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授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/15 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
少年司法/Juvenile Justice System
授業コード
/Class Code
B203191001
ナンバリングコード
/Numbering Code
LAWc034
開講キャンパス
/Campus
ポートアイランド
開講所属
/Course
法学部/Law
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
後期/AUTUMN
曜日・時限
/Day, Period
水3(後期)/WED3(AUT.)
単位数
/Credits
2.0
主担当教員
/Main Instructor
佐々木 光明/SASAKI MITSUAKI
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
佐々木 光明/SASAKI MITSUAKI 法学部/Law
授業の方法
/Class Format
講義
授業の目的
/Class Purpose
テーマ・目的  非行・犯罪、少年と成人とでなぜ手続きが異なるのか、法制度は何を求めているのか、「考える」力をつちかう。それを通じて、法的素養を身につけるとともに社会的課題を発見し、解決への指針を示す力をつける。

 少年司法はいま大きな転換期を迎えている。選挙年齢が18歳に引き下げられ(公職選挙法)、民法の成年年齢の引き下げ(民法改正2022運用開始)に呼応して少年法の適用年齢の引き下げの議論が始まり、2021年には適用年齢は現行のままながら「特定少年」として刑事処分対象範囲を広げる第5次の改正を行った。2022年から運用が始まった。飲酒・喫煙年齢(20歳未満のまま)等のように年齢に関わるものは300にも及ぶ。年齢は、社会のあり方や価値観とも密接である。なかでも少年法の適用年齢引き下げの問題や刑罰化は、少年法の基本理念、家庭裁判所のあり方等の問題でもある。少年期の社会的成長ともかかわり、教育や福祉とも連動する。

 少年法は、2000年11月に制定後初めて大きな改正がなされ、2001年4月から施行・運用されているが、基本的な改正の特徴は、刑事罰化、重罰化、必罰化といっていい。立法提案者は、基本理念は変わらない改正だとしたが、より刑事司法に近づき、福祉的な側面はいっそう後退していくばかりである。
 2007年5月には、14歳未満の子ども(触法少年)の調査権限が福祉的対処を優先した児童相談所から捜査機関の警察へ移行し、さらに概ね12歳までの少年院収容を認める第2次少年法改正が行われた。2008年には、少年審判の被害者傍聴を認める少年法第3次改正が行われ、刑事裁判の被害者参加制度とともに12月から運用が始まった。2014年には4次改正として、国選付添人選任事件拡大とセットで検察官関与が拡大し、併せて少年の刑罰の上限を引き上げる改正が行われた。先の通り2021年には18・19歳を「特定少年」と位置づけ、刑事罰化対象を拡大する第5次改正を行い22年から運用が始まった。いっそうの厳罰化の動きのもとでの改正であり、少年法の理念は危機的といっても過言ではない。

 1990年代からの厳罰化論の展開とその後の法改正が進むなかで、選挙年齢の引き下げを端緒に2019年、法制審に刑罰制度の見直しの議論とともに少年法適用年齢の引き下げが諮問された。実務家、研究者のほとんどが少年法の運用はうまくいってると指摘するなかでの諮問であった。2021年、少年法の適用年齢の引き下げを実施しないが、18・19歳を「特定少年」として、刑事裁判へ逆送する対象の事件を拡げた。なぜ今、刑罰制度の見直しなのか(刑罰の引き上げはすでに実施済み)?なぜ、少年法と連動させるのか?法務省はどんな少年司法の未来像を描いているのだろうか?

 一方で、「子どもに関わる基本法」でありながら、少年法制について十分な知識と情報をうる機会も少ないのが実情である。耳目を集める少年事件からの印象論・心情論が幅をきかせてもいる。
 本講座では、少年法「改正問題」を軸にしながら、少年司法の歴史と現状を概観しつつ、現在注目されている問題群に焦点をあて、考えるべき課題は何かを明確にしたい。併せて、司法改革の大きな動きや、少年司法に関する国際準則にも注目し、現在の日本の少年司法の状況に引き付けて検証、分析する。なお、日本は、子どもの権利条約の実施状況に関する国連の第2回審査を04年1月に受け、身柄拘束のあり方、2000年刑事処罰年齢の引き下げなど、改正の見直し等を含めた権利保障に向けた改善が必要だとの勧告を受けた。日本は国連から課題を突きつけられるなか、2010年5月には第3回の国連の審査を受け、少年法改正の内容が条約の趣旨と整合性をもつのかについて、あらためて検証を求められた。2024年は、国際社会が子どもの権利保障の具体化を目指して採択した国連子どもの権利条約採択35周年、日本が批准して30周年の節目である。
 2019年1月には国連子どもの権利委員会での日本政府報告書(2017.6提出)審査が行われ勧告(総括所見)も出されている。いま、あらためて国際人権基準、子どもの権利保障の視点から日本の少年司法の実情を検証する意義は極めて大きい。



到 達 目 標
/Class Objectives
 少年司法の全体像を俯瞰・把握しつつ、いま日本の少年司法において何が問題の焦点なのかを捉えることができる。
授業のキーワード
/Keywords
授業の進め方
/Method of Instruction
 レジュメを基礎にした講義方式とともに、応答的方式も取り入れる。
履修するにあたって
/Instruction to Students
 少年事件等に関わる社会的な事象、動向、そして自分の意識に対して、「なぜ」「どういうこと?」といったような「問いかけ」をすることにこだわってみてください。何かの「始まり」が生まれると思います。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
 授業時に示された事象や用語、参考文献について、事前事後に学習する時間を確保することは、講義の理解を深めます。
提出課題など
/Quiz,Report,etc
 適宜、レポート課題の提出を求めることも。
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
 基本的に定期試験によって評価します。なお授業コメント、レポートを加点的に評価、累積します。
テキスト
/Required Texts
 授業開始後に紹介、指示をします。
参考図書
/Reference Books
佐々木光明・服部朗『ハンドブック少年法』明石書店
佐々木他『18・19歳非行少年は、厳罰化で立ち直れるか』現代人文社2021
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 1、現代日本「社会」の構想と法現象から刑事法の「いま」を把握する ・政策、統計、報道からの検証
2 第2回 2、日本の価値原理としての憲法と少年法ー歴史への視座 ・旧少年法との連続性と断絶/保護主義と適正手続き  ・刑事司法再編と「司法機能」論
3 第3回 3、刑事司法における少年司法の位置づけを俯瞰する ・現代刑事法の理論と実務そして、少年司法・国際人権法における日本の刑事司法と少年司法の関わり(2019年国連子どもの権利委員会、日本政府報告書審査を追う)
4 第4回 4、少年法の理念と少年司法制度ー「司法福祉」の実質化 ・少年法の手続きと担い手 −少年自身の目から/全体の構造と相互関連・少年司法制度の概要と「司法福祉」理念
5 第5回 5、日本の刑事手続きの課題と少年法との連動 ・「取調べ」と少年であることの意味 −身柄の拘束と少年の可塑性
6 第6回 6、裁判員裁判と少年の刑事裁判の課題 ・成人と同じ手続きでいいのか?裁判員(市民)は何を裁くのか
7 第7回 7、少年法改正の検証と子どもの権利論ー4次に渡る改正とその基調 ・少年法改正論の歴史と現在/家裁の変容
8 第8回 8、家庭裁判所の役割と担い手 ・「家裁調査官制度」「鑑別制度」の意味と課題
9 第9回 9、少年審判のあり方とその構造の検証  ・少年審判構造と連動する審判対象
10 第10回 10、少年「処遇」の実際と課題 ・施設処遇の多様化と社会的理解・社会内処遇の担い手と苦悩/ 国際的な視野のなかで
11 第11回 11、「健全育成政策」の実質的主体とその歴史 ・少年警察制度と機能/民間協力体制形成の歴史と健全育成/少年補導の担い手とその実際/少年の捜査
12 第12回 12、少年の死刑と少年の刑事裁判 ・子どもの「責任」とは?
13 第13回 13、児童福祉法と少年法の狭間 ・触法少年をめぐる課題/虐待・放任の場合と児福法改正
14 第14回 14、成長期の子ども存在と非行 ・「性」と少年 −「有害図書規制」の歴史と論理/援交とサイバーポルノ・「自己き傷」と少年 −「薬物乱用規制」の論理と実態/自殺という解決・「群れ」と少年 −主犯なき共犯事件/「暴走規制と族対策」の論理と実態
15 第15回 15、青少年施策における「国家」と「地域社会」/参加型少年司法の模索 ・ティーンコートを契機に考えるコミュニティと子どもの参加

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