科目一覧へ戻る | 2025/02/13 現在 |
開講科目名 /Class |
人文の知B/人文の知3 ローカルの価値【①】/Knowledge of Humanities B |
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授業コード /Class Code |
B505584001 |
ナンバリングコード /Numbering Code |
HASb103 |
開講キャンパス /Campus |
有瀬 |
開講所属 /Course |
人文学部/Humanities and Sciences |
年度 /Year |
2025年度/Academic Year |
開講区分 /Semester |
前期/SPRING |
曜日・時限 /Day, Period |
水1(前期)/WED1(SPR.) |
単位数 /Credits |
2.0 |
主担当教員 /Main Instructor |
矢嶋 巌/YAJIMA IWAO |
遠隔授業 /Remote lecture |
No |
教員名 /Instructor |
教員所属名 /Affiliation |
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中村 健史/NAKAMURA TAKESHI | 人文学科/Humanities |
松村 淳/MATSUMURA JUN | 人文学科/Humanities |
矢嶋 巌/YAJIMA IWAO | 人文学科/Humanities |
授業の方法 /Class Format |
対面授業(講義) |
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授業の目的 /Class Purpose |
グローバル化が進む現代、さまざまな分野において効率化が進み、画一的なシステムが形成されてきています。日本のどこにおいても、似たような風景が広がり、同じような社会の仕組がつくられ、色濃かった各地それぞれの文化も失われてきています。かつて、多様な自然環境のうえに、地域固有の歴史を経て、多様な社会、文化をなしていたローカル(地域・地方)は、その個性を次第に失いつつあるといえます。そうした中で、ローカルの価値が見直される時代ともなり、ローカルの宝を発掘し、その価値を見直し、それらを活かしていこうとしたり、ローカルスケールで生きていくことを志向する人たちが増えつつあります。 本授業では、人文学部ディプロマポリシー1に基づいて、複数の分野の基礎知識を教養として身につけるため、歴史・地理的環境と人間、社会的・文化的活動に関するさまざまな知識の相互関連について理解し、知識を活用しての問題を解決する考察力を修得するために、ローカルを活かす取り組みやまちづくりがどのように図られ、どういった情報が発信され、どのような生き方がローカルにおいて模索されるようになっているのかについて、地域社会に関する実践的な事例から具体的に学び、それぞれの事例におけるローカルの価値と意義を学ぶとともに、次代へとつながるローカルな知を創造し開発していく視野を得ます。また、修得した人文学の知見にもとづき、知的好奇心をもって、自立的に深く学修できるようになることを求めます。そして、獲得した知識と体験と技能を活用して、自らが設定した課題や問題点を論理的な分析と考察をとおして解決・解明へと導く力を修得することを目的とします。 |
到 達 目 標 /Class Objectives |
・ローカルが有する意味について理解できる。 ・ローカルな社会が現在の姿へと変化してきたメカニズムについて考察できる。 ・ローカルを活かす取り組みやまちづくりの意義について考察できる。 ・大学における地域に関係する専門分野での研究や、地域に関係する業務を遂行するための基礎力を得る。 |
授業のキーワード /Keywords |
歴史 地域 まちづくり ローカルな知 空間の社会学 |
授業の進め方 /Method of Instruction |
オムニバス形式で行ないます。毎回、授業内容を踏まえた小レポートを課します。第15回で、最終レポートを課しますので、決められた期日に提出してください。 |
履修するにあたって /Instruction to Students |
授業への積極的な参加を求めます。 |
授業時間外に必要な学修内容・時間 /Required Work and Hours outside of the Class |
新聞やテレビ、インターネットでの報道などで目にしたローカルでの出来事に関心を持ち、それがどのような意味を持つのかを考えることを心がけましょう。シラバスを参考にして、講義前に関係する事項について毎週1時間程度の予習を、また、講義後には授業内容について毎週1時間程度の復習をすることを心がけて下さい。 |
提出課題など /Quiz,Report,etc |
毎回授業内容についての小課題の提出を求めます。また、最終レポートの提出を求めます。なお、小課題については、受講者の理解を深めるために、いくつかを選んで、次回の授業で匿名にて論評するなどのフィードバックを行ないます。 |
成績評価方法・基準 /Grading Method・Criteria |
毎回提出を求める小課題45パーセント、最終レポート55パーセントを基準とします。最終レポートはA4二枚です。最終レポートについては、第15回の授業で改めて説明します。成績評価の基準は「到達目標をどの程度達成できているか」です。 |
テキスト /Required Texts |
使用しません。 |
参考図書 /Reference Books |
『地域再生入門―寄りあいワークショップの力』山浦晴男、筑摩書房(ちくま新書)、2015 『都市・地域観光の新たな展開』安福恵美子・天野景太、古今書院、2020 『若者と地域観光―大都市のオルタナディブな観光的魅力を探る―』杉本興運・磯野巧、ナカニシヤ出版、2020 『集まる場所が必要だ―孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学』エリック・クリネンバーグ (藤原朝子訳)、英治出版、2021 『明石八景―風景の詩学―』白方佳果・中村健史・三原尚子、和泉書院、いずみブックレット、2023 |
No. | 回 /Time |
主題と位置付け /Subjects and position in the whole class |
学習方法と内容 /Methods and contents |
備考 /Notes |
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1 | 第1回 | 歌枕と須磨・明石―幻想のなかの地名―【担当:中村】 | 須磨、明石を詠んだ和歌を例に取りあげつつ、歌枕の本質や性格、歴史的変遷について概説する。 | |
2 | 第2回 | 柿本人麻呂と明石―まぼろしの歌聖像―【担当:中村】 | 『万葉集』(759年以降)、『古今和歌集』(905年)に収められた柿本人麻呂の和歌はともに明石を題材としているが、それらが後世どのように受容されたかを考える。 | |
3 | 第3回 | 大和島はいずくぞ―歌枕とイメージの地理学―【担当:中村】 | 柿本人麻呂が『万葉集』のなかに詠んだ「大和島」という地名は、もともと奈良を指すものであったが、後世淡路にある小島のことであると考えられるようになった。そこには歌枕に関する意識の変遷が影響している。 | |
4 | 第4回 | イメージされる地名―藤原定家と松帆の浦―【担当:中村】 | 『百人一首』(1235年頃)に収められた藤原定家の和歌が、現実の松帆の浦ではなく、『万葉集』を材料とした古代的なイメージで描かれていることを論じる。 | |
5 | 第5回 | 支配される歌枕―後鳥羽上皇と空間の社会学―【担当:中村】 | 幕府追討を意図した後鳥羽上皇は自らが政治的・文化的な日本の統治者であることを示そうとして『最勝四天王院障子和歌』(1207年)を作成させた。和歌によって荘厳された空間の呪術的意味を考える。 | |
6 | 第6回 | 地域における私的空間と公的空間【担当:松村】 |
戦後日本の住宅は一家族=一住宅という単位で設計されており、いわゆる「家族を容れるハコ」となっている。個人のプライバシーが重視されるあまり、自治会組織率や地域活動の低調さが目立つようになってきている。一方で公園等の公的な空間がルールや規則の厳格化によって使いづらくなっている。本講義では、そうした地域空間における「公と私」を様々な事例を取り上げながら検討する。 | |
7 | 第7回 | 安全・安心とまちづくり【担当:松村】 | 現代社会はリスク社会と言われる。防災や防犯をテーマにしたまちづくりが盛んに行われており、市民生活の体感不安の解消に一定の成果を上げているが、一方で、住みづらさ、窮屈さといった副作用をもたらしている。本講義では、安全・安心を前景化させたまちづくりの可能性と課題について事例を検討しながら学んでいく。 | |
8 | 第8回 | 空き家800万戸時代のストック型のまちづくり 【担当:松村】 |
住宅が「建てるもの」から「買うもの」となり、住宅は立地の関数である地価によって価格が設定され取り引きされる。一方で、空き家の数が800万戸を超え、ストックをどう活かすかが我々の社会が取り組むべき課題として浮上してきている。そうした中、様々な地域で空き家を活かした地域活性化などの多様な取り組みを看取することができる。本講義では、そうした取り組みの可能性と課題について事例を検討しながら学んでいく。 | |
9 | 第9回 | 空間と場所〜小樽運河を事例に【担当:松村】 | 観光名所として名高い小樽運河を題材に、取り壊される寸前だった運河という古い産業遺産がどのようにして保存され、現在のような観光名所になったのか?「空間」と「場所」というポストモダン地理学の概念を用いながら社会的・理論的な背景について学ぶ。 | |
10 | 第10回 | 地域の遺産としての近代建築【担当:松村】 | 高度経済成長期に数多く建設された四角い、白い箱型のビルがある。そうした様式の建築をモダニズム建築と呼ぶが、その多くが現在取り壊しの危機にある。しかし、一方でクラシカルな建築様式を持つ建物は保存の対象となりやすい。本講義ではそのような建築様式による建物保存運動の高まりの相違について、複数の事例を参照しながら学んでいく。 | |
11 | 第11回 | 水とともに生きる:福井県大野【担当:矢嶋】 | 城下町の各所で湧く「清水=しょうず」天然記念物の魚イトヨが象徴となっている福井県大野を事例に、水とともに生きる人々の暮らしと、かつて住民自らが招いた水の危機から、受け継がれていく地域の水が持つ価値とまちのあり方について考える。 | |
12 | 第12回 | 景観保全がもたらしたこと:岐阜県白川郷【担当:矢嶋】 | 一山村から世界文化遺産に登録された集落を有する一大観光地へと変貌した岐阜県白川郷を事例に、景観保存が叫ばれるようになる高度経済成長期までの産業や暮らしの変化について踏まえた上で、景観保全運動の経緯、世界遺産登録の背景、登録による影響について考える。 | |
13 | 第13回 | 企業の社会的責任と地域:和歌山県龍神・中辺路【担当:矢嶋】 | 和歌山県龍神・中辺路では、林業が縮小し、林業地域の過疎化が深刻化する中で、環境CSR活動として企業による森づくりの取り組みが広がりつつある。取り組む企業と地域の事情を通して、その意義と課題について考える。 | |
14 | 第14回 | ものづくりの系譜:大阪府堺【担当:矢嶋】 | ものづくりが地域の力の源となって発展した大阪府堺の自転車産業を事例に、現在も地場産業に残るものづくりの系譜と、地域の観光や生活、政策に散見されるものづくりの脈絡をたどり、それらの意味について考える。 | |
15 | 第15回 | ため池に価値を:兵庫県加古川【担当:矢嶋】 | 兵庫県東播磨地域では、ため池が多い地域全体を博物館に見立てた、いなみ野ため池ミュージアムの取り組みが行われている。比較的降水量が少ない地域で大量の水を必要とする稲作を行うため、古来より築造されてきたため池が有する現代的問題と、それを活かそうとする地域づくりの課題について、兵庫県加古川での取り組みを例に考える。 |