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神戸学院大学

薬学部

薬学部が「第24回大学―医療連携講演会」で「薬薬連携」のあり方を考えました

2022/06/13

「薬薬連携等に向けた福岡病院の取り組み」の演題で行われた特別講演
「薬薬連携等に向けた福岡病院の取り組み」の演題で行われた特別講演
山脇薬剤部長特別講演のZoom画面
山脇薬剤部長特別講演のZoom画面

薬学部の「第24回大学―医療連携講演会」が「連携を活(い)かした患者QOLの向上」をテーマに6月3日、ポートアイランド第1キャンパスで対面とオンラインでのハイブリッド方式で開催されました。

薬学部の医療連携実行委員会では、近隣の医療機関との教育・研究の連携を図る活動の一つとして、2013年から定期的に本講演会を開催してきました。今回は、「薬薬連携(保険薬局と病院薬剤師の連携)」について大学教員、薬局薬剤師、病院薬剤師の方々を講師に招き、それぞれの立場からの講演を聴いて議論を深めました。

■トレーシングレポート(服薬情報提供書)に関する研究成果の報告
初めに大学教員の立場で、「薬薬連携」に関する研究に取り組む神戸薬科大学総合教育研究センター臨床部門の河本由紀子臨床特命教授から、神戸市立医療センター中央市民病院と共同で行っているトレーシングレポート(服薬情報提供書)に関する研究について説明がありました。

同レポートは、保険薬局から病院への服薬に関する問題点を共有するために用いられますが、一方的な情報提供になっている例も少なくありません。同病院では、薬局と病院が双方向に情報共有できるフォーマットを作成することで、保険薬局の薬剤師から病院薬剤師へと連携を図る取り組みを始めました。そのおかげでトレーシングレポートの提供は増加し、患者の利益にもつながったという事例の紹介でした。

■がん薬物治療では服薬状況や有害事象の確認も
次に、井上祥平薬剤師(株式会社アインファーマシーズ アイン薬局)からは、薬局薬剤師の立場から、がん薬物治療におけるトレーシングレポートを活用した服薬状況や有害事象の確認の取り組みについての紹介がありました。

薬局薬剤師が積極的にトレーシングレポートを活用することで、がん薬物治療における有害事象の発現が低減したとのことです。また、地域薬学ケア専門薬剤師認定を目指して、神戸市立医療センター中央市民病院で研修を受け、病院でしか知ることのできない薬物治療に関する知識や技術を習得できたことに加え、今後の保険薬局からの情報提供にも役立ったとの成果報告もありました。

■特別講演では福岡の吸入指導マニュアルの取り組みと成果報告
最後に、特別講演として、独立行政法人国立病院機構福岡東医療センターの山脇一浩薬剤部長(前・福岡病院薬剤部長)からは、病院薬剤師の立場から福岡病院における薬薬連携の取り組みとして、吸入指導の例についての紹介がありました。福岡病院において吸入薬の指導を統一するために作成した「吸入指導マニュアル」を福岡市内の124店舗の保険薬局に配布し、実際に活用した成果も出ているとのことです。

保険薬局からのアンケート調査の結果から、同マニュアル導入前は、各薬局によって指導方法にばらつきが見られたものの、吸入指導マニュアル導入により、理解度やアドヒアランス(※末尾に注)の向上があったことが裏付けられました。吸入薬の指導は、指導内容の統一と継続的な指導が重要であり、地域の薬局と密な連携し、行っていくことが重要だとの結論でした。

■「薬局と病院の連携に見習うこと多かった」講演会参加者
本講演会には、Zoomによる視聴を含めて約50人の本学教職員や学生の皆さん、地域の薬剤師の方々に参加いただきました。Web視聴の参加者からは、「薬局と病院の薬薬連携が充実し、しっかりした情報共有が出来ており、見習うべきことを感じました」、「トレーシングレポートの運用について、とても参考になりました」と感想が寄せられました。

※注 日本薬学会などの定義によると、アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること。