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授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/11 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
人文の知D/人文の知6 ヴァーチャルなものと現実性 【①】/Knowledge of Humanities D
授業コード
/Class Code
B500825001
ナンバリングコード
/Numbering Code
HASb106
開講キャンパス
/Campus
有瀬
開講所属
/Course
人文学部/Humanities and Sciences
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
後期/AUTUMN
曜日・時限
/Day, Period
木2(後期)/THU2(AUT.)
単位数
/Credits
2.0
主担当教員
/Main Instructor
服部 亮祐/HATTORI RYOSUKE
遠隔授業
/Remote lecture
Yes

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
中山 文/NAKAYAMA FUMI 人文学科/Humanities
服部 亮祐/HATTORI RYOSUKE 人文学科/Humanities
平光 哲朗/HIRAMITSU TETSUROU 人文学科/Humanities
授業の方法
/Class Format
遠隔授業(オンデマンド)
授業の目的
/Class Purpose
 ヴァーチャル・リアリティ(VR)は一般に、コンピューターによって作り出された仮想的(ヴァーチャル)なものが、現実であるかのように知覚されることを言います。例えばある種の装置によって、私たちは自分の部屋に居ながらにして空を飛び、または戦場を駆け巡ることができますし、遠く離れた誰かと恋に落ちることだってあり得ます。
 コンピューター技術の進展は、ヴァーチャルなものの現実性を飛躍的に高めました。しかし私たちはずっと以前から、程度の差はあれ同じような経験をしてきましたし、またそれについて考えてもきたのです。
 演劇は、そしてそもそも言葉というものが、私たちに現実とは別な世界を、可能なものの世界を開いてくれます。またある哲学者によれば、私たちは影絵を現実だと思って見ているに過ぎません。さてこうしたことと、現在の技術によって可能になっていることとは、何が同じで何が違うのでしょうか。
 この講義では、ヴァーチャルなものとその現実性を、中国演劇、言語学、哲学、それぞれの観点から問い直します。
 中国演劇では、「仮想的な異性を演じる男役」を持つことを劇種の特徴とする越劇の歴史について考察します。
 言語学では、「言葉がわかる」とはどういうことかを、人間とAI(人工知能)の比較を通して考えます。
 哲学では、私たちが現実と呼んでいるものがどのようにできているかを考察し、ヴァーチャルなものの現実性を問い直します。
 本講義は、これら三つの学知からヴァーチャルなものとは何かを問い、私たちが持つその経験を明らかにします。

 本講義は、人文学部のDP1に対応しています。
到 達 目 標
/Class Objectives
中国演劇:現実の男性と舞台上の男性を対比しつつ、女性が仮想する理想の男性像とはどのようなもので、それを男役がどのように形にしているかを、説明できる。
言語学:人間とAIを対比しつつ、「言葉が分かる」ことがどのようなことか、説明できる。
哲学:「現実」がどのように成立しているかを考察し、仮想的なものの現実性を説明できる。
授業のキーワード
/Keywords
ヴァーチャル・リアリティ、仮想、人工知能
授業の進め方
/Method of Instruction
※「遠隔授業情報」欄に記載されている、各回の「講義資料OneDriveフォルダ」より、講義の動画を各自ダウンロードし視聴してください。

これはオムニバス講義です。中国演劇(中山)、哲学(平光)、言語学(服部)それぞれの分野ごとに1名の教員が講義します。みなさんは毎回、出席カードの記述欄に講義を受けて感じたこと、考えたこと、疑問に思ったことを記述します。第14回目の講義では、各分野担当者の3名が順に登壇し、それぞれの講義内容についてレビューを行います。第15回目の講義では、3名がそろって登壇し、座談会形式で講義主題について討論を行います。

第1回 担当:教員3名
第2~5回 担当:中山
第6~9回 担当:平光
第10~13回 担当:服部
第14、15回 担当:教員3名
履修するにあたって
/Instruction to Students
毎週忘れずに授業動画を視聴し、課題を提出してください。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
事後学習として、講義内容について自らの考察を深める(目安として週1時間程度)。
提出課題など
/Quiz,Report,etc
講義各回についてのコメント記述または小テストとレポート課題。授業内でコメントに対するフィードバックを行い、小テストについては解答を示す。
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
3人の教員それぞれにおよそ33点を配分し、合計100点満点で評価する。

○中山:各回の課題について、講義内容をふまえているか・日本語の文章に破綻がないか・文字数が指定に適合しているか・講義で指定された資料を視聴しているか、に基づいて評価する。

○平光:講義各回のコメント課題について、以下の観点から総合的に評価する。
・自分の言葉で書いている
・記述欄、または文字数の充足度
・講義内容に即している
・講義内容を理解している
・問題を捉えている
・考察を展開している
・発想や考察に独自性、創造性がある
・コメント課題に対する姿勢

○服部:各回の小テストについては、正答率に基づき授業内容を理解できているかを評価する。期末レポートについては、内容・文量、自分の意見がはっきりと述べられているか、参考文献・引用元が適切に記載されているかに基づき評価する。
テキスト
/Required Texts
なし
参考図書
/Reference Books
川添愛『ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学』角川新書、2020年。
広瀬友紀『ちいさい言語学者の冒険 子どもに学ぶことばの秘密』岩波書店、2017年。
中国ジェンダー研究会編『中国の娯楽とジェンダー 女が変える/女が変わる』勉誠出版、2022年。
トマス・ネーゲル著、岡本裕一朗・若松良樹訳『哲学ってどんなこと?─とっても短い哲学入門─』昭和堂、1993年。
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 ガイダンス  3人の教員による授業の概要と内容の説明。
2 第2回 文学・演劇篇1
 仮想から仮装へ。人は異性装によって性の境界を越える。古くは「とりかえばや物語」、歌舞伎の女形から現代の「男の娘」まで。文学・演劇作品に描かれた異性装に込められた意味を考える。何が人をそうさせるのだろうか。
3 第3回 文学・演劇篇2
「花木蘭」を題材に、戦う女子の異性装について考える。
4 第4回 文学・演劇篇3
 越劇の歴史を解説し、1940年代の上海女性が求めた理想の男性像について考える。当時の女性たちは、現実の男性がもちえないどのような魅力を男役(異性装をする女優)に求めたのだろうか。
5 第5回 文学・演劇篇4
 越劇作品の中で、異性装がストーリーのカギとなる作品を紹介し、どのような時に女性たちは異性装をしたのか。それによって主人公の運命がどのように動き出すのかについて考えよう。「梁祝」「」
6 第6回 哲学篇1
夢か現実か
 私たちは仮想的なものが現実のように見えていたとしても、それと現実とを区別しています。この区別は、仮想的なものが物質的、物体的な実質を伴わないことによるでしょう。では、ある物体がそこに実在すると、私たちは何によって知るのでしょうか。この問いからはじめて、私たちの見ている世界が夢であることはありうるか、と考えます。
7 第7回 哲学篇2
洞窟の比喩
 私たちは、生まれたときから手足を縛られて、洞窟の奥に映し出された影絵を見せられている。そしてそれが現実だと思って疑わない。プラトンは私たちが感覚によって物を見ていることを、そしてそれが現実だと思っていることを、このように例えて批判します。この議論を通して私たちが物を見ていることとその現実性とを考えます。
8 第8回 哲学篇3
記憶の潜在性
 私たちは何かを見ているとき、感覚に与えられたものをそのまま見ていると思っています。けれどもベルクソンは、知覚における像のほとんどは記憶に由来すると言います。そして記憶の在り方を、現在の知覚に対して潜在的な(virtuel)ものとします。ベルクソンの知覚論、記憶論とともにヴァーチャルということをもう一つの観点から捉えます。
9 第9回 哲学篇4
ヴァーチャルなものと現実性
 ドゥルーズが、ベルクソンの解釈から出発して、潜在的なものはそれ自体で現実性を持つ、と考えました。その時、彼は潜在的なものと可能的なものとを区別しました。このドゥルーズの議論を辿り、ヴァーチャルなものと現実性を巡る問題の理解を新たにします。
10 第10回 言語学篇1
言葉の聞き取り
 AIはどのように私たちの言葉を聞き取っているのでしょうか。そもそも「言葉を聞き取れる」とはどういうことなのでしょうか。機械による音声認識を通して、物理的な音の波を抽象的な音の単位に変換するメカニズムについて考えてみましょう。
11 第11回 言語学篇2
会話をする機械
 人間と見分けがつかない会話能力を持っている機械は、知性を持っていると言えるでしょうか。「言葉がわかる」とはどういうことなのか、自然な会話ができることと言語が理解できることの違いについて考えてみましょう。
12 第12回 言語学篇3
単語の意味
 機械に単語の意味を教える際、私たちの使っている辞書の内容をそのまま教えてやれば良いのでしょうか。また、何ができれば、言葉の意味がわかっていると言えるのでしょうか。意味とは何なのか、考えてみましょう。
13 第13回 言語学篇4
話手の意図
 「文そのものが表す内容」と「話す人がこういうつもりで言った内容」にはズレが生じることがあります。機械が言語をうまく扱えるようになるために、このズレをどのように解消していく必要があるのか、考えてみましょう。
14 第14回 レビュー
ヴァーチャルなものと現実性
 3人の教員による講義内容の振り返りと総括。
15 第15回 シンポジウム
ヴァーチャルなものと現実性
 3人の教員による討論と質疑応答。

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