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授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/11 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
異文化コミュニケーション研究Ⅰ/Studies in Cross-Cultural Communication Ⅰ
授業コード
/Class Code
B504452001
ナンバリングコード
/Numbering Code
HASd311
開講キャンパス
/Campus
有瀬
開講所属
/Course
人文学部/Humanities and Sciences
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
前期/SPRING
曜日・時限
/Day, Period
木2(前期)/THU2(SPR.)
単位数
/Credits
2.0
主担当教員
/Main Instructor
出水 孝典/DEMIZU TAKANORI
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
出水 孝典/DEMIZU TAKANORI 人文学科/Humanities
授業の方法
/Class Format
対面授業(講義)
授業の目的
/Class Purpose
言葉を使ったコミュニケーションに関して、語用論の知見を援用し、理解を深めることを目的とする。人文学部人文学科のディプロマポリシーで言うと人文学部人文学科のディプロマ・ポリシーのうち2「人間の行動や文化に関する専門知識と技能を総合的、体系的に身につけている」、9「学部教育と融合した教職教育をとおして、学校教育の目的や目標、地域社会の課題を理解し、さまざまな要求や問題解決に取り組み、生徒の知識や技能、主体的・協働的に学習に取り組む態度の育成を図る教員として活躍できる」に相当する。
異文化コミュニケーションという用語は様々な解釈が可能だが、人がそれぞれ異なる環境で育ち異なる文化を身につけてきていることを踏まえると、あらゆるコミュニケーションは異文化コミュニケーションだと言えなくはない。この授業では、そのような人と人とのコミュニケーションに関して、語用論(文字通りの意味に加えて文脈から読み込まれる言外の意味を扱う学問)の知見を応用し、言語使用に関する理解を深めることを目標とする。
到 達 目 標
/Class Objectives
1. 言葉の文字通りの意味に加えて、文脈から読み込まれる言外の意味について理解できる。
2. 言外の意味が読み込まれる仕組みを理解し説明することができる。
3. 言語使用の場面におけるポライトネス(相手に対する気遣い)の諸側面を理解できる。
4. 無意識の言語使用の背後ではたらいている仕組みを理解し、より言葉に敏感になり、適切な言語使用ができるようになる。
5. 言語・文学科目群の卒業研究を執筆する際に、自分の収集した言語データの分析に応用できる。
授業のキーワード
/Keywords
言外の意味、グライスの会話の協調の原理と4つの下位公理、リーチのポライトネスの原理と6つの下位公理、ブラウンとレヴィンソンによるポライトネス理論
授業の進め方
/Method of Instruction
授業ではまず、日本語の小説やJ-POPの歌詞をデータとして提示し、その一部分の解釈について考える。残りの時間でその内容をさらに掘り下げ、さらなる英語・日本語のデータも挙げながら、卒業研究で言語データを分析する際にどう使えるのか見ていく。なお、授業の最後に、出席カードに確認テストの解答と授業の感想を書いて提出してもらう。
履修するにあたって
/Instruction to Students
言葉に関してあれこれ「なんでやねん」とツッコミを入れたくなる人はぜひ履修して下さい。言語・文学科目群の人は、卒業研究のネタ探しにもなると思います。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
毎回、前回の授業でやった内容、特にそれぞれの用語とそれが表す概念についてきちんと復習する(60分~90分)。言語に関して卒業研究を書こうと考えている受講者は、自分が演習クラスで取り上げているテーマに関して、授業内容をどう関連づけられるのか、毎回よく考えること。また、ふだん自分が見ているネット上のサイトの記述、テレビドラマや映画の台詞、小説などについて、授業で学んだことを生かした分析ができないか検討するようにしよう。
提出課題など
/Quiz,Report,etc
授業の最後に出席カードに確認テストの解答と、感想を書いて提出してもらう。適宜その内容について、次回の授業でコメントする。
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
出席カードに記載する確認テストの解答50%(きちんと説明できているか)、期末レポート50%(適切な引用とそれに対する考察が書けているか)
テキスト
/Required Texts
なし
参考図書
/Reference Books
Brown, Penelope and Stephen C. Levinson. (1978, 1987) Politeness: Some Universals in Language Usage. Cambridge: Cambridge University Press. (ペネロピ・ブラウン&スティーヴン・C・レヴィンソン『ポライトネス―言語使用における、ある普遍現象―』田中典子(監訳)東京:研究社. 2011年)
Grice, Paul. (1989) Studies in the Ways of Words. Cambridge, Massachusetts: Harvard University Press. (ポール・グライス『論理と会話』清塚邦彦(訳) 東京:勁草書房. 1998年)
Cruse, Alan. (2011) Meaning in Language: An Introduction to Semantics and Pragmatics. (Third Edition) Oxford: Oxford University Press.(アラン・クルーズ『言語における意味―意味論と語用論―』片岡宏仁(訳)東京:東京電機大学出版局. 2012年)
他多数
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 導入 語用論とは何か、これらは言語学の中でどのように位置づけられるのか
2 第2回 間接発話行為 ジョン・サールによる、言語表現が間接的に果たす機能(間接発話行為)の研究を見ていく。子供が親におもちゃをねだるときに、「あのおもちゃ買って」という代わりに、「あのおもちゃ買ってくれない?」「あのおもちゃ、わたし欲しいの」と言うことができるのはなぜかを考える。 
3 第3回 グライスの協調の原理1 グライスの協調の原理について概観した後、その下位公理の1つである質の公理について見ていく。「嘘をついたりあやふやなことを言ったりしてはいけない」とよく言われるが、皮肉やメタファーは本当のことを言っていない。本当のことを言わないで間接的に何かを言う場合について考えていく。
4 第4回 グライスの協調の原理2 グライスの量の公理である「相手に与える情報は少なすぎても多すぎてもいけない」について考える。これも質の公理と同じく破っても許される場合があるが、それによって何を伝えようとしているのか、見ていく。 
5 第5回 グライスの協調の原理3 グライスの関係(関連性)の公理を見る。「関係のない話はしてはいけない」という常識は、グライスの関係の公理で説明される。でも、わざと関係ない話をして話題を変えたりしたことがあるのではないだろうか。 
6 第6回 グライスの協調の原理4 グライスの様態の公理について考える。「相手に伝わるよう分かりやすく話をする」のがふつうであり、これはグライスの様態の公理によって説明されるが、そうでないことや、わざと分かりにくくすることもある。 
7 第7回 ポライトネス ポライトネスという概念を見ていく。politenessを英和辞典で引くと「丁寧さ」と書いてあり昔はそう訳されていたが、日本語の「丁寧さ」が表す表面的なことばの上での丁寧さと完全に一致はしない。英語のポライトネスという概念が表す相手を不快にさせない話し方とはどのようなものなのか、考えていく。
8 第8回 リーチの気配りの公理・寛大さの公理 リーチの挙げたポライトネスの原理の下位公理のうち、気配りの公理と寛大さの公理を取り上げる。なぜ人を待たせるときに、時間がかかりそうでも「ちょっと待って」と言うのか、「旅行、楽しんで来いよ」と命令形で言われても腹が立たない場合があるのはなぜか、といったことが、これらの公理によって説明できることを見ていく。 
9 第9回 リーチの是認の公理など リーチの挙げたポライトネスの原理の下位公理のうち、是認の公理、謙遜の公理、合意・共感の公理を取り上げる。相手をけなしたり、自画自賛したりするのはなぜだめなのか、違うと思っていても相手に話を合わせるのはなぜなのかが、これらの公理によって説明できることを見ていく。 
10 第10回 グライス・リーチのまとめ グライスの協調の原理に含まれる4つの公理間の関係を見た後、リーチの挙げたポライトネスの原理の下位公理についても整理する。
11 第11回 ブラウン&レヴィンソンのポライトネス1 ブラウン&レヴィンソンによるポライトネス理論について見ていく。相手をいらだたせたり傷つけたりするリスク(これは相手の面子を傷つけるので、フェイスリスクと呼ばれる)を決定する要因として、お互いの社会的距離(親疎関係)、上下関係、依頼や批判がどれほどおおごとなのか、という3つの要因があることをまず見ていく。その後、その3つの要因の大きさを合計したものによって、5つのストラテジーが選択されることを見ていく。
12 第12回 ブラウン&レヴィンソンのポライトネス2 ブラウン&レヴィンソンによる5つのストラテジーのうち、ポジティブ・ポライトネスについて詳しく取り上げる。人は仲の良い人とはもっと仲良くなろうとするが、このような気遣いの仕方は、接近に基づき、相手の人に認められたいという欲求を満たすもので、ポジティブ・ポライトネスと呼ばれる。これらがさらに、どのような下位ストラテジーに分類され、どのような興味深い特徴をもっているのかを確認する。
13 第13回 ブラウン&レヴィンソンのポライトネス3 ブラウン&レヴィンソンによる5つのストラテジーのうち、ネガティブ・ポライトネスという概念を取り上げる。人は、特に仲が良くもない人とは、一定の距離を置いて接することで、なれなれしいと思われないようにする傾向がある。このような気遣いの仕方は、ネガティブ・ポライトネスと呼ばれ、忌避に基づき相手の縄張りを侵害しないようにするものである。これらがさらに、どのような下位ストラテジーに分類され、どのような興味深い特徴をもっているのかを確認する。
14 第14回 ブラウン&レヴィンソンのポライトネス4 ブラウン&レヴィンソンによる5つのストラテジーのうち、オフ・レコード(ほのめかし)について詳しく取り上げる。ネガティブ・ポライトネスを用いて接する人よりもさらに親しくない人には、物事を言質を取られるような形ではっきりとは言わず、わざとグライスの公理に違反した形で間接的に示唆しようとする。このようなオフ・レコード(ほのめかし)の下位ストラテジーについて見る。
15 第15回 ブラウン&レヴィンソンのまとめ ブラウン&レヴィンソンによる5つのストラテジーのまとめをした後、リーチのポライトネスがブラウン&レヴィンソンのポライトネスとどのように関連しているのか確認して、ポライトネスのまとめとする。

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