基本情報/Basic Information

開講科目名 ／Class	文学と人間／Literature and People
授業コード ／Class Code	B506753001
ナンバリングコード ／Numbering Code	HASd325
開講キャンパス ／Campus	有瀬
開講所属 ／Course	人文学部／Humanities and Sciences
年度 ／Year	2024年度／Academic Year
開講区分 ／Semester	前期／SPRING
曜日・時限 ／Day, Period	木1(前期)／THU1(SPR.)
単位数 ／Credits	2.0
主担当教員 ／Main Instructor	中山　文／NAKAYAMA FUMI
遠隔授業 ／Remote lecture	No

担当教員情報/Instructor Information

教員名 ／Instructor	教員所属名 ／Affiliation
中山　文／NAKAYAMA FUMI	人文学科／Humanities

授業の方法 ／Class Format	対面授業で講義を行う。 特別警報又は暴風警報発令の場合、本科目は通常授業時同様に休講とします。 時間や地域など取扱いの詳細は大学HPを確認してください。
授業の目的 ／Class Purpose	主題：「魯迅を読む」 この科目は、人文学科のＤＰ２，９と対応している。具体的には、現代中国文学についての専門知識を集中的、体系的に理解し、現代中国への理解と興味をはぐくむことを目的としている。 魯迅は中国現代文学の父とよばれる作家である。19世紀末、欧米諸国の侵略により近代への道を歩まざるを得なくなった清朝は1911年に辛亥革命で倒壊し、翌年中華民国が誕生する。だがその後も袁世凱による帝政復古や軍閥割拠など政治的混乱が続く。一方陳独秀らの日本・アメリカ留学組は文学革命を提唱、口語の文学により民衆に国民国家共同体を想像させようとした。魯迅はこのような時代の大転換期の中で、伝統と現代の矛盾を考え、新しい社会における人間のあり方を考えた。 魯迅の作品解釈はいずれも一筋縄ではいかない。善人と悪人、白黒はっきりつくような人物は出てこない。彼の作品世界を知ることで、現代日本にも有効な、社会に対する多層的な視点を養う。 また、魯迅は日本留学の経験者であり、作品の中にも日本や日本人がしばしば描かれている。 近年、日中の関係が悪化しているが、魯迅の生き方を通して政治と民間人の友情は別物だということを理解する。 日中交流についての知識を習得し、解放以前の中国の状況を理解することができる。
到　達　目　標 ／Class Objectives	①中国近代史を知り、中国の歴史と民俗に対する深い知識をもつことができる。 ②19世紀から20世紀にかけて、中国と日本の交流史を理解することができる。 ③魯迅の作品を通して、当時の知識人、農民、女性の置かれた状況を理解することができる。 ④世界文学として著名な魯迅の作品をよみ、文学的教養を広げることができる。
授業のキーワード ／Keywords	魯迅、近代中国史、日中関係、纏足、故郷
授業の進め方 ／Method of Instruction	授業前に課題作品を読み、自分で人物関係図を書いて手元に置く。 毎回の授業について、コメントカードを授業後に提出する。 優秀コメントは、翌週フィードバックする。 履修人数によって授業方法が変化する可能性があるが、 初回授業で明示する。
履修するにあたって ／Instruction to Students	その日に授業で読む作品を、かならず前もって読んでから授業に臨むこと。
授業時間外に必要な学修内容・時間 ／Required Work and Hours outside of the Class	中国に興味を持ってほしいので、テレビやネットで中国情報をまめに集めておくこと。 毎回指定された作品を読んだ上で授業に臨む。そのために予習復習に1週あたり2時間以上必要。
提出課題など ／Quiz,Report,etc	毎回、授業の最後にコメントカードを提出する（約400字） 　＊内容のほか、正しい日本語、美しい文字であることも評価対象とする。丁寧に 　書くよう心掛けてほしい。優秀なコメントは、翌週授業の冒頭で紹介する。
成績評価方法・基準 ／Grading Method・Criteria	①　毎回のコメントカード（約400字）　60％ ＊内容のほか、正しい日本語、美しい文字であることも評価対象とする。丁寧に 　書くよう心掛けてほしい。優秀なコメントは、翌週授業の冒頭で紹介する。 　紹介されたものには加点される。 評価基準は、以下の３点とする。 A　質問に的確に答えている B 　表現が適切である C　主張 にオリジナリティがある ②　15回目授業で確認ワーク　40％ 　　内容は、１）選択問題　20％、 　　　　　　２）前もって与えられたテーマに従って、その場でレポートを書く。20％ 　　　　　＊正しい日本語、美しい文字であることも評価対象とする。
テキスト ／Required Texts	魯迅「故郷/阿Q正伝」光文社文庫　762円
参考図書 ／Reference Books	『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房　2023年　3200円 『中国の娯楽とジェンダー』勉誠出版　2022年 『中国文学をつまみぐい』ミネルヴァ書房　2022年 周大新『安魂』河出書房新社 閻連科『年月日』白水社 金宇澄『繁花』早川書房

No.	回 ／Time	主題と位置付け ／Subjects and position in the whole class	学習方法と内容 ／Methods and contents	備考 ／Notes
1	1 中国近代の夜明け	清朝末期から民国の社会状況	日中交流歴史を抑えたうえで、中国の近代について考える。
2	2魯迅という人	中国現代文学の父・魯迅	魯迅の生い立ち、経歴など、今後作品を読むための手助けとなる情報を得る。
3	3魯迅作品を読む1『吶喊』から	「狂人日記」の覚醒	魯迅の処女作。中国で初めて白話文で書かれた小説。白話文で書く意味、当時の社会状況を踏まえつつ、「子供を救え！」の意味を考える。
4	4魯迅作品を読む2『吶喊』から	「孔乙己」と科挙	旧中国の男性にとって出世の道は科挙に合格することしかなかった。何年浪人しても予備試験にも合格しなかった孔乙己の憐れさは、当時決して珍しいものではなかった。このような人物が現代の日本にはいないと言い切れるだろうか。
5	5魯迅作品を読む3『吶喊』から	「薬」と革命	革命家の生血を吸った饅頭を食べれば息子の肺病が治ると信じる老夫妻。暗い時代に、一縷の光をみるかのように、革命家の墓が花輪で飾られる。
6	6魯迅作品を読む4『訥喚』から④	「茶館」という時間と空間	老舎作「茶館」を通して、魯迅の生きた時代の社会状況を学ぶ。
7	7魯迅作品を読む5『吶喊』から	「故郷」と紹興①	日本人にとっては、一番よく知られた魯迅の作品。成長して故郷に帰ると、かつてのヒーローが、とんでもなく色褪せて見える。時の残酷さをかみしめつつ若い世代に希望を託す魯迅の心を探る。
8	8魯迅作品を読む6『吶喊』から	「故郷」と紹興②	「故郷」の補足.
9	9魯迅作品を読む7『吶喊』から	「纏足」	纏足をテーマにした映像によって、当時の女性がおかれた状況を学ぶ。
10	10魯迅作品を読む8『吶喊』から	魯迅についての復習	映画「魯迅伝」によって、これまで読んできた魯迅作品を振り返る。
11	11魯迅作品を読む9『吶喊』から	「阿Q正伝」①	阿Qとは、「通常の名を持たず、家族から孤立し、旧来の共同体の人々の劣悪な性格を一身に集めて読者を失笑苦笑させたのち犠牲死して、共同体の倫理的欠陥を浮き彫りにする」（藤井省三言）人物である。日本人にとっては、どのような人間に当たるのだろうか。
12	12魯迅作品を読む10『吶喊』から	「阿Q正伝」②	精神勝利法で自らのプライドを支える阿Qを当時の人々はどのように遇するのか。 阿Qは本当に死んだのだろうか？
13	13魯迅作品を読む11『吶喊』から	「阿Q正伝」③	映画「阿Q正伝」（1981年作）を鑑賞する。滑稽劇の名優厳順開の主演。翌年、中国大陸の映画として初めてカンヌ映画祭に出品し、国内のみならずポルトガルやスイスの映画祭でも受賞した作品。本作は魯迅生誕100周年記念の作品だが、時代の作為が感じられる演出があちこちにある。原作との違いを指摘し、時代の意図を読み取る。
14	14魯迅を読む12『吶喊』から	「魯迅と日本人」	魯迅は若い時に日本に留学し、多くの日本人の友人を得た。井上ひさしの「上海ムーン」には最晩年の魯迅を支える日本人の姿が描かれている。金子光晴、太宰治、大江健三郎、村上春樹など、魯迅を愛した日本人作家の作品をとりあげ、その影響を考える。
15	15まとめ	ふりかえり	確認ワーク。