神戸学院大学

法学部

法学部主催の第22回文化相互理解シンポジウムが開催されました

2021/10/07

法学部主催の第22回文化相互理解シンポジウムが10月7日、岩田将幸教授の企画・進行のもと、Zoom配信によるオンライン方式にて開催されました。第22回目を迎える今回のシンポジウムでは、「中村哲さんの生と死をめぐる報道」をテーマに、朝日新聞記者の乗京真知さんをお招きし、ご講演いただきました。また、名古屋大学大学院情報学研究科准教授の井原伸浩さんには討論者として、質問ならびにコメントをしていただきました。

乗京さんは、朝日新聞紙上にて「中村哲さん殺害事件を追う」(全5回:2021年6月22~26日)を掲載されたばかりになります。長きにわたる戦乱で荒れ果てた国土を緑の大地へと蘇らせることこそが、アフガニスタンの平和と復興の鍵と信じ、現地の人びとと一緒になって取り組んできたのが、中村哲さんでした。戦争で最も犠牲となるのは市井の人びとに他ならないと、その眼差しの先には常に、人々のありふれた日々の暮らしがありました。そうした中村哲さんの献身に満ちた行動的な生は、我々が知るところです。しかし、尊敬を集めていたはずの中村哲さんがなぜ殺害されなければならかったのか。乗京さんは、ジャーナリストとして問い、徹底した取材を行ってこれを記事にしました。

乗京さんにより、われわれは、あらゆる憎悪と諍いが渦巻く中で、中村哲さんは自ら使命としたことを果たそうとしていたことを知ります。人々を相互の不信と憎しみに駆り立てる、複雑すぎる武装グループ間、民族間、宗教間、国家間の錯綜する対立関係。それらに乗じて、自らの狭い利害に翻弄される腐敗した政治・経済・社会のリーダーたち。自らを取り巻くこうした状況を中村哲さんは知らないわけはなく、知るがゆえに敢えて丸腰で飛び込みました。そして、どのグループにも与せず、市井の人びとを第一義としたとてもシンプルな解決策を提示し、実行しようとしたのです。今回の講演を通して、中村哲さんがいかなる覚悟をもって自らの使命を果たそうとしていたのか、われわれは改めて思い知らされることになりました。

乗京さんは、上述の記事に多方面から反響がある中、このシンポジウムを最初の講演の場所に選んで下さいました。同シンポジウムは、学内を対象に行われましたが、学部を超え、また学生、教員、職員の垣根を取り払う形で多くの参加があり、神戸学院大学全体にとって貴重かつ意義のある機会となりました。