シラバス参照

授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/10 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
経済思想史/History of Economic Thought
授業コード
/Class Code
B000542001
ナンバリングコード
/Numbering Code
ECOd210
開講キャンパス
/Campus
有瀬
開講所属
/Course
経済学部/Economics
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
後期/AUTUMN
曜日・時限
/Day, Period
金1(後期),金2(後期)/FRI1(AUT.),FRI2(AUT.)
単位数
/Credits
4.0
主担当教員
/Main Instructor
三好 宏治/MIYOSHI KOJI
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
三好 宏治/MIYOSHI KOJI 経済学部/Economics
授業の方法
/Class Format
講義(対面授業)
授業の目的
/Class Purpose
本講義は経済学部DPの(知識・技能)
1.経済の歴史や制度に係わる知識を修得し、今日の経済情勢を歴史的・制度的に理解できる。
2.経済理論の基礎を習得し、日常の経済生活や経済全体の動向について理論的に理解できる。
を目指す。

【1】「自分が責任感ある善き市民として生きるためには、経済学を身につけなければならない」と学生が思えるようになることが、本講義の1番の目的である。
経済学の源流は古代ギリシャ哲学にある。ギリシャ哲学は文明社会の構成員たる市民が修めるべき学問のひとつとしてポリテイアとオイコノミアを議論してきた。
古代ギリシャの哲学者は一人一人の市民がよく生きるための処世術・獲得術としてのオイコノミアのみを考えたのではない。彼らは同時に、悪しき隣人に惑わされず一人一人が正しき市民として善く生きられる社会環境を考えるためにポリテイアも哲学の対象としてきた。
西洋の経済思想家たちは、それぞれの時代的課題に向き合い、オイコノミアとポリテイアを思想的・技術的に発展させていく。西洋哲学の系譜から考えると、経済学とは今も昔も「善き市民となるために必須の学問」である。法と正義、公正・公平、自由と人権と共同体、といった哲学的・法学的・政治学的な規範的議論と共に進展した経済学の歴史を知ることで、現代経済学のテキストだけでは気づくことができなかった視点を学生は身につけられるだろう。

【2】学生が経済思想史で幅広い考えとその思想系譜を学ぶことで、「他の専門科目への興味をもって接することができ」「他の専門科目の理解の手助けにもなること」も本講義の目的である。
経済学は各時代の問題意識を背景に、前時代の議論を参照しつつ発展していった。経済思想の発展を知ることは、現代経済学の背後にある諸々の問題意識と幅広さを知ることにつながる。さらに、リカードの比較優位やペティ=クラークの法則など、経済学者の名前が付けられた定理は多い。歴史に名をのこした経済学者の人名には、その人物が作り上げた経済理論や経済思想、歴史背景など、様々な情報が集約されている。経済思想史の講義を受講することで、他の専門科目の受講の際の興味促進や理解の補助になるだろう。
到 達 目 標
/Class Objectives
1.【知識】各時代の経済思想家の遍歴と著作内容を説明できる。
2.【知識】経済思想家たちが著作を産んだ歴史背景、克服しようとした歴史的課題や思想を説明できる。
3.【態度・習慣】現代社会の規範的問題に対して、自分なりの思想的立場を持つことができる。
授業のキーワード
/Keywords
倫理と経済、効率性と公平性、政府による再分配、自由主義と共和主義、企業家精神、東西冷戦と経済体制
授業の進め方
/Method of Instruction
講義スタイルで授業を進行する。
履修するにあたって
/Instruction to Students
本学に、は理論史を取り扱う『経済学史』の講義が別に存在する。本講義は『経済思想史』である。各思想家の思想と思想史の流れを理解するためには個人史だけではなく、時代背景を知る必要がある。そのため、高校までの世界史の知識がある方が望ましい。(講義である程度は説明するが)世界史を選択していなかったものは、自分で世界史の知らないところを調べる必要があることを覚悟されたい。
もちろん、『経済学史』も受講することが望ましい。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
学生は、参考図書で講義に関わる箇所を読む必要がある。また、シラバス指定の参考文献を一度は通して読む必要があるだろう。【教科書、参考書の通読:45時間以上】
講義を受けた後もわからない・知らない・気になった歴史用語があれば、講義後に質問をするか、指示されていなくても参考文献や百科事典で自分で調べなおす必要がある。【参考文献を使用:毎週15分以上】
提出課題など
/Quiz,Report,etc
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
定期試験100%
ただし、出席回数が3分の2に満たない場合は定期試験の点数に関わらず不可とする。
テキスト
/Required Texts
参考図書
/Reference Books
ナイアル・キシテイニー著、 月沢 李歌子訳、『若い読者のための経済学史 (Yale University Press Little Histories)』、すばる舎、2018年。
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 イントロダクション、経世済民の思想 経済思想史の概観を学んでいく。また、現代の主流派経済学が東洋的な士大夫(武士)の学問ではなく、ポリス(市民)社会を前提とした市民の学問として発展していったことを確認していく。
2 第2回 古代ギリシャの伝統:善の探求とオイコノミア/ポリテイア アリストテレスを中心に、経済学に関係する古代ギリシャ哲学の考え方を学んでいく。中庸の観念、配分的正義と交換正義、プラトンの商人論、アリストテレスの価格論などである。
3 第3回 キリスト教と経済倫理 トマス・アクィナスを中心に、中世スコラ神学における商人の利益の是非/公正価格論について学んでいく。また、政府が取るべき経済政策の思想的伝統を考えるために、王権の義務について学んでいく。
4 第4回 王国の滅びを回避するためには?規範的議論と実証的議論の分離 マキャヴェリによる規範的議論と実証的議論の分離、および、共和国思想の復活について学んでいく。
5 第5回 プレ古典派経済学の諸学説 16〜17世紀頃になると、国を豊かにするために、商人や哲学者たちは経済を実証的に議論し、その上で国家の取るべき経済政策を論じはじめる。古典派経済学以前の経済学について学んでいく。
6 第6回 経済学の誕生/アダム・スミスの経済思想 アダム・スミスが産業革命を認識していたかについては議論がある。だが、バブルの危険性を知っていたことは間違いない。また、貿易の嫉妬が重商主義戦争を生むことを知っており、単なる平和主義者ではない。スミスの作り出した経済学を学ぶとともに、彼が単なる自由放任主義者ではないことを確認していく。
7 第7回 古典派経済学の代表者/リカード リカードとマルサスの対比を通して、「陰鬱な学問」と揶揄される古典派経済学の経済思想について学んでいく。
8 第8回 功利主義と限界革命 1870年代に、主観的満足度を意味する効用と追加的1単位である限界概念を武器に、需給理論による統一的な価格理論体系が成立していく。また、同時に、経済学の数理化が進んでいった。このいわゆる限界革命を学んでいく。
また、限界効用の前提となった功利主義の歴史と発展について学んでいき、スミスやヒュームの同感理論が経済思想史の徒花となっていたことを確認する。
9 第9回 初期社会主義者たち 一旦、時間を遡る。古典派経済学者たちは、資本蓄積と機械化による労働生産性改善に注目した。それに対して、初期社会主義者たちは労働意識の変革による労働生産性に注目した。あまり顧みられることのないオーウェン、フーリエ、サン=シモン3人の経済思想について再検討していく。
10 第10回 ドイツ歴史学派とマルクス経済学 古典派経済学の反対勢力として、保護貿易を主張したドイツ歴史学派がいる。民族の精神性を重要視する歴史学派の発展段階説と対比させながら、マルクス=エンゲルスの産業革命/唯物論史観について学んでいく。また、マルクス=エンゲルスが資本主義の運命についてどう考えたかを学んでいく。
11 第11回 様々な資本主義論 マルクスの資本主義観を神聖視したのはマルクス主義者だけである。ドイツ語圏のウェーバーとゾンバルトは生産と消費のどちらが経済にとって重要化を巡って激しく論争した。シュンペーターは革新や起業家精神という彼独自の概念をキーに、資本主義の運命を考えた。アメリカのヴェブレンは人文学と経済学を融合させた資本主義論を展開した。彼らの議論は、今日の主流派経済学にも影響を残している。これらマルクス以外の資本主義論を学んでいく。
12 第12回 ソ連型社会主義と経済計算論争 世界大戦の結果、それまで考えられなかったほど、経済に対する政府の指導を可能にした。政府が適切に経済に介入することで介入することで、効率性と公平性が可能になる可能性が検討された。これを経済計算論争といい、その中で、ランゲによりワルラスの一般均衡理論を使った社会主義経済の実現性が議論された。
経済計算論争および、ハンガリーの経済学者コルナイの『不足の政治経済学』の議論を通して、ソ連型社会主義経済の必然的失敗について考えていく。  
13 第13回 ケインズ経済学の盛衰①自由放任の終焉とケインズ経済学の誕生 1929年に発生した大恐慌は、それまでの恐慌とは異なり、長期間持続して自律回復が見られなかった。そこで、登場したのがケインズである。ケインズは政府の重要性を主張するにあたり、古典派経済学の自由放任思想を乗り越えなければならなかった。
現代マクロ経済学にとっても重要なので、大恐慌の歴史的経緯、当時の古典派の常識、ケインズの革新性について議論していく。 
14 第14回 ケインズ経済学の盛衰②赤狩りとベトナム戦争 ケインズ経済学の運命は平穏なものではなかった。
1950年代ケインズ経済学を利用したニューディーラーたちは、社会主義と一緒にされてしまい赤狩りの対象となった。赤狩りを生き延びてアメリカのケインズ経済学の中心となったのは、スミスの「見えざる手」を旗印にしたサミュエルソンの『経済学』である。(サミュエルソンによって、初めてスミスの経済学者としての独創性と理論的貢献が認められた)
そして、そのサミュエルソンのライバルとなったのがフリードマンである。彼らの個人史と経済史的・世界史的イベントを見ていくことで現代マクロ経済学の理解に必須の20世紀中庸の経済学的論争を見ていく。とくに、大恐慌、東西冷戦、ベトナム戦争、スタグフレーションといった事象を学んでいく。 
15 第15回 ケインズ経済学の盛衰③経済学帝国主義の誕生 シカゴ学派の対立というと、フリードマンとのマクロ経済学上の論争がまず想起される。だが、ミクロ経済学でもシカゴ大学のスティグラーやベッカーが新古典派総合が依拠する伝統的な価格理論と産業政策に対する攻撃を行っていた。
ハーバード対シカゴという対立軸を意識しながら、ケインズ革命の裏で進行していた競争や企業の理論に関する発展を見ていく。

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