§病理学
☆福井 巳芳
〓主題と目標〓
薬剤師の職能として必要な病理学の基礎を理解せしめる。疾病に伴う細胞の構造や組織の変化、その修復と再生の仕組みについて病理組織学の立場より学ぶことにより、疾病による細胞・組織・臓器の変化、生体の持つ自然の治癒力を学び、疾病の予防や治療との関係を理解させる。また、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈硬化症、脳出血、腫瘍などの代表的疾患については細胞や組織の変化と疾病の関係を理解する基礎知識を習得させる。そのために疾病による組織や臓器の変化をマクロおよびミクロの病理カラースライドを多用し、病理学の基礎を理解しやすい講義形態にする。病理学の詳細な各論については病態生理学、診断学などに譲る。
〓授業計画〓
第1回 病理学総論
臨床医学全般について概論し、臨床診断学としての病理学の重要性、病理解剖学の実状についてのべ、人体解剖学全体の重要性を理解せしめる。生検試料、剖検試料の病理標本の作成法、疾病の予防・診断での位置づけについての理解を深める。
第2回 退行性病変
細胞・組織の萎縮、変性、壊死の3種類の病変について細胞・組織・臓器の種類による差異、その変化の可逆性と不可逆性について理解する。壊死については生理的萎縮、廃用萎縮、圧迫萎縮に大別する。変性については空胞、粘液、硝子、類線維素、アミロイド、脂肪、色素、石灰などの変性に大別する。壊死は凝固、融解に大別する。アポトーシス、全身死についてもふれる。
第3回 代謝異常
蛋白質およびアミノ酸代謝異常、糖代謝異常、脂質代謝異常、尿酸代謝異常およびその関連の疾病について述べる。
第4回 循環障害
体液(血液、リンパ液、脳脊髄液など)の循環とその循環障害の原因およびその結果としての組織・臓器の変化について述べる。血液の循環障害については全身、局所、側副循環に大別し、虚血、充血、うっ血、出血、血栓症、塞栓症、梗塞、ショック、播種性血管内凝固症候群について述べる。リンパ液の循環障害については水腫、浮腫、滲出液、漏出液についてふれる。
第5回 進行性病変
退行性病変により変性、破壊された細胞・組織・臓器を新生組織や代償機能をもつ組織が修復する過程を次の項目で理解させる。
肥大と過形成、再生と化成、創傷治癒、肉芽組織、骨折の治癒、異物の処理。
第6回 炎症(その1)
生体が外界より熱や化学物質による有害な刺激を受けたときにどのように対処しているかを細胞・組織の生体防御の反応として考える。有害な刺激に対する炎症を急性炎症と慢性炎症に分け、炎症細胞(好中球、マクロファージ、マストセル、好酸球、形質細胞)の役割について述べる。
第7回 炎症(その2)
炎症の引き金になる化学伝達物質(ヒスタミン、セロトニン、SRS-A、カリクリイン、ブラディキニンなど)の相互の役割について理解させる。また炎症の原因、炎症の分類、炎症と生体防御、全身への影響、炎症に影響を与える生体側の条件についてもふれる。
第8回 感染症
感染に関わる病原体の種類と感染経路、生体の感染防御機構を理解させる。また病原体の種類と感染症の経過・病変との関係について述べる。
第9回 腫瘍(その1)
身体の細胞が無秩序、無目的、過剰に増殖する腫瘍(癌)は現在日本の死因のトップであり、充分な理解が必要であるので2回に分けて述べる。腫瘍の種類と名称、腫瘍の形態、腫瘍の発育・転移、腫瘍と宿主、悪性度と病期について述べる。また代表的な腫瘍である、肺、胃、肝、大腸、乳房、子宮の腫瘍についてはスライドで掲示・説明する。
第10回 腫瘍(その2)
腫瘍の発生原因を化学的、物理的、生物学的因子および遺伝因子に分けて述べる。腫瘍の疫学については統計資料を主にして考えさせる。腫瘍の分類は詳細に分けずに、発生頻度の高いものを主にし、また悪性腫瘍と良性腫瘍の差異について述べる。
第11回 先天異常
出生時に体の形態、機能および代謝に異常をもたらす成因について、常染色体、性染色体の異常に分けて解説し、それらの遺伝と発生頻度について述べる。また先天異常、奇形の発現様式と突然変異の要因について理解させる。
第12回 老化
高齢化人口の増加に伴い老化についての意識は重要である。細胞の老化、臓器の老化を病理学の立場より理解させ、中枢神経、血管、心臓、肝臓、腎臓、骨などの主要臓器や器官の老化現象について述べる。