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授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/11 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
文学と社会/Literature and Society
授業コード
/Class Code
B507333001
ナンバリングコード
/Numbering Code
HASd224
開講キャンパス
/Campus
有瀬
開講所属
/Course
人文学部/Humanities and Sciences
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
後期/AUTUMN
曜日・時限
/Day, Period
木1(後期)/THU1(AUT.)
単位数
/Credits
2.0
主担当教員
/Main Instructor
中山 文/NAKAYAMA FUMI
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
中山 文/NAKAYAMA FUMI 人文学科/Humanities
授業の方法
/Class Format
講義(対面授業)
授業の目的
/Class Purpose
主題:「現代中国の女性文学を読む」

この科目は、人文学部DP1,9都に対応する。具体的には、現代中国文学についての専門知識を集中的、体系的に理解し、現代中国への理解と興味をはぐくむことを目的としている。

19世紀末、欧米諸国の侵略により近代化への道を歩まざるを得なくなった清朝は1911年に辛亥革命で倒壊し、翌年中華民国が誕生する。だがその後も袁世凱による帝政復古や軍閥割拠など政治的混乱が続く。一方陳独秀らの日本・アメリカ留学組は文学革命を提唱、口語の文学により民衆に国民国家共同体を想像させようとした。魯迅はこのような時代の大転換期の中で、伝統と現代の矛盾を考え、新しい社会における人間のあり方を考えた。魯迅の処女作「狂人日記」が中国における現代文学のはじまりとされる。
この授業では、1910年代から10年ごとの代表作を読みつつ、その背景にある中国の近現代史を学ぶ。アヘン戦争以来の100年間、常に身近に戦争や内戦を経験しながら近代化してきた中国において、その文学は政治や社会状況から超然としてはおられなかった。たとえば同じ1940年代、上海では蘇青や張愛玲のようなフェミニズム文学が生まれ、延安では毛沢東の文芸講話の指導する人民文学が生まれていた。地域の隔たりは人々の生活環境を大きく変え、人々の行動も大きく異なった。中国の広さは、おのずと文学の多様性を内包する。文学作品を通して、現在もっているイメージとは異なる姿の中国に、出会うことができる。

到 達 目 標
/Class Objectives
①中国近代史を知り、中国の歴史と民俗に対する深い知識をもつことができる。
②19世紀から20世紀にかけて、中国と日本の交流史を理解することができる。
③多様な中国作家の作品を通して、当時の知識人、農民、女性の置かれた状況を理解することができる。
④世界文学としても著名な作品に触れることで、文学的教養を広げることができる。
授業のキーワード
/Keywords
近代中国史、日中関係、女性、孤島、淪陥区、解放区
授業の進め方
/Method of Instruction
作品を読解し、その理解に資する映像を鑑賞する。毎回の授業について、小テストを行う。
履修するにあたって
/Instruction to Students
その日に読む作品を、かならず前もって読んでから授業に臨むこと。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
中国に興味を持ってほしいので、テレビやネットで中国情報をまめに集めておくこと。
指定された作品を読んだ上で授業に臨む。そのため予習復習に1週あたり2時間以上必要。
提出課題など
/Quiz,Report,etc
(1)毎回、課題に沿って講義内容に関する小レポートを書く。優秀作は翌週に配布する。
(2)理解度確認のためのワークを1回おこなう。模範解答を掲示する。
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
毎回のコメントシート 60%、確認ワーク 40%
翌週優秀コメントを提示、確認ワークは模擬答案を提示する。
評価基準は、以下の3点とする。
A 質問に的確に答えている
B  表現が適切である
C 主張 にオリジナリティがある
テキスト
/Required Texts
ワンドライブまたはドットキャンパスを通じて配布
参考図書
/Reference Books
徐嘉澤作『次の夜明けに』書̪肆侃侃房 
張愛玲作『中国が愛を知ったころ』岩波出版
『中国ジェンダー史研究入門』京都大学学術出版会 2018年
濱田麻矢『少女中国』岩波書店 2022年
『中国の娯楽とジェンダー』勉誠出版社 2022年
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 1 中国近代の夜明け 清朝末期から民国の社会状況 後期授業の進め方について説明を行う。

日中交流歴史を抑えたうえで、中国の近代について考える。
2 2 1910年代① 男性作家 魯迅 「祝福」を読む。1949年に中華人民共和国が成立する以前、農村の女性がどのような生活を送っていたか。それが党人知識人の目にはどのように映っていたか。
3 3 1910年代② 女性作家 謝氷心  謝氷心「二つの家庭」を読む
魯迅が旧社会で苦しむ女性を書いたとき、五四文化運動から生まれた女性作家たちはどのような理想をもち、どのような生活をしていたのだろうか。 
4 4 1920年代① 女性作家・沈櫻  沈櫻「祝宴の後」を読む

せっかく恋愛結婚したのに、夫は仕事ばかりで倦怠期の夫婦。
パーティで元カレと遭遇した妻は、久しぶりにワクワク。さて、どうなる?
1920年代の上海には、こんなモダンガールがいたのです。 
5 5 1920年代② 女性左翼作家・馮鏗 馮鏗「子を売る女」を読む
自由恋愛の果ての倦怠期に悶々とするセレブがいた一方で、夫に先立たれた貧しい女は仕事を得るために子供を売るしかなかった。子供はどこで売るの?いったいいくらで、だれが買うの? 作者は国民党により処刑された左翼作家の一人。
6 6 1930年代① 東北作家・蕭紅を読む 蕭紅「手」を読む。
これからの社会、女が一人前に生きていくためには教育が必要だ!そう言って
貧しい父は私を女学校に入れてくれた。でも、田舎者に都会のお嬢様学校は
ひどく冷たい。新時代を象徴する女学校にも、階級社会は生きていた。 
7 7 1930年代② 解放区作家・丁玲を読む 丁玲「夜」を読む。
40年代、中国の文学状況は共産党根拠地となった延安に生まれた解放区、
日本に占領された淪陥区、国民党が支配する地域の国統区とはっきり
分断された。ここでは、20年代に女性の性欲をテーマにした「ソフィ女史の日記」の
作者丁玲が、延安生活を経て、どのように変化したかに焦点を当てる。
8 8 1930年代③ 延安について 映画「黄色い大地」で延安を学ぶ。
解放区延安とはどのような自然環境の土地なのか。さらに辺境に住む人々にとって、延安からやってくる解放軍兵士はどんな人物に映ったのか。彼は何のために
民謡を集めているのか?映像に沿って当時の社会背景を説明する。
9 9 1940年代① 女性作家 梅娘 梅娘「異郷の人」を読む
1940年代は日本が太平洋戦争に突進していった時代である。この時代、
植民地韓国から働きに来た韓国人と留学生活を送る中国人女性が阪急電車の神戸線で出会う物語。
10 10 1940年代② 淪陥区作家・張愛玲 張愛玲「心経」を読む。

丁玲が共産党の会議に悩む農民を描いた頃、日本侵略下の上海では
政治的な作品が禁止され、その結果家庭や恋愛をテーマにした作品が流行する。中でも二大女性作家が張愛玲と蘇青である。張愛玲は「中国が愛を知ったころ」で、裕福な生活と引き換えに自由を売り男性に囲われる女学生の葛藤を描いた。
授業では父親に性的な執着をもつ女子高生を描いた「心経」を読む。
11 11 1940年代③ 淪陥区作家・蘇青 蘇青「結婚10年」を読む
張愛玲と人気を二分した蘇青は、働く女性を描いた。あからさまな男女不平等な
社会で、家庭と仕事を両立させるために奮闘する彼女の姿は、今も決して古びていない。
12 12 1950年代 解放後の一般大衆1 1 映画「活きる」を観る①

945年の日中戦争後、中国共産党と国民党の間で3年間にわたる内戦が続いた。
1949年に共産党政権の中華人民共和国が設立。
1950年代には朝鮮戦争に参加、大躍進運動によって多数の餓死者がでた。
1960年代、中国指導部の闘争が激化し、10年間にわたり文化大革命が続く。
1972年に日中国交回復が実現し、1976年に毛沢東が逝去すると、
鄧小平は経済改革開放路線を展開した。
このめまぐるしく変化する政治運動の中出、一般大衆はどのように生きてきたのか。
映画を見ながら、建国以後の中国社会の背景を学ぶ。

第1回目は、民国期に大金持ちだった主人公が賭博で無一文になり、趣味の影絵
を生活のたつきとして、人生を立て直す。国民党に徴用され、共産党の捕虜となり
無事に故郷に帰国するまでを描く。
13 13 1960年代 解放後の一般大衆2 映画「活きる」を観る2

50年代、主人公富貴は大躍進政策の求める大衆行動のために日々くたくたに
なりながらも、家族4人楽しい生活を送っていた。が、政治運動の余波で
息子、娘に次々不幸がおそいかかる。

14 14 1980年代 解放後の一般大衆3 映画「活きる」を観る3

孫と老夫婦3人の生活に婿が加わり、貧しいながらも平和な食卓がラストシーン
となる。この作品を見て、人間の幸福について討論する。
15 15 まとめ ふりかえり 確認ワーク。

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