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授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/11 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
歴史文化概論Ⅰ/すまいの文化/Basic Studies in History and Culture I
授業コード
/Class Code
B507184001
ナンバリングコード
/Numbering Code
HASe245
開講キャンパス
/Campus
有瀬
開講所属
/Course
人文学部/Humanities and Sciences
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
前期/SPRING
曜日・時限
/Day, Period
金5(前期)/FRI5(SPR.)
単位数
/Credits
2.0
主担当教員
/Main Instructor
北村 厚/KITAMURA ATSUSHI
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
北村 厚/KITAMURA ATSUSHI 人文学科/Humanities
授業の方法
/Class Format
講義(対面)
授業の目的
/Class Purpose
テーマ:ナチ・ドイツをめぐる歴史学
 第二次世界大戦とホロコーストをひき起こし、未曽有の大量殺戮という結果を招いたアドルフ・ヒトラー率いるナチ・ドイツ(1933~1945年)は、世界史上最も有名な「悪」とされます。しかしヒトラーには大衆的な人気があり、ナチ党は選挙により第一党となったのちに権力を握りました。世界大戦後に瓦礫の山となった西ドイツでのアンケートでは、ナチ時代を「戦争さえなければ良い政権だった」とする世論が多数を占めていました。なぜ、ドイツ国民はヒトラーを支持していたのでしょうか。
 このように民主主義の結果としてナチ政権が成立していたという事実は、民主主義国家に生きる現代の私たちにとっても、ヒトラーのような破壊的な独裁者が今後も現れるかもしれないという意味で、重要な問題を提起します。しかしそれ以上に現代ドイツ人にとっては、いつまでも過ぎ去ろうとしない過去として、「自分たちが支持した」ヒトラーの呪縛から逃れられないという問題なのです。ドイツ人はどのようにナチ・ドイツの過去と向かい合ったのでしょうか。
 この授業の目的は、学部DP1、9と対応します。
到 達 目 標
/Class Objectives
1.ナチズムに関する先入観を排し、歴史学の最新の成果にアップデートすることができる。
2.ドイツ社会における歴史問題の現状について考察することができる。
授業のキーワード
/Keywords
ナチ・ドイツ ホロコースト 過去の克服 歴史認識
授業の進め方
/Method of Instruction
スライドとプリントをもちいた講義型の授業です。毎回、対面での課題提出とともに授業内容に関する小テストをMoodleで実施します。質問があれば、次回の冒頭で受講生全体で共有するフィードバックを行い、思考・論述能力の向上を図ります。
履修するにあたって
/Instruction to Students
教室内では席を離し、マスクを着用し、会話は必要な時以外は行わないようにしてください。 
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
毎回の復習に取り組む時間として1時間が必要です。
提出課題など
/Quiz,Report,etc
毎回授業の最後に対面で課題を提出し、また復習としてMoodleでの小テストにも取り組んでもらいます。また、第15回目には最終課題を課します。
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
提出課題14回×6点=84点、最終課題20点で、合計104点で成績を付けます。授業内容に関する感想は2点、小テストは4択テスト8問ずつで、各0.5点=4点の配分。最終課題は日本語文章力、課題対応力×2、授業内容の理解度、論理構成力各4点によりルーブリック評価する。
テキスト
/Required Texts
なし
参考図書
/Reference Books
芝健介『ホロコースト:ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌』中公新書、2008年
石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』講談社現代新書、2015年
イアン・カーショー(石田勇治監訳)『ヒトラー』上・下、白水社、2016年
小野寺拓也・田野大輔『ナチスは「良いこと」もしたのか?』岩波書店、2023年
他、随時授業で紹介
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 ナチ・ドイツをめぐる諸問題 1933年に成立し45年に崩壊したナチ・ドイツ。第二次世界大戦を引き起こし、ホロコーストを実行したことで、80年を経た現在においても注目され続ける歴史的対象です。ナチとヒトラーには現在どのようなイメージが持たれており、これまでどのような論点があったのかを探ります。
2 第2回 ヒトラーの反ユダヤ主義 なぜナチはユダヤ人を殺戮したのか? その根本的な要因はヒトラーの反ユダヤ主義にあります。しかしそれはヒトラーのオリジナルだったのでしょうか。そしてどの程度一般的な考え方だったのでしょうか。
3 第3回 ナチ党の躍進 1930年9月の選挙で国会第2党に躍進し、32年には第1党になったたナチ党は、なぜ、どういった国民から支持されたのでしょうか? ヒトラーとナチ党の選挙戦略について最近の研究を紹介します。
4 第4回 ヒトラー政権の成立 ヒトラーは選挙によって民主的に首相になったのか? それは半分イエスであり、半分ノーです。彼を首相にするかどうかの決定権は大統領ヒンデンブルクにありました。なぜ大統領はヒトラーを首相に任命したのか、そのプロセスを徹底解剖します。
5 第5回 民主主義から独裁体制への移行 ヒトラー政権はナチ党の単独政権ではなく、保守派との連合政権であり、最後の国政選挙でもナチ党が単独過半数になることはありませんでした。それにもかかわらず、なぜ、どのようにヒトラーは独裁体制を築くことができたのでしょうか。
6 第6回 ナチ体制下におけるユダヤ人迫害 ホロコーストは戦争中に起きましたが、それ以前にヒトラー政権下で徹底的なユダヤ人迫害政策が実行に移されました。ナチ体制下でユダヤ人の人権がはく奪されるプロセスを追います。
7 第7回 ナチの経済政策 よく聞かれるのが、「ヒトラーは世界恐慌からドイツを救った」「失業問題を解決した」というナチ擁護論です。しかし、この言説は正しいのでしょうか? 近年の研究ではこれらの実績は虚構に満ちており、様々なトリックがあったことが明らかとなっています。ナチ経済政策の虚像と実像を対比します。
8 第8回 民族共同体とドイツ国民 街頭ではユダヤ人に対する暴力が横行し、独裁体制のもと政権批判は封じられました。それにもかかわらず、多くのドイツ国民はヒトラーを熱狂的に支持し、ユダヤ人迫害を見て見ぬふりしました。それはなぜでしょうか。最近の研究上のキーワード「民族共同体」をもちいて考えます。
9 第9回 第二次世界大戦の勃発 第二次世界大戦の開戦責任は、明白にヒトラーの野望にありました。彼は何のために戦争を引き起こしたのか? そしてヨーロッパ諸国はなぜ戦争を止めることができなかったのか?「ミュンヘンの教訓」の是非を問います。
10 第10回 独ソ戦とホロコースト1 ナチ最大の犯罪としてユダヤ人の大量殺戮(ホロコースト)がよく知られています。しかし漠然としたイメージとして「ヒトラー政権下のドイツでユダヤ人がアウシュヴィッツ強制収容所のガス室で大量殺戮された」というものがあると思います。このイメージには多くの事実関係の間違いがあります。ホロコーストの正確な事実を学びます。
11 第11回 独ソ戦とホロコースト2 引き続き、ホロコーストの事実関係について学び、なぜこのような前代未聞の国家的メガ犯罪が実行に移されたのかを考えます。
12 第12回 過去の克服への長い道 私たちは、戦後ドイツは「過去の克服」、すなわちナチの過去に対して真摯に向き合い、反省・謝罪・賠償を誠実に行ったと思いがちですが、実は当初からそうだったわけではありません。西ドイツでは、日本と同様に長らく忘却や「逆コース」が続いていました。しかし1970年代に転機を迎えます。その理由は何だったのか、戦後ドイツ社会とナチとの関係を考えます。
13 第13回 歴史家論争 1980年代以降、ナチをめぐって歴史学者だけでなく多くの市民が関心を寄せた大論争が繰り広げられます。ここでは新聞紙上で展開された「歴史家論争」など、いくつかの論争を取り上げ、ここ40年のドイツ社会と歴史との関係について考えます。
14 第14回 ホロコースト否定論 「ホロコーストはなかった」「アウシュヴィッツは捏造だ」といった主張は、戦後のかなり早い時期から登場しました。こうした否定論者はなぜ、何を根拠にホロコーストを否定したのか。映画にもなったアーヴィング裁判を取り上げ、否定論の問題性を考えます。
15 第15回 最終レポート 授業内容に関する最終レポートを対面で作成し、提出してもらいます。

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