、世界第三の大国としての対応が求められると述べました。特に安全保障政策において、これまでのような堅固な日米関係の維持が期待できない可能性がある今後は、現実主義にもとづく安全保障観(たとえば、核武装より核シェルター、台湾が中国の一部になり沖縄が最前線になることを避けるための台湾との安全保障上の協力関係など)、および外交地平線の拡大ならびに地域の安全保障大国としての新たな役割が求められると講じました。最後に、「米国の次の覇権は、自由主義を共有する国家の連合であろうし、その中に日本は入らないといけない」と語りました。

法学部准教授 荒島千鶴