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授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/11 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
人文の知F/人文の知9 自然環境と人間 【②】/Knowledge of Humanities F
授業コード
/Class Code
B505574002
ナンバリングコード
/Numbering Code
HASb110
開講キャンパス
/Campus
有瀬
開講所属
/Course
人文学部/Humanities and Sciences
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
後期/AUTUMN
曜日・時限
/Day, Period
金4(後期)/FRI4(AUT.)
単位数
/Credits
2.0
主担当教員
/Main Instructor
北村 厚/KITAMURA ATSUSHI
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
北村 厚/KITAMURA ATSUSHI 人文学科/Humanities
鈴木 遥/SUZUKI HARUKA 人文学科/Humanities
福島 あずさ/FUKUSHIMA AZUSA 人文学科/Humanities
授業の方法
/Class Format
講義(対面)
授業の目的
/Class Purpose
 この科目は、人文学部DP1、2および人文学科DP1、2で示される教養としての基礎知識および人間の文化についての専門知識を身につけることを目指すものです。
 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうようになってから2年が経過し、私たちのくらしは様変わりしました。常にマスクをつけ、お店に入るときは消毒を欠かさず、長距離の移動は控えるようになり、オンラインでの交流が広がりました。ウイルスという目に見えない微小な存在が、これほどまでに人間の生活に影響を与えることになるなどと、数年前の私たちには想像もできなかったはずです。
 人文学は人間について探究する学問です。人間の周辺に存在する自然については、自然科学が探究するもので、人文科学とは学問的に区別されます。しかしコロナ時代に痛感するように、自然と人間は切っても切り離せない関係にあるのです。人類が誕生して以来、自然は人間にとって恵みであり、障壁でもありました。海や森林、作物や家畜は人々のくらしをゆたかにしました。しかし、気候の寒冷化や感染症の蔓延は、しばしば人類の生存を脅かします。近代になって科学が発展すると、人類は自然を征服しコントロールできると考えましたが、そのために温暖化などの深刻な環境破壊がひろがりました。
 人文の知Fでは、こうした自然環境と人間との関係について、歴史学、気象学、地域研究のそれぞれの学問分野からアプローチし、自然環境や感染症と私たちが共生するための教養を身につけていきます。
到 達 目 標
/Class Objectives
・自然環境と人間との多様な関係について理解し、表現することができる。
・感染症や医療の問題について、人文学の見地から考察することができる。
授業のキーワード
/Keywords
自然環境 環境史 感染症 生気象学 気候変動 東南アジア 民俗医療
授業の進め方
/Method of Instruction
この授業では、3名の教員(福島、北村、鈴木)が異なる立場から5回ずつ自然環境と人間とのかかわりについて授業を行います。第1回~第5回は気象学の視点から福島が、第6回~第10回は歴史学の視点から北村が、第11回~第15回は地域研究の視点から鈴木が担当する予定です。
授業の終わりには毎回課題アンケートが課されます。また、先生ごと(第5回・第10回・第15回)にMoodleに提出する課題レポートが課されます。提出期間は長めに取っていますので、都合の良い時間帯に課題に取り組んでください。
履修するにあたって
/Instruction to Students
集中して受講してください。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
できるだけ、いろんな本を読みましょう。
1回の授業に対して1時間程度の予習と復習が目安です。
提出課題など
/Quiz,Report,etc
毎回課題アンケートを書いてもらいます。課題アンケートの提出方法は教員によって異なる場合がありますので、よく説明を聞いてください。次の授業の最初にフィードバックします。5回ごとに課題レポートを課します。課題レポートの寸評をMoodleで公開し、フィードバックします。
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
毎回の課題アンケートと5回ごとにMoodleに提出する課題レポート(それぞれ提出フォームを用意します)により成績を評価します。課題アンケートは1回3点満点で、15回分で45点、課題レポートは1回20点満点で、3回分で60点、合計105点満点です。なお、出席点はありませんので、白紙の課題を提出しても0点です。それぞれ評価基準は、授業の到達目標に達しているかどうかです。
テキスト
/Required Texts
参考図書
/Reference Books
石弘之(2018)『感染症の世界史』角川ソフィア文庫。
デイヴィッド・アーノルド(1999)『環境と人間の歴史』新評論。
池上俊一(2015)『森と山と川でたどるドイツ史』岩波ジュニア新書。
ジェームズ・スコット著、佐藤仁監訳(2013)『ゾミア : 脱国家の世界史』みすず書房。
吉田正紀(2000)『民俗医療の人類学 東南アジアの医療システム』古今書院。
大木昌(2002)『病と癒しの文化史 東南アジアの医療と世界観』山川出版社。
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 気候・気象が健康に与える影響 最初に「自然環境と人間」について概説を行います。
台風や低気圧の通過など、天気や季節び変化によって自分の体調が悪化すると感じる人が数多くいます。アルプスでは、フェーンと呼ばれる風が吹くと、体調を崩したり気分が沈みがちになる人が増え、フェーン病と呼ばれることがあります。気象・気候と医学の関係を明らかにする学問「生気象学」から、人間と環境の関係に迫ります。
2 第2回 「家」が守る健康 人間にとって快適な温熱環境は、今日、エアコンなどで簡単に作り出すことができます。日本の家の機能に対する考え方は戦後に大きく変化し、現在は欧米型の高断熱高気密住居が主流になりつつあります。健康の観点から考えると快適な環境を保てることはメリットばかりに見えますが、日本の伝統的な住まいとは全く発想が異なる住居です。その土地の気候風土に適応した住居とはどのようなものかについて考えます。
3 第3回 気候変動と人類の未来 20世紀以降、地球の平均気温は年々上昇を続けています。地球の平均気温が3℃上昇することによって生じる環境の変化は人類にとっても、他の地球上の生物にとっても非常に大きな影響をもたらすと考えられています。気候変動に伴って既に起こっている変化、また今後起こるであろう変化について、健康問題や感染症との関連から考えます。
4 第4回 植民地における感染症 19世紀、インドを植民地にしたイギリスは、茶の栽培に適したアッサムに入植し、大規模な茶農園を開拓しました。インドに入植したイギリス人は、マラリアなど熱帯特有の病に苦しむことになります。入植者たちを治療するため「植民地医学(帝国医療)」が生まれ、西洋主導の近代医学の発展に寄与していきます。当時、現地では何が起こっていたのか、茶園主の回顧録から迫ります。
5 第5回 渡航における感染症リスク 2020年2月、新型コロナウィルス感染症の流行は、世界各地で同時多発的に始まり、私はインドへの出張の最中でした。さまざまな手段で気軽に移動できる現代、私たちは旅行先でも感染症にかかるリスクがあります。人々の移動と感染症の関係について考えます。
6 第6回 自然環境と人類の歴史 歴史学の一つの見方であるグローバル・ヒストリーには、環境と人間の歴史をいかに接合するかという課題が含まれています。一つの例として、地域間の交易ネットワークの拡大と限界について紹介します。近代以前の人類にとって砂漠や海洋をわたって世界中と交易することは困難でした。人類はいかにしてその困難を克服しようとしたのか、その発展の歴史を学びます。
7 第7回 気候変動と歴史 現在は温室効果ガスの増大などにより温暖化など地球環境が激変しています。歴史をさかのぼると、このような気候変動はしばしば起こっていました。寒冷化や温暖化といった気候変動は、世界史にどのような影響を与えたのでしょうか。
8 第8回 森のなかのドイツ 中世ヨーロッパは大陸を森林が覆い、人々の生活を大きく規定しました。人口が増えて作物をつくろうとすると、森林は次々に切り倒されました。特に深い森の覆われ、開墾によってそれらをダイナミックに切り開いたのはドイツでした。ドイツと森の物語を探ります。
9 第9回 毛皮の世界史 ユーラシア大陸をまたぐ大国ロシア。なぜロシアは人もほとんど住まないようなシベリアやカムチャッカまで領土を広げたのでしょうか? 実はシベリアや北氷洋には動物の毛皮という資源があったのです。毛皮がもたらす利益に目がくらんだ人類は、森へ海へ毛皮動物を採り尽くしていきます・・・。
10 第10回 感染症と帝国主義 近代ヨーロッパでは科学・医学の発展により、人間が自然を征服しコントロールできるという確信が広がりました。「文明」は自然の脅威や感染症をも克服できる、科学を知らないアジアやアフリカの人々は「野蛮」の側にあるという考え方のもと、植民地における感染症対策が実行されます。その結果、人々のくらしがどのように変化したのかを考えます。
11 第11回 東南アジアからの視点 熱帯の海と森が広がり、近年は急速な人口増加と経済成長を遂げる東南アジア。また、最近独立した国や、軍と政府が衝突するなどの政治不安を抱える国もあり、東南アジアの社会は現在も大きく変動しています。東南アジアの自然環境や社会、文化について、現地での経験も踏まえて紹介します。
12 第12回 東南アジアの文化と民俗医療 東南アジアでは、中国やインドの文化の影響を受けつつ独自の多様な文化が育まれてきました。その中で、薬、マッサージ、祈祷などの伝統的な医療も発展してきました。これらについて具体的な事例を含めて紹介し、その多様性を理解します。
13 第13回 東南アジアの植民地支配と民俗医療 東南アジアの多くの国は植民地支配を経験しました。この経験が、東南アジアの社会や文化に大きな断絶や変容をもたらしました。医療もその一つで、伝統的な医療に、科学的な医療が持ち込まれました。医療とは何か、伝統とは何か、考えたいと思います。
14 第14回 国家と人々の暮らしと感染症 東南アジアでは、小さな国家や植民地国家、国民国家などが、土地を拓き、人々に労働や徴税を課して権力を維持、発展させてきました。国家が形成される中で、人々はどのような暮らしをしていたのか、そこに感染症はどのように関係していたのかを考えます。
15 第15回 国家に組み込まれない生き方 東南アジアの国家は、人々に農業などの労働を強いて、食料と労働力を安定的に確保することで権力を発展させてきました。国家に組み込まれる生活に耐えられなくなると、人々は、山地、海、湿地などの国家の管理が行き届かないところへ逃げ込みました。こうした人々の暮らしを紹介し、自然環境と社会の関係や国家とは何かについて考えます。

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