シラバス参照

授業情報/Class Information

科目一覧へ戻る 2024/04/15 現在

基本情報/Basic Information

開講科目名
/Class
東洋法制史 (資格)/Eastern Legal History
授業コード
/Class Code
B200711002
ナンバリングコード
/Numbering Code
LAWc055
開講キャンパス
/Campus
ポートアイランド
開講所属
/Course
法学部/Law
年度
/Year
2024年度/Academic Year  
開講区分
/Semester
通年/FULL-YEAR
曜日・時限
/Day, Period
水2/WED2
単位数
/Credits
4.0
主担当教員
/Main Instructor
萩原 守/HAGIHARA MAMORU
遠隔授業
/Remote lecture
No

担当教員情報/Instructor Information

教員名
/Instructor
教員所属名
/Affiliation
萩原 守/HAGIHARA MAMORU 法学部/Law
授業の方法
/Class Format
 大学の方針に基づいて、通常の対面形式での授業を予定している。シラバスを定期的に見るようにしておいてほしい。
授業の目的
/Class Purpose
 この科目は、法学部のDPに示す「法の理念および現実の社会における法の運用を踏まえて、法および政治について体系的に学修し、法化社会・国際化社会に対応した法的素養を身につけている」ことを目指す科目である。「東洋法制史」は、「日本法制史」や「西洋法制史」と並んで、現実の現代社会における法の理念や法の運用方法が形成されてきた過去の経緯を詳しく理解するための基礎的科目であり、「法学」全体の一部である「基礎法学」に分類されることの多い科目である。この授業の具体的な主題は、「清代を中心とする中国及びモンゴルの法制史」である。
   授業の目的は、以下の通りである。まず前期では、日本法制史や西洋法制史に対する意味での「東洋法制史」、特にその代表である中国法制史の全体像を、他の文化圏での法制史と比較しつつ通史的に広く理解し、詳しく説明できるようになることである。その際、最新の研究状況に関する情報の入手方法や、法典編纂史と裁判制度史の概要とを説明できることも必要となる。次いで、中国法制史の中でも特に最後の王朝である清王朝に関して、法典、行政組織、官僚機構、司法システム等の基礎的な部分を自ら詳しく理解し、その諸問題を検討した上で、現実に行われていた裁判の実態や今も現存する中国法の特色を理解できるような状態に到達することが目的となる。後期では、中国以外の多様なアジア諸地域の法制史を理解するための一例として、モンゴル民族の法制史について、法典編纂史と裁判システムを中心に、法制度全体を理解できるようになることを目的とする。また最後に、清朝時代のモンゴルで現実に起こった刑事事件とその裁判事例を自ら詳しく検討し、当時のモンゴル遊牧民に対する清王朝の司法支配の実態を理解・解説できるようになることが目的となる。前後期を通じて、過去の社会に関する法的素養を身につけた上で、現在の中国、モンゴル国、ドイツ、ロシア、アメリカ合衆国、日本等の学界において中国やモンゴルの法制史がどのような形で研究されているのか、という日進月歩の研究状況を身につけることも目的の一つである。
到 達 目 標
/Class Objectives
 前期に関しては、中国法制史と東アジア全体規模での法制史の形成過程、特に中国歴代王朝における法典の編纂史やその伝播状況、各王朝における刑罰大系や裁判制度の形成史等を理解して自分で説明できるようになることを目標とする。後期では、モンゴル民族の法制史に関して、世界各国における具体的な研究史を理解し、その背景にある各国の政治経済的な事情や近代におけるヨーロッパ流の法制の導入に関しても、充分に理解して、自分で説明できるようになることを目標とする。前後期を通じて、学んだ知識を利用して東洋法制史の概要を自分で記述する能力のみならず、人前でわかりやすく口頭発表するプレゼンテーションの能力をも身につけることがさらなるハイレベルの目標となる。
授業のキーワード
/Keywords
律令    科挙   大清律例     清朝の裁判制度     モンゴル法    蒙古例    盟旗制度    モンゴル人民共和国憲法
授業の進め方
/Method of Instruction
 この授業は、通常の講義形式の授業である。前期と後期の終わりに一度ずつ試験を実施する予定である。さらに試験以外にも、希望する学生がおれば、数回程度、学生自身に口頭発表をしてもらう可能性もある。その場合、レポートの提出と同様に扱い、加点することを考えている。
履修するにあたって
/Instruction to Students
 高校レベルで日本史や世界史を履修した学生は、より理解しやすく感じるかもしれないが、履修していない学生にもわかるような丁寧な授業にしたい。授業中はしっかりとノートを取り、理解できなかった部分などは、その都度質問して、よく確かめておくことが望ましい。また、履修の順番は問わないが、できれば、日本法制史や西洋法制史も受講して、各々の違いをよく理解できるようになってほしい。
授業時間外に必要な学修内容・時間
/Required Work and Hours outside of the Class
 シラバスに掲載された参考文献や授業中に指示する参考文献を神戸学院大学の図書館から借り出して読み、授業の前後に予習や復習をしておくことが望ましい。また、試験の前にも授業ノートや参考文献をよく確かめておいて、充分な準備をしておくことが望ましい。
提出課題など
/Quiz,Report,etc
 試験以外にも、希望者があれば口頭発表をしてもらう可能性がある。また、やむを得ず遠隔授業となった場合には、レポート風の試験答案を提出してもらう予定である。
成績評価方法・基準
/Grading Method・Criteria
 前期と後期の終わりに一度ずつ持込可能の試験を実施する。長文論述式の試験を予定している。もちろん授業への出席は必要であるが、成績の評価はあくまで試験の結果を重視する。ノート、参考資料等を持ち込むことが可能な長文論述式の試験であるため、充分な準備が要求される。また前述のように、希望者がおれば数名の学生に授業中に口頭発表してもらう。その時の発表内容も、レポートに準じて成績に加点することとしたい。
 対面授業の実施が困難となった場合には、前期と後期の終わりに一度ずつレポート風の試験を行う。
  いずれの場合も、シラバスを普段からよく見ておくようにしてほしい。
テキスト
/Required Texts
 この授業ではテキストは指定しない。参考図書をよく読んでほしい。
参考図書
/Reference Books
石岡浩・川村康・その他著『史料からみる中国法史』法律文化社2500円   宮崎市定著『科挙 中国の試験地獄』中公文庫 914円      冨屋至著『文書行政の漢帝国』 名古屋大学出版会8400円    滋賀秀三著『続・清代中国の法と裁判』創文社 5,500円     夫馬進編『中国訴訟社会史の研究』京都大学学術出版会 9,600円     萩原守著『清代モンゴルの裁判と裁判文書』創文社 14,000円     萩原守著『体感するモンゴル現代史』南船北馬舎 3,200円    寺田浩明著『中国法制史』東京大学出版会
No.
/Time
主題と位置付け
/Subjects and position in the whole class
学習方法と内容
/Methods and contents
備考
/Notes
1 第1回 中国法制史の持つ特徴  成文法主義とイギリス等の判例法主義との違いや、神判の有無等を中心にして、中国と西洋、日本との法制史の大きな違いを概説する。
2 第2回 中国古代の成文法、一回目 秦漢時代を中心に、代表的な法典とその残存状況とを概説する。特に近年新しく出土し始めた秦漢律の問題について、かなり詳しく扱う。
3 第3回 中国古代の成文法、二回目  隋唐時代を中心に、代表的な法典とその残存状況とを概説する。特に新発見の唐令の問題については、かなり詳しく扱う。
4 第4回 中国古代の刑罰体系 秦漢と隋唐の時代を中心として、中国古代における刑罰とその体系を詳しく述べる。 
5 第5回 中国中世・近世の成文法 宋代、元代から明清期に至る代表的な法典・判例集と法制史上の特徴とを概説する。
6 第6回 中国中世・近世の刑罰体系 五代十国・宋・元代から明清期に至る刑罰の体系をまとめて述べる。 
7 第7回 中国近現代の法制度 中華民国期及び中華人民共和国期の政治史・法制史を解説する。
8 第8回 清王朝の法 『大清律例』を中心とする清代中国の法典、及び「蒙古例」、『回疆則例』等、清朝政府が定めた民族集団別の諸法典について、その種類や法的効力の問題を概説する。 
9 第9回 清王朝の行政機構 首都北京に存在していた中央官庁群、特に裁判に関わる官庁群に関して、地図で確認しつつその配置や機能等を詳しく解説する。また中国本土の全土に存在していた網の目状の地方行政・司法組織について、その官僚職の種類や機能等を詳しく解説する。 
10 第10回 清代の科挙制度、前半 清朝の官僚機構を構成する科挙官僚を選抜する試験に関して、まず、地方の州県、省レベルにおける試験を中心にして、発表を希望する学生に詳しく口頭発表してもらう。 
11 第11回 清代の科挙制度、後半 科挙の中心部分をなす首都北京での会試と皇帝自身による殿試について、発表を希望する学生に詳しく口頭発表してもらう。
12 第12回 清代中国の刑事裁判制度前半 まず清代中国の刑罰体系を解説して、犯罪と刑罰の軽重によって異なる清朝の刑事裁判制度を、詳しく解説する。
13 第13回 清代中国の刑事裁判制度後半 清朝の刑事裁判制度、特に最近研究が盛んになってきた秋審や勾決の問題を詳しく扱う。 
14 第14回 清代中国における訴訟と裁判の実態前半 宮崎市定氏の和訳した『鹿洲公案』を用いて、発表を希望する学生に訴訟や裁判の実態を詳しく口頭発表してもらう。 
15 第15回 清代中国における訴訟と裁判の実態後半 引き続き、宮崎市定氏の和訳した『鹿洲公案』を用いて、発表を希望する学生に訴訟や裁判の実態を詳しく口頭発表してもらう。  
16 第16回 モンゴル民族史の時代区分 チンギスハーン以来のモンゴル民族史をいくつかの時代に区分し、各時代の政治史状況や世界各国における研究の進展状況等を概説する。 
17 第17回 モンゴル民族の法制史1 13世紀から15世紀頃のモンゴル民族史上の法典、刑事裁判システムに関する研究状況等を時代順に概説する。特にモンゴル帝国期の『大ヤサ』、『大元聖政国朝典章』等の法制史料とその研究を詳しく述べる。 
18 第18回 モンゴル民族の法制史2 16世紀頃のモンゴル民族史上の主要な法典とその残存状況に関する研究を時代順に概説する。特に、ドイツ、日本等の国々における研究状況を詳しく述べる。
19 第19回 モンゴル民族の法制史3 17世紀のモンゴル民族史上の主要な法典とその残存状況に関する研究を時代順に概説する。特に、ドイツ、日本、ロシア等の国々における研究状況を詳しく述べる。
20 第20回 モンゴル民族の法制史4 20世紀初頭以降のモンゴル近現代史について、独立運動の発生や帝国主義諸国との関係等、政治史面を中心にして、先に詳しく解説しておく。
21 第21回 モンゴル民族の法制史5 20世紀初頭から21世紀にかけてのモンゴル国での憲法と刑法、そして刑事裁判システム、すなわちモンゴルの独立宣言以降の法制史に関する研究状況を概説する。 
22 第22回 清朝初期のモンゴル文法典 清朝政府が制定したモンゴル民族専用法である「蒙古例」の内、乾隆期以前における初期の法、特に中国国家図書館所蔵の「崇徳三年軍律」、中国第一歴史档案館所蔵のモンゴル文法典、ウランバートルのモンゴル国立図書館所蔵のモンゴル文法典等について、その制定・出版状況や研究状況等を詳しく解説する。 
23 第23回 清朝の蒙古例法典 清朝政府が制定したモンゴル民族専用法である「蒙古例」の内、乾隆期以降の『蒙古律例』と『理藩院則例』について、その制定・出版状況や研究状況等を詳しく解説する。
24 第24回 清代モンゴルの刑事裁判事例(1)「ダシジドの事件」1回目 18世紀のモンゴルで実際に起こった一家心中事件である 「ダシジドの事件」に関する各裁判の判決文中で適用された条文を詳しく比定し、清代モンゴルの各種法典が持つ法的効力の問題を考察する。
25 第25回 清代モンゴルの刑事裁判事例(1)「ダシジドの事件」2回目 「ダシジドの事件」に関して現実に行われた各レベルの役所での裁判の判決文から清代モンゴルの社会の有り様を考察し、法制史と社会史との関わりを検討する。
26 第26回 清代モンゴルの刑事裁判事例(2)「オンボフの事件」1回目 18世紀のモンゴルで実際に起こった殺人未遂事件である「オンボフの事件」に関して各級の裁判機構にて繰り返し行われた裁判の判決文を詳しく検討し、清代モンゴルの社会を考察する。
27 第27回 清代モンゴルの刑事裁判事例(2)「オンボフの事件」2回目 「オンボフの事件」に関して行われた裁判の判決中で適用された法典の条文を詳しく比定し、清代モンゴルの各種法典が持つ法的効力の問題を考察する。 
28 第28回 清代モンゴルの刑事裁判事例(3)「オドセルとナワーンの事件」1回目  光緒年間に発生した殺人事件である「オドセルとナワーンの事件」に関して、加害者と被害者の身分の問題を詳しく検討し、清代モンゴルの種々の身分と各身分に適用される法との関係を考察する。 
29 第29回 清代モンゴルの刑事裁判事例(3)「オドセルとナワーンの事件」2回目  「オドセルとナワーンの事件」で、裁判期間中に脱獄・逃亡したオドセルを捕獲するために庫倫辦事大臣によって適用された「逃亡犯捕獲期限に関する法」について、その起源を詳しく追究・検討して行く。
30 第30回 清代モンゴルの刑事裁判事例(3)「オドセルとナワーンの事件」3回目  「オドセルとナワーンの事件」で、逃亡犯を期限内に捕獲できなかった官員と兵士とに対して庫倫辦事大臣が布告した数種類の判決文について、満洲文による判決文とモンゴル文による判決文とを比較することによって、大臣が利用した方の版本がどちらだったのかを詳しく検討して見る。それによって、清代のモンゴルにおける裁判のシステム自体を分析する。

科目一覧へ戻る