シラバス参照

授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2026/02/02 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
経済思想史/History of Economic Thought
授業コード
/Class Code
B000542001
ナンバリングコード
/Numbering Code
ECOd210
開講キャンパス
/Campus
有瀬
開講所属
/Course
経済学部/Economics
年度
/Year
2026年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
後期/AUTUMN
曜日・時限
/Day, Period
金1(後期),金2(後期)/FRI1(AUT.),FRI2(AUT.)
単位数
/Credits
4.0
主担当教員
/Main Instructor
三好 宏治/MIYOSHI KOJI
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
三好 宏治/MIYOSHI KOJI 経済学部/Economics
授業の方法
/Class Format
講義(対面授業)
授業の目的
/Class Purpose
 本講義は、経済学部ディプロマ・ポリシー(知識・技能)に掲げられた以下の能力の修得を目的とする。
1.経済の歴史や制度に係わる知識を修得し、今日の経済情勢を歴史的・制度的に理解できること。
2.経済理論の基礎を修得し、日常の経済生活や経済全体の動向について理論的に理解できること。
 そのうえで、本講義は「経済思想史」を単なる学説史としてではなく、善き市民として社会に参加するための基礎教養として位置づける。

【1】善き市民として生きるための経済学的思考の獲得
 本講義の第一の目的は、学生が
「自分が責任ある善き市民として生きるためには、経済学を身につける必要がある」
と理解できるようになることである。
 経済学の源流は古代ギリシャ哲学にまで遡る。古代ギリシャにおいて、経済を意味するオイコノミアは、単なる財の管理技術ではなく、市民がよく生きるための処世術・獲得術として考察されてきた。同時に、ギリシャ哲学はポリテイア(政治・統治)を通じて、悪しき隣人や利己的欲求に左右されず、市民一人ひとりが正しく生きられる社会環境の在り方を追究してきた。
 その後の西洋経済思想は、各時代の政治的・社会的課題に向き合いながら、オイコノミアとポリテイアの両者を思想的・制度的に発展させてきた。法と正義、公正・公平、自由と人権、共同体と市場といった規範的問題への関心と並行して経済学は形成されてきたのである。
 このような系譜を踏まえると、経済学とは古代から現代に至るまで、「善き市民となるために不可欠な学問」である。本講義を通じて経済思想の歴史的展開を学ぶことで、現代経済学のテキストだけでは見えにくい視点や問題意識を学生は獲得することができる。

【2】他の専門科目への関心と理解を深める基礎としての経済思想史
 本講義の第二の目的は、経済思想史を通じて幅広い考え方とその思想的系譜を学ぶことで、
「他の専門科目への関心を高めること」
「他の専門科目の理解を助けること」
にある。
 経済学は、各時代の社会問題や政策課題を背景に、前時代の議論を参照しつつ発展してきた。経済思想の歴史を学ぶことは、現代経済学の背後にある問題意識や理論的前提を理解することにつながる。
 また、ワルラス的調整やペティ=クラークの法則など、経済学には経済学者の名前を冠した理論や法則が数多く存在する。これらの人名には、当該理論のみならず、その成立背景や時代状況、思想的立場が凝縮されている。経済思想史を学ぶことで、専門科目で登場する理論や用語を、単なる暗記対象ではなく、歴史的文脈をもった知識として理解できるようになる。
 以上の点から、本講義は経済学部における専門科目群への導入としても重要な役割を果たすものである。
到 達 目 標
/Class Objectives
1.【知識】各時代の主要な経済思想家について、その生涯(遍歴)と代表的著作の内容を説明できる。
2.【知識】経済思想家たちが著作を生み出した歴史的背景を理解し、それぞれが直面し、克服しようとした歴史的課題や思想的問題を説明できる。
3.【態度・習慣】現代社会が抱える規範的問題(公正・自由・平等・市場と国家の関係など)に対して、経済思想史で学んだ知見を踏まえ、自分なりの意見を持つことができる。
授業のキーワード
/Keywords
倫理と経済の関係/効率性と公平性/様々な競争観/様々な労働観/市場と国家/市場と企業
授業の進め方
/Method of Instruction
1.本講義は、講義形式を中心として進行する。
2.毎回、小冊子形式で印刷した資料を配布する。あわせて、シラバスに記載した参考図書も適宜参照しながら授業を行う。
3.各回の授業では、配布資料を用いて、各時代の経済思想家の議論や理論を、歴史的背景や制度的条件と関連づけながら体系的に解説する。
4.また、必要に応じて、現代社会の経済問題や制度との関係にも触れ、経済思想史で学ぶ内容が現代経済を理解する際にどのような視点を与えるかを示す。
5.毎回出席確認を行う。
履修するにあたって
/Instruction to Students
1.本学には、理論の形成過程を中心に扱う「経済学史」の講義が別に開講されている。本講義はそれとは異なり、「経済思想史」として、各時代の経済思想がどのような歴史的・社会的背景のもとで形成され、どのような思想的流れの中に位置づけられるのかを重視する。
2.そのため、各思想家の個別の理論だけでなく、当時の政治・社会・制度を含む時代背景を理解することが重要となる。高校までに学習した世界史の基礎的知識があることが望ましい。講義内でも必要に応じて時代背景の説明は行うが、世界史を履修していない、あるいは知識が十分でない場合には、各自で補足的に調べながら受講することが求められる。
3.なお、理論史としての理解を深めるためには、「経済学史」をあわせて履修することが望ましい。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
1.本講義では、授業内容の理解を深めるため、授業時間外での予習・復習を前提とする。
学生は、シラバスに記載された参考図書のうち、講義内容に関連する箇所を適宜読むことが求められる。また、学期を通じて、指定された参考文献を一度は通読することが望ましい。
【教科書・参考書の通読・精読:45時間以上】
2.さらに、講義を受ける中で理解が不十分な点や、知らない・関心を持った歴史用語や人物については、授業後に質問を行う、あるいは指示の有無にかかわらず、参考文献や百科事典等を用いて自ら調べることが望ましい。【参考文献等を用いた調査・復習:毎週15分以上】
提出課題など
/Quiz,Report,etc
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
成績評価は、定期試験の結果(100%)により行う。
ただし、授業への出席回数が全授業回数の3分の2に満たない場合は、定期試験の成績にかかわらず、単位を認めない。
テキスト
/Required Texts
参考図書
/Reference Books
ナイアル・キシテイニー著、 月沢 李歌子訳、『若い読者のための経済学史 (Yale University Press Little Histories)』、すばる舎、2018年。
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 イントロダクション、経世済民の思想 経済思想史の全体像を概観する。あわせて、現代の主流派経済学が、特定の身分や統治層のための学問ではなく、ポリス(市民)社会を前提とした市民の学問として形成・発展してきた点について整理する。
2 第2回 古代ギリシャの伝統:善の探求とオイコノミア/ポリテイア アリストテレスを中心に、経済学に関係する古代ギリシャ哲学の基本的な考え方を取り上げる。中庸の観念、配分的正義と交換正義、プラトンの理想国家、アリストテレスの価格論などを通じて、経済と倫理・政治との関係について理解を深める。
3 第3回 中世:キリスト教と経済倫理 トマス・アクィナスを中心に、中世スコラ神学における経済倫理の考え方を取り上げる。商人の利潤をめぐる議論や公正価格論を通じて、経済活動が道徳や正義とどのように結びついていたのかを整理する。あわせて、当時の政治思想との関係にも触れ、王権の義務に関する議論を通じて、政府が担うべき役割に関する思想的伝統を検討する。
4 第4回 ルネサンスと近世:規範的議論と実証的議論の分離 ルネサンス期を背景として、近代的な経済思想が成立する前提条件を整理する。マキャヴェリの政治思想を手がかりに、規範的議論と実証的議論の関係がどのように捉え直されたのかを検討する。あわせて、金融活動や商業の発展に注目し、メディチ家を例に金貸しや銀行業の社会的位置づけを確認するとともに、パチョーリによる複式簿記の成立が経済活動の把握に与えた影響を取り上げる。さらに、近代的合理性や人間観の変化として、デカルトやパスカルの思想にも触れ、後の経済思想への接続を整理する。
5 第5回 プレ古典派経済学の諸学説 16〜17世紀を中心に、国家の富や経済活動をめぐる議論がどのように展開していったのかを取り上げる。商人や思想家による実証的な議論を通じて、国家が取るべき経済政策についての考え方が形成されていく過程を整理する。あわせて、古典派経済学の成立以前に展開された経済思想の特徴を概観する。
6 第6回 経済学の誕生/アダム・スミスの経済思想 アダム・スミスの経済思想を取り上げ、近代経済学がどのように成立したのかを検討する。産業化や金融現象に対するスミスの認識、重商主義批判や国際貿易をめぐる議論を通じて、彼の経済学が当時の歴史的状況とどのように関わっていたのかを整理する。あわせて、一般に理解されがちな自由放任主義的な解釈との違いにも触れ、スミス経済学の特徴を多面的に捉える。
7 第7回 古典派経済学の代表者/リカード リカードとマルサスの対比を通じて、古典派経済学の経済思想の特徴を整理する。人口論や分配論をめぐる議論を手がかりに、19世紀初頭の経済学が抱えていた問題意識を検討し、当時「陰鬱な学問」とも呼ばれた背景について考察する。
8 第8回 初期社会主義者たち 古典派経済学が資本蓄積や機械化による労働生産性の向上に注目していたのに対し、初期社会主義者たちが労働の在り方や労働意識の変化に着目していた点を整理する。オーウェン、フーリエ、サン=シモンの思想を取り上げ、それぞれがどのような社会像や経済の構想を描いていたのかを検討し、19世紀初頭における経済思想の多様性を考察する。
9 第9回 ドイツ歴史学派とマルクス経済学 古典派経済学に対する批判的潮流として、ドイツ歴史学派の経済思想を取り上げる。民族や歴史的文脈を重視する発展段階説の特徴を整理したうえで、それと対比しながら、マルクス=エンゲルスによる産業革命の捉え方や唯物論的歴史観を検討する。あわせて、彼らが資本主義の将来やその変容についてどのように考えていたのかを整理する。
10 第10回 様々な資本主義論 マルクス以後の多様な資本主義論を取り上げる。マルクスの資本主義観をめぐる評価や解釈の広がりを確認したうえで、ドイツ語圏における マックス・ウェーバー と ヴェルナー・ゾンバルト の議論を通じて、生産と消費のどちらを重視するかという論点を整理する。さらに、 ヨーゼフ・シュンペーター による革新や企業家を軸とした資本主義論、 ソースティン・ヴェブレン による制度や文化に着目した資本主義分析を取り上げ、それぞれの特徴を検討する。これらの議論が、その後の経済学や社会科学に与えた影響についても整理する。
11 第11回 限界革命から新古典派へ 1870年代を中心に、主観的満足度を意味する効用概念と限界概念の導入によって、需給理論に基づく統一的な価格理論が形成されていく過程を取り上げる。あわせて、この時期に進展した経済学の数理化について整理し、いわゆる限界革命の意義を検討する。
また、限界効用理論の思想的背景として、功利主義の成立と発展を概観し、同感理論を含むそれ以前の倫理的アプローチが、経済思想史の中でどのように位置づけられてきたのかを検討する。
12 第12回 ケインズ経済学の盛衰①自由放任の終焉とケインズ経済学の誕生 1929年の世界恐慌を背景として、それまでの恐慌とは異なり、長期にわたって自律的な回復が見られなかった状況を取り上げる。その中で、ジョン・メイナード・ケインズ が提示した経済思想を検討し、政府の役割をどのように位置づけたのかを整理する。あわせて、大恐慌の歴史的経緯、当時の古典派経済学の前提、ケインズの理論が持つ新規性について概観し、現代マクロ経済学との関係を考察する。
13 第13回 ケインズ経済学の盛衰②赤狩りとベトナム戦争 戦後アメリカを中心に、ケインズ経済学がどのような歴史的文脈の中で受容され、再編成されていったのかを取り上げる。1950年代の政治状況を背景として、ケインズ的政策と社会主義との関係がどのように認識されていたのかを整理する。
その上で、ポール・サミュエルソン による教科書『経済学』を手がかりに、古典派経済学とケインズ経済学を統合しようとする試みを検討する。さらに、ミルトン・フリードマン との理論的対立に注目し、両者の議論や個人史を通じて、20世紀後半のマクロ経済学における主要な論争を概観する。
あわせて、大恐慌、東西冷戦、ベトナム戦争、スタグフレーションといった経済史的・世界史的事象が、経済学の理論形成に与えた影響について考察する。
14 第14回 ソ連型社会主義と経済計算論争 二度の世界大戦を背景として、国家による経済への関与が拡大した歴史的状況を取り上げる。その中で、政府が経済に介入することによって効率性や公平性を実現できるのかという問題が理論的に検討されるようになった経緯を整理する。これらの議論は、いわゆる経済計算論争として展開され、オスカル・ランゲ によるワルラス的一般均衡理論を用いた社会主義経済の構想などが提示された。
あわせて、コルナイ・ヤーノシュ の『不足の経済学』を手がかりに、社会主義経済の制度的特徴とその成果および限界について検討し、ソ連型社会主義経済の構造的問題を考察する。
15 第15回 ケインズ経済学の盛衰③経済学帝国主義の誕生 戦後経済学におけるシカゴ学派の展開を取り上げ、マクロ経済学上の論争にとどまらない影響を整理する。マクロ分野での議論に加えて、ミクロ経済学において ジョージ・スティグラー や ゲーリー・ベッカー が、価格理論や産業政策をめぐって提示した分析を検討する。
あわせて、ハーバードとシカゴという学術的対立軸を手がかりに、ケインズ革命と並行して進展していた競争理論や企業理論の発展を概観し、現代経済学における理論領域の拡張について考察する。

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